↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お菓子の王女は魔王討伐の旅に出る  作者: 冬桜 美狐
第三章 相対する正義と思惑

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
61/73

46.目的地へ

誤字,脱字報告受け付けております。

見つけた際は遠慮なく報告して頂けると幸いです。

感想,レビュー等大歓迎です。

ブックマークも是非お願い致します。

 

 静かな村を,温かい朝日が照らした。

 大勢の村人に見送られて,ベリー一行はヘルト村を後にする。


 ベリーは沢山貰ったお菓子を片手に満たされた表情を浮かべた。

「やっぱ難しいことを考える時は,甘いものだよねー」

「別に難しいことを考える予定はありませんが?」

 リリーナが呆れたように呟く。

 これからの旅の目的は,魔王領に行くことだ。

 魔王領に行ってからどうするかは,今決めることではない。

 リリーナとキャサリンが二人がかりでそう説明したのだが,ベリーは聞いていなかったフリをしている。

「なんだっけ。変な魔族? に会いに行くの?」

 歩きながら微睡(まどろ)んでいたリオンが,眠そうな声で尋ねた。

「変な魔族っていうか……私達の手助けになってくれるかもしれない,少し変わった一族って言ってたよね」

 キャサリンが思い出すように答えると,一行が微妙な表情になる。

「四天王が言ってたことだし,信用度は一寸低めだよね」

「……まぁ,多少期待するくらいが良いんじゃないですか? 何方(どちら)にせよ魔王領には向かうんですから」

 リオンが難しい表情で鎌を担ぎ直し,ミーシアが困ったように付け加えた。

「沢山はじめまして出来る? 楽しみー!」

「たのしみー!」

 そんな二人とは対称的に,ゆめとまろんが目を輝かせる。

「魔族とはじめましてなんて,度胸があるのね……」

 困惑したように会話に混ざるのは,ミーシアの眷属である黒猫ミスラ。

 唐突に現れては,飽きると何処かに消えてしまう。

 今は機嫌が良いのか,まろんを背に乗せてゆめの隣を歩いていた。


「そーいえば,魔王領まであとどれくらい?」

「もうすぐですよ。ただ,例の一族が何処に居るのかが分からないんですよね……」

 先頭を進んでいたベリーが,ふと思い出したように振り返る。

 魔王領自体は目の前に見えているが,その正確な距離は掴めない。

「……うーん,何か便利な魔法とか無いの? 探してる人が見つかる魔法ー! みたいな」

「そんな都合の良い魔法は無いかな……」

 ベリーが頬を膨らませると,キャサリンが首を横に振る。

「とりあえず魔王領に居る魔族に片っ端から聞いて回る?」

 話を聞いていたリオンが,担いでいた鎌に手をかけた。

 実力行使の準備は出来ていると言いたげな姿に,リリーナが苦笑する。

「そうですね……。ただ,あまり目立つのもあれなので,頭を使った方が良いでしょう」

「よし,お菓子の出番」

「ずっと食べてたよ?」

 すかさずお菓子をアピールするベリーに,ゆめが目を丸くした。

 ベリーは数秒沈黙してから,そっと視線を逸らす。

 その様子を半眼で眺めてから,リリーナは一つ溜息を零した。

「どれもこれも,魔王領に行ってから考えた方が良いです。あちらでは,何が起こるかわかりませんから」

 リリーナの言葉に,キャサリンとリオンが表情を引き締める。

 それを見て,ベリーとゆめもぐっと拳を握った。

 まろんとミスラは視線を交わして,小さく頷き合う。

 そこでどのようなコミュニケーションが取られているのかは分からない。



 ーーーーーーーーーーーー



 同じ頃,魔王領の辺境に一つの影が現れた。

 禍々しい色合いの魔法陣の上に立ち,呆然と辺りを見回す。

 一つの影__ヘルト村の村長の孫ゼーデルは,自分が乗っていた魔法陣が転移機能を持っていたことに気付いた。

 だが,それに気付いた時にはもう遅い。

 役目を終えたらしい魔法陣は,静かに消滅し始めている。

「……いや,ちょっと待って」

 ハッと我に返ったゼーデルが思わず呟くが,魔法陣は待ってくれない。

 一度強く光を発して,完全に消滅した。

「えー……」

 何とも言えない表情でそれを見ていたゼーデルは,数秒沈黙する。

 それから疲れたように息を大きく吐いて,その場に座り込んだ。

 人間は勿論,魔族や魔物の一匹も見えない荒野に,冷たい風が吹き付ける。

 遠くに見える植物からして,魔王領の奥深い所に自分はいるのだと,ゼーデルは察した。

 故郷であるヘルト村に,歩いて帰るのは無理だということも。

「……意味わかんないよ」

 そんな言葉を零して,ゼーデルは顔を伏せる。


 ずっとそうだった。

 平和で長閑な村の裏側には,理不尽が凝り固まっている。

 気が弱くて臆病なゼーデルは,生まれた時から理不尽を呑んできた。

 妙な能力に気付いてからは,目の前の魔王領を刺激するような危険なことだって実行させられていた。

 それを見かねた両親は,何処か遠くに旅立ってしまった。

 養育者である祖父母は村のことが第一で,家族の情なんて無い。

 唯一長老だけが,自分の自由を認めてくれていた。

「……帰りたく,無いな」

 魔族達と遭遇した時は人生が終わったと思ったが,何故か転移させられただけで,こうして生きている。

 意図せず村から離れられたのは,ゼーデルにとっては喜びだった。


 立ち上がって,もう一度周囲を見渡す。

 遠くに,天を突くような魔王城が見えた。

 終わらない夜空の下を,ゼーデルは歩き始める。

 目的地は無い。

 何処までも静かな不毛の地で,確かな自由を感じていた。



最後までご覧頂きありがとうございます。

一言:お久し振りの第三章です。

   安定のベリーから始まり,後半で急に世界観が変わりました。

   これからはゼーデルさん視点も偶に出てきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。