↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お菓子の王女は魔王討伐の旅に出る  作者: 冬桜 美狐
第二章 一期一会の旅人達

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
60/73

番外編.遠い日の記憶

本日はキャサリン本人様のお誕生日ということで

キャサリンの誕生日回を更新しました。

_____________________________________

誤字,脱字報告受け付けております。

見つけた際は遠慮なく報告して頂けると幸いです。

感想,レビュー等大歓迎です。

ブックマークも是非お願い致します。

 

 優しい歌声が聞こえて,キャサリンは目を開けた。

 明るい空を隠すように,自分のことを抱えている女性がいる。

 キャサリンのことを宝物のように大切に膝に乗せ,幸せそうに笑っていた。

 聞き馴染みのある歌が,耳の中で反響する。

 キャサリンは黒曜石の瞳を巡らせた。

 何処までも広い草原を塞ぐように,大きな城が見える。

 同じ方向に視線を向けた女性が,少し表情を曇らせた。


 次の瞬間,空に亀裂が走る。

 それと同時に,女性の表情が歪んだ。

 キャサリンの視界が揺れ,やがて暗闇が覆う。


 闇が晴れた時,景色が変わっていた。

 自分を守るように抱えていた女性は消え,一人で暗い廊下に立っている。

 そこは,キャサリンが育った孤児院だった。

 慣れ親しんだ光景が,何故か不気味に見える。

 同じ孤児院の子供達が,キャサリンの横を亡霊のように通り過ぎていった。

 白と黒の単調な,幼いキャサリンと服。

 キャサリンと他の子供達の違いは,首から下げた雷型の飾りだ。

 何の装飾もないシンプルな飾りが,キャサリンを示す唯一つの物。


 瞬きのうちに視界が変わった。

 キャサリンは微動だにしていないのに,窓の外の景色が変化する。

 赤い炎に包まれ,木々が狂ったように暴れていた。

 泣き叫びながら逃げまとう子供達が通り過ぎていく。

 いつの間にか,一冊の魔法書を手にしていた。

 孤児院の小さな図書館に置いてあった魔法書で,古い文字で書かれているため,殆どの子供が読めない。

 それには,雷の魔法について書かれていた。


 また景色が変わる。

 幼いキャサリンは,宙に浮かんでいた。

 目の前に,業火に崩れる城がある。

 自分の目の前には,化け物を見るような目をする鳥が飛んでいた。

 無数の鳥達は,絶え間無く落ちる雷によって地に叩き落とされている。

 その様子を眺めていたキャサリンは,不意に視線を感じた。

 振り返るより速く,視界が激しく揺れ,衝撃が襲う。

 高速で回転する世界に,一瞬だけ茶髪の幼女の姿が混じった。


 気付けば,森の中に倒れていた。

 目覚めたキャサリンから少し離れた所に,茶色い塊が落ちている。

 拾い上げてみると,それは子犬だった。

 穏やかに眠る姿が,キャサリンには何よりも可愛らしく思えた。


 子犬は突然目覚め,警戒するようにキャサリンから離れる。

 それでも,二人はすぐに打ち解けた。

 まるで,遠い昔の友人同士のように。


 幼いキャサリンは親しくなった子犬を捨て置けず,孤児院に連れ帰った。

 まだ阿鼻叫喚の残滓が残っている孤児院では,子犬を引き取れないと言われた。

 キャサリンは迷わず,孤児院を出る決断をする。

 彼女の将来を憂えた孤児院長は,杖と魔法書,そしてこの世に唯一つの苗字を与えた。

 キャサリンは子犬さえ一緒なら,他のことはどうでも良い。


 子犬には,『ゆめ』と名付けた。

 いつか,この子の夢が叶うように。

 いつか,誰かの夢になれるように。


 ーーーーーーーーーーーーー


「__きゃさりん,おはよ?」

 眠っていたキャサリンに声をかけたのは,人間形態のゆめだった。

 何処までも無垢な黒橡(くろつるばみ)の瞳が覗き込んでいる。

「……ゆっちゃん,朝早いね」

 まだ日が昇りきっていない草原は,冷たい風が吹き付けていた。

「うん。なんか起きちゃった。……お外で寝ちゃったの,りりーなに秘密?」

 前外で寝ていたベリーが,朝食までずっと説教を受けていたのを思い出したのだろう。

 ゆめが青褪めて尋ねると,キャサリンも小さく頷いた。


「……ゆっちゃんにさ,一個聞いて良い?」

 テントに戻る途中,不意にキャサリンがそう尋ねる。

 首を傾げるゆめの方に視線を向けて,静かに言葉を続けた。

「ゆっちゃんは,私に拾われて嬉しかった?」

 いつもは全力でゆめを可愛がっているが,キャサリンだって不安はある。

 心から愛する目の前の少女とこれからも共にいるのは,本当に自分で良いのだろうか。

 そんな漠然とした心配が,キャサリンの中で燻(くすぶ)っていた。


「……ゆめは,きゃさりんが拾ってくれないと,ダメだったよ?」

 困惑したような声が,静かな草原に響く。

 驚いたように目を丸くするキャサリンに,ゆめはにぱっと笑ってみせた。

「ゆめは,べりーとか,りりーなとか,色んな人のことを大好きだけど,きゃさりんは特別。きゃさりんが居なかったら,ゆめはここまで来れてないし,こんなに楽しいことも出来てない」

 何処までも広がる草原を見渡して,ゆめは満面の笑みを浮かべる。

「これからも,ゆめはきゃさりんと一(・)緒(・)に(・)沢山冒険して,沢山楽しいことをする! 約束だよ!」

 キャサリンの黒曜石の瞳が,朝日を受けて輝いた。

 迷わずゆめを抱きしめて,小さく笑う。

「ずっと一緒にいるよ。約束する」



最後までご覧頂きありがとうございます。

一言:時系列的は,ゆっちゃん様の誕生日回の続きです。

   この後リリーナにバレてしっかり起こられました。


   第三章開始は九月一日の予定です。

   (作者の都合によっては変更になる可能性も……)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
お誕生日回作ってくれてありがとう!! ゆっちゃんの言葉聞いて泣く直前…… いや、もう泣いてる(笑) セリフのセンスがすごくいいね! キャサリンの過去めっちゃ面白かったよ! これからも執筆頑張って!  …
2026/08/24 15:04 キャサリン本人
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。