45.一瞬の休息は次の旅へ
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ベリー達が散歩から戻ると,村長の家は妙に騒がしい空気に包まれていた。
「どーしたの?」
偶々通りかかった村人に,何の遠慮もない態度でベリーが問う。
リリーナが思わず頭を抱えるが,ベリーは一国の王女なので仕方がない。
声をかけられた村人は,一行を見て困ったような表情になった。
「……実は,ゼーデルさんの行方がわからなくなってるんです」
「ぜーでるさん……?」
ゆめがコテンと首を傾げると,キャサリンが小さく苦笑する。
「村長のお孫さんですよね。魔族の気配を察知出来る」
リリーナが尋ねると,彼の存在感の薄さを知っているらしい村人も苦笑して頷いた。
「先日から感じているという魔族の気配を探しに行ったそうです。その後,突然村から彼の気配が消えたそうで」
「気配とかわかるの?」
今度はリオンが疑問符を浮かべる。
答えを探すように,村人は一行から視線を外した。
「……長老様がそういうのを察知できる方なんです。これは能力とかではなく,身体が魔族に似ているから,らしいですね」
やけに詳しいその村人の説明に,一行が各々頷く。
「突然消えた……というのはどういうことですか?」
不意に,何かを考え込んでいたミーシアが挙手した。
困惑を浮かべる村人に対して,言葉を重ねる。
「魔族に殺害された……とかではなく,気配が消えた,というのは……?」
確かに,生存は確認できていないはずだ。
何故,気配が消えたという表現を使うのか。
同じように疑問に思っていたリリーナも返答を待つ。
すると,村人は困ったように眉を下げた。
「……それは,長老に直接伺わなければわかりません。私は先を急いでいるので,失礼しても?」
「あ,ごめんなさい!」
丁寧にお辞儀をして去っていく村人に謝ってから,ベリーは一行の方に視線を向ける。
「……どう思う?」
「そうですね……。魔族に殺されたのかと思いましたが」
「言ってること怖いよ!?」
ゆめとまろんが震え上がった。
だが,その可能性を否定しきれないことも事実である。
「探す……方が良いかな」
「でも,私達は早く魔王領に行った方が良くない?」
四天王の言葉から察するに,ベリー達が向こうをかなり待たせていることは明白だ。
ベリーの望む『魔族と戦わなくて良い道』を探すためにも,急いだ方が良いだろう。
「……でも,ゼーデルさんを見捨てていくの?」
俯いたベリーが小さく呟き,一行が難しい表情になる。
「利他と利己,どちらを優先するかですよね」
ミーシアが,そう告げると,ゆめとまろんが首を傾げた。
それに対して,キャサリンが苦笑しながら説明を付け加える。
「他人を優先するか,自分を優先するかの二択ってこと」
「なるほどー」
「ほどー」
かなり噛み砕いた説明に,ベリーも密かに感嘆の表情になった。
それから数分考え込んでいたベリーが,不意に顔を上げる。
「一個さ,天才的なこと言って良い?」
かなり自信に溢れる態度だ。
全員の視線が向く中で,ベリーが右手の人差し指を立てる。
「まずゼーデルさんが,魔族どこだー? ってしてたんでしょ?」
「はい」
ベリーが人差し指を動かして表現した。
「気配が消えた? ってことは,魔族が関係してるのは確定でー」
そう言いながら,今度は左手の指を二本立てる。
恐らく,四天王二人を表しているのだろう。
「ここで,『ドパーン』か『ずがーん』か『ピララー』があったわけ」
「どぱーんかずがーんかぴららー……?」
まろんの首が九十度傾いていた。
それを見なかったことにして,ベリーの説明は続く。
「んで,ドパーンとずがーんだったら諦めるしか無いけど,ピララーだったらどうだと思う?」
突然の問いかけ。
だが,その場にいる半数以上が擬音を理解していない。
ゆめとまろんが疑問符で頭を埋め,キャサリンとミーシアは諦観の笑み。
リオンは立ったまま微睡み始めていた。
「……前の二つは攻撃魔法ですね? 後ろのそれは……見た目が綺麗な魔法?」
「せいかーい!」
慎重に答えたリリーナに,ベリーが拍手する。
ちなみに『ドパーン』は四天王ルシフェリオの毒魔法で,『ずがーん』は四天王グロースの自然魔法のことだ。
それを正確に当てたリリーナだったが,最後の『ピララー』の正体はいまいちわからない。
「でね。ピララーだったら,ゼーデルさんは生きてるの。ここからいなくなっちゃっただけで」
「……それってまさか」
キャサリンがハッとしたように呟くと,ベリーが少し真剣な表情になった。
「うん。ゼーデルさんは,どこかに連れて行かれたんじゃないかな」
一向に納得の空気が流れる中で,ハッとしたようにゆめが口を開く。
「べりーが言いたいことわかった!」
「ゆっちゃん天才だね」
何度も頷くキャサリンは,ベリーの言葉の意味がわかっていない。
ベリーの期待に満ちた視線を受けて,ゆめは得意気に胸を張る。
「まぞくたちがぜーでるさんを連れて行ったのって,魔王領じゃないかな? それだったら,ゆめ達は普通に魔王領に行けばおっけー!」
「あー……!」
リリーナとミーシアが驚いたように声を上げた。
その答えに,ベリーが満足そうに首を縦に振る。
「つまり! 私達はふつーに魔王領に行けば,ついでにゼーデルさんも探せるのです!」
「です!」
内容を半分も理解していないまろんが笑顔で真似た。
「……じゃあ,村長さんにそう伝えてきます?」
疑問形にしつつ,リリーナは返事を待たずに身を翻す。
それを見送って,ベリーは笑みを浮かべた。
「魔王領に向かって,ローズ姉の言ってた謎を解いて,ついでにゼーデルさんも探す!」
「やること多い……」
リオンは苦笑気味に呟くが,瞳は楽しげに輝いている。
「がんばるぞー!」
「「おー!!」」
ゆめの掛け声に,一行が答えた。
日の昇り始めた空は,ベリー達を祝福するように輝く。
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一言:あ,これ第二章最終話です。
次回からは登場人物一覧を投稿します。




