44.早朝の平穏
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「新しい朝だー!」
「あさだー!」
夜が賑やかな一行は,朝も賑やかから始まる。
ちなみにベリーは元々城暮らしの王女で,現在はテントで毛布を被って寝ていた。
つまり,布団は人生初。
昨夜は,転がり込んできたゆめとまろんとはしゃいでいる。
草原ではないので,珍しくリオンとミーシアも部屋に留まっていた。
「朝ご飯の前に,少し村を見て回ってはどうかと言われていますが……」
手早く布団を畳んで,返しに行ったリリーナが尋ねる。
はしゃぐベリーにつられて全員が早く起きているので,朝ご飯までは時間があるのだろう。
「……行くしか,なくない?」
ベリーがゆめと顔を見合わせて笑った。
リリーナも「まぁそうなるでしょうね」と言いたげな表情になる。
「というわけで,しゅっぱーつ!」
「ぱーつ!」
村は,朝早くから人通りが多い。
世間話をしていたらしい女性達は,ベリー達に気さくに手を振ってくる。
その周囲を駆け回っていた子供達も,同じくらいの年齢のベリーやゆめに飛びかかってきた。
子供達と楽しそうに戯れる二人を見ながら,ふとリオンが進む道と違う道を指差す。
「あっちの方も気になるから,見てきて良い?」
「良いですよ。こちらは私がどうにかしますので,皆さんも」
「私は残るから安心して!」
リリーナが微笑むと,キャサリンが間髪入れず挙手した。
まぁ,だよね と言いたげな視線を向けながら,リオンは一行から外れる。
「……では,私も少しあちらを見てきますね」
ミーシアが苦笑しながら,リオンが向かった方とは別の道に入って行った。
「じゃーねー! また遊ぼーねー!」
「またねー!」
村の子供達と大声で会話した後,ベリー達は気を取り直して先を進む。
「……なんか懐かしいね,このメンバー」
不意にベリーが小さく呟いた。
残った四人は,リオンと出会ったセイレーストに行く前までのメンバーでもある。
「ゆめ達でうぇるふぃま倒したもんね!」
ゆめが嬉しそうに言うと,キャサリンも何度も頷いた。
「ちなみに,今回は私一人で四天王撃退したからね?」
「言われてみれば!?」
この村での戦いで,キャサリンは獣人形態で四天王のグロースに大きな傷を負わせている。
「……成長,してるんですかね」
リリーナは言葉の端に,若干疑問符をつけた。
「まぁ少なくとも,こうやって協力して戦ってるんだから……戦闘能力は磨かれてるんじゃない? 仲間から学べることも沢山あるし」
明るく笑ってキャサリンが答えると,ベリーがハッとしたように顔を上げる。
「……私もそろそろお菓子作り上手になってるかな?」
「うーん……。キャサリンと私は作れるので,見て学んでいれば」
お菓子の時間はテーブル待機なベリーは言葉に詰まった。
「ゆめ,べりーのお菓子食べたいなー!」
「絶対今度作るから!」
ゆめが目を輝かせると,ベリーが拳を突き上げる。
「周囲に防御魔法張っておきますよ」
「爆発する前提!?」
リリーナが良い笑顔で杖を見せると,キャサリンが驚いたように返した。
一行は,涼しい風の中を笑いながら進んでいく。
その頃,同じ村を一人の少年が歩いていた。
村長の孫であり,ベリー達とも面識があるゼーデルである。
ベリーに忘れられるくらいに影が薄く,非常に臆病な性格をしていた。
そんな彼は今,人気が無く暗い裏通りを一人で歩いている。
「……魔族の気配を探してこいとか,無茶だよ……」
誰かに聞かせるわけでもなく,地面に向かって小さく愚痴った。
絶え間なく感じている,強大な二体の魔族の気配。
ゼーデルが感じている違和感はそれだけではない気がするのだが,相談しても「近くに魔王領があるから」で終えられてしまう。
「……あれ? 何か,この辺……」
急に,ゼーデルの足が止まり,地面に膝をついた。
ずっと下を向いて歩いていたためか,地面の変化に気付く。
「……地面に魔力が通っている? これってまさか__」
そこまで言って,彫像のように固まった。
地面を見ながら進んでいたのが,仇になっている。
前方に,ありえないほど濃い魔族の気配を感じた。
「ちゃんと前見て歩かないと,ぶつかるよ?」
穏やかに苦笑する声が降る。
恐怖のせいか,ゼーデルは顔を上げられない。
「自分から入ってきてくれるとかありがたいよねー! ……バラバラにして連れてくる手間が省けたよ」
静かな朝に似合わない笑い声が,最後に冷たく付け加える。
「……ごめん,怖がらせたよね。でも,仕方がないんだ」
穏やかな筈なのに,空虚で恐怖を煽るような声が続けた。
その声の魔族が杖を取り出したのを,ゼーデルは気配で感じる。
不意に,穏やかな声音の魔族の動きが止まった。
それから少し驚いたように視線をゼーデルからずらす。
「……僕の出番はなさそうだね」
小さくそう笑った魔族が,杖を片付けた。
何が起こっているのかは見えなくても,ゼーデルにはわかる。
一人増えた。
「かわいそーだよね! でもさー,これに至ってはお前が悪い!」
可哀想だとは全く思っていなさそうな少年が無邪気に笑う。
その瞬間,ゼーデルが膝をついていた地面が光った。
「……!?」
それは,巨大な一つの魔法陣。
既に魔力が満たされており,今にも稼働しそうな熱を持っている。
青褪めるぜーデルの周囲を,赤や黒の禍々しい光が覆った。
「__その能力は邪魔なんだ。悪いけど,君には退場してもらう」
冷たく響いた声を最後に,ゼーデルの姿が消え失せる。
三人の魔族は,それぞれ別の方向に立ち去った。
暗い裏通りに,朝の静けさが降りる。
最後までご覧頂きありがとうございます。
一言:平穏は続かないものなんですよ……。
ちなみにもうそろそろ第二章が終わります。
キャラクター一覧を準備中……。




