42.答えのある問い
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光の柱が粒子を巻いて消滅する。
あまりにも静かで,幻想的な光景だった。
一瞬で公園の色が戻り,戦闘前と変わらない静寂が訪れる。
「……リリーナ,やば」
「激しく同意」
ベリーが唖然と呟くと,リオンが何度も頷いた。
使用された聖人の魔法は,“悪”である魔にとっては最悪の魔法だが,それ以外の“善”には祝福として作用する。
故に,ベリー一行の魔力と体力が完全に回復されていた。
対称的なのが,魔である四天王二人。
ルシフェリオは全身傷だらけで地面に膝をつき,グロースに至っては鳥形態だったのが災いしたのか,木に叩きつけられていた。
「……なんっ,で,ここに,聖人が……?」
口元から流れる血を拭って,ルシフェリオが途切れ途切れに問う。
本気で困惑したような声音に,リリーナは穏やかに微笑んでみせた。
「何故でしょうね? 神のお導きとかではないですか?」
勿論真面目に答える気は毛頭ない。
「……聖人は,魔王軍の聖人狩りで全滅したはずでは?」
今度は,ミーシアが疑問を述べる。
それに対して,四天王側も同意するように首を縦に振った。
「そうだよ。あれは魔王様が主導したんだし,一人でも生き残っているわけがない」
ルシフェリオが冷静に告げると,リリーナは笑みを深める。
「でも,実際に生き残っています。ついでに言うと,聖人狩りが行われたのは私が生まれる何十年も前のことですね」
時間の感覚がおかしいのではないか,とさり気なく毒を含んだ。
「聖人狩りが行われたのは三十年前。私達は誰も生まれてないよ」
いつの間にか普段の人間形態に戻ったキャサリンが,言葉の続きを引き取る。
何とも言えない表情で返答を避け,ルシフェリオは静かに立ち上がった。
「……僕達は帰らせてもらうね。このことを魔王様に早く報告しなくては,首をはねられてしまうかもしれない」
本気なのかわからない言葉を残して,ベリー達に背中を向ける。
グロースは不満そうな態度で人間形態に戻り,後を追った。
「……あー! ちょっっと待って!?」
突然,円盤状のまろんに乗っていたベリーが大声を上げる。
驚いた一同の視線が向かう中で,ビシッと四天王二人を指差した。
「ローズ姉に言われてた話,聞いてない!」
「あー」
覚えてたかー……と言いたげな表情で二人が振り返る。
ベリーは二人にジトッとした視線を向けた。
「あのさー,それがあるから私達ここに来たんだよ? 聞き出すまで帰らないもんね」
「そーだそーだ」
リオンが棒読みで賛同する。
手にはしっかり鎌を握っているので,武力行使する準備は万端だと言いたいのだろう。
それに対して二人は顔を見合わせて微妙な表情を浮かべた。
「……何だっけ。魔族と戦わなくて良い道?」
ルシフェリオが首を傾げると,ベリーがコクコクと頷く。
「んなものあるわけ無くない? 無いから今こうなってるわけで」
呆れたようにグロースが呟いた。
その言葉には呆れだけでなく,幾分かの諦めが含まれているのかもしれない。
彼は魔族陣営でありながら,別に魔族ではない。
人類側として魔族と戦っていてもおかしくはなかった。
それでも魔族側についている今があるのは,そういう過去があったからに他ならない。
言外にそう告げられ,ベリー達が言葉に詰まる。
だが,それをキャサリンが真っ二つにした。
「いや,だからこれからどうするか考えるんでしょ? 何,歴史が全てとか思ってる系? 見た目によらず頭良いアピール?」
「はぁ!? やんのか!?」
「さっき負けたのによく喚くねー」
犬猿の仲としか言いようがない二人に,周囲が呆然とする。
「……仲良し?」
「かもしれない」
腑に落ちないという表情でベリーが呟くと,ルシフェリオが静かに同意した。
「まぁそれはともかく,教えてよ」
「めっちゃ上から目線」
キャサリンが溜息一つで言い争いを終わらせ,尊大な態度で尋ねる。
それに対して少し考えるように間を空けたあと,ルシフェリオが小さく微笑んだ。
「そうだね。ここで問答している時間が惜しいから話そう」
思いっきり不満気な表情になったグロースの方を見ずに,言葉を続ける。
「魔王領に,少し変わった一族がいるんだ」
「少し変わった一族?」
一行の疑問符に頷いてから,魔王領の方角を見た。
それから,少し遠い目になる。
「……彼等は,きっと君達の手助けになってくれるよ」
「……? それはどういう__」
リリーナが聞き返すのを遮って,二人は跳躍した。
地面が鈍い音を立てる。
それから一度も振り返らず,大空に飛び立った。
「あーっ!? 待ってよー!」
ベリーが叫んで追いかけるが,円盤はそこまでスピードが出ない。
二つの影は風のような速さで消えていく。
あとに残ったのは,何もなかったかのような静寂と,全てが起こる前の綺麗な公園。
そして,答えを探す手間を押し付けられたベリー達だけだった。
最後までご覧頂きありがとうございます。
一言:四天王が帰っていく時の描写が一番難しいです。
良い感じに終わらないこの感じ……!




