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お菓子の王女は魔王討伐の旅に出る  作者: 冬桜 美狐
第二章 一期一会の旅人達

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41.黒猫と聖女

誤字,脱字報告受け付けております。

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感想,レビュー等大歓迎です。

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「……え?」

 困惑の声が響く。

 それはリリーナ達の声であり,ベリーとミーシアの声であり,ルシフェリオの声でもあった。

 無防備な状態の二人が,公園一体を綺麗に塗り潰した毒の被害を受けていない。

 ミーシアとベリーの頭上を,大きな影が覆っていた。


 それは,黒い生き物だった。

 家一つ分ほどの大きさがある黒猫が,降りかかる毒から二人を守っている。

「えーと……誰?」

 猫相手に誰? と尋ねる根性に呆れつつ,リリーナは杖を構え直した。

 守ってくれたとはいえ,味方とは限らない。

 だが,その不安は杞憂で終わった。

「私はミスラ。ミーシアの眷属なの」

「けんぞく?」

「部下ってことね」

 毒を真正面から受けているにも関わらず,ミスラと名乗った猫はのんびりとした態度で言葉を交わす。

 話を聞いていたリリーナがミーシアの方に視線を向けると,当の本人は唖然と目を見開いていた。

「……ミーシアの眷属というのは,本当ですか?」

 念の為確認すると,ミーシアは小さく頷く。

「はい。危険な旅になりそうだったので,出てこないよう言っていたのですが……」

 困った子を見るような目をミスラに向けつつ,そう弁解した。

 対してミスラは,鋭い目を伏せて適当に受け流す。

「だって,今危なかったじゃない。私がいなかったら,少なからずダメージを負ってたのよ」

 そう言いながら,静かに地上に降りた。

 何故ずっと浮いていたのかについては語らない。

 ミスラは皆が見つめる中で地上に降り,しゅんっと小さくなる。

「ぅえ!?」

 ベリーが驚いたように声を上げた。

 ありえないほど大きかった黒猫が,一瞬で子猫サイズに変わる。

 それを申し訳なさそうな表情で,ミーシアが拾い上げた。

「本当にすみません。こうなるだろうから出てきてほしくなかったんですが……」

 若干遠い目で子猫を抱え,苦笑してみせる。


 何とも言えない表情でそれを眺めていたルシフェリオは,大きく息を吐いてから口を開いた。

「まぁ,防がれたのは残念だね。本気で君達のことを,ここで始末するつもりだったから」

 さらっと告げられた言葉には,何の嘘も感じられない。

 ベリーが少し表情を悪くする。

 実際ミスラが出てこなければ,毒をもろに浴びて死んでいたかもしれない。

 ミーシアの腕の中で微睡む黒猫に,ベリーは心の底から感謝した。

「ただ,防がれたなら……」

 もう一度。

 そう言いたげに,ルシフェリオが杖を構え直した。

 瞬時にリリーナが無数の障壁を展開する。


 しかし,杖が振り下ろされることはなかった。

 横から影が飛び出し,杖を跳ね飛ばす。

「なっ……!」

 ルシフェリオが目を瞬き,数歩後退った。

「あー! キャサリンじゃない!?」

 突っ込んできたのは,黒い毛並みの狼。

 背には犬形態ではしゃぐ,ゆめを乗せている。

「正解。あの鳥は焼いて食べたから安心して〜」

「いや食われてないから!?」

 慌てたように後ろからグロースが追って来ていた。

 片腕が使えない人間形態は不便なのか,本来の姿である鳥形態。

 鳥形態には,叩き落された時の傷が残っていた。

「おかえり。……折角分散させたんだけどな……」

 困ったようにそう呟いて,ルシフェリオは苦笑する。

「こっちの方が沢山いるもんねー! 勝っちゃうかもよ〜?」

「いや,戦うのは私達ですけどね」

 ベリーが煽るように笑うと,リリーナが呆れたように返した。

 それから,自身の杖を公園のパステルな地面に突き刺す。

「ただ,戦う前に綺麗にさせてくださいね」

「ぬ?」

 疑問符を浮かべる一行の方を見ずに,リリーナは杖に魔力を籠(こ)めた。


「……ちょっと待って。それは……」

 ルシフェリオが僅(わず)かに焦ったような表情を浮かべる。

 それに構わず,膨大な魔力は放たれた。


「純然たる聖域(カロフィケーション)」


 穏やかで静かな声音が響く。

 それと同時に,公園一体を半透明の膜(まく)が覆(おお)った。

「……不味い。グロース,防御を__」

 明らかな焦りを含んだルシフェリオの声が途切れる。

 膜に包まれた部分の地面が,一斉に光の柱を立てた。

「眩(まぶ)しっ」

 ベリーが慌てて目元を手で覆う。

 鮮烈な,けれど温かい光が周囲を包みこんだ。


 それは,聖なる祝福。

 悪を打ち払う,絶対的な神の加護。

 邪心あるものは,塵となって“浄化”される。

 それは決して,攻撃魔法ではない。

 真に神の使いである神官のみが使用する,恩寵そのものだ。

 その始まりが,悪の象徴である“魔”を祓うための魔法であったことは,最早公然の事実。

 魔に属する者にとっては,この世で最も危険な魔法である。

 その魔法を,人々は神聖魔法と呼んでいた。


 そして,絶対的で尊きその魔法を使いこなせる神官は,今の時代に殆どいない。

 故に,使いこなせる極めて稀な存在のことを,人々は“聖人”と呼ぶ。



最後までご覧頂きありがとうございます。

一言:ようやくミスラの登場です。

   でもそれを吹き飛ばすのがリリーナの魔法なんですよね。

   このパーティー最強は間違いなくリリーナです。断言します。

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