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お菓子の王女は魔王討伐の旅に出る  作者: 冬桜 美狐
第二章 一期一会の旅人達

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39.天然と人造

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感想,レビュー等大歓迎です。

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 家の群れから離れた公園で,三匹の獣人が争っていた。

 犬獣人のキャサリンは雷を立て続けに叩き落とし,ゆめは歌で援護する。

 対する鳥獣人の魔王四天王グロースは,当然のように人化状態で雷を避(よ)けていた。

「ふーん? 大した事ないじゃん。つまんないー!」

 グロースがけらけらと煽るように笑う。

 それに対して,キャサリンは額に青筋を浮かべながらも冷静に魔法を行使していた。

 明るい空に亀裂が走り,地面が抉(えぐ)れる。

 本気で相手を倒しにかかっているキャサリンの攻撃は容赦がない。

 ついでにゆめは喉の調子が良いらしく,歌も絶好調だ。

 対して,グロースは明るくどこか歪(いびつ)な笑みを崩さない。

 幼い子供のように笑っては,大きな緑の羽で大空を舞う。


 不意にキャサリンは,反撃が全く来ないことに違和感を覚えた。

 だが,それでは遅い。

 グロースが口の端を上げた。

「ははははっ! 気付くのが遅いんだよなー!」

 笑う声と同時に,公園に立っていた木々が一斉に動く。

 枝を振り乱し,大量の葉を落とし,狂ったように踊り出した。

「えー!? なにこれぇ!?」

 ゆめが驚いたように木々から離れると,グロースは可笑(おか)しそうにその場で駒のように回る。

「僕が使うのは自然の魔法なんだよねー。つまり,あらゆる植物は僕のもの!」

「……冗談でしょ」

 キャサリンの声が震えて,僅(わず)かに上擦った。

 雷魔法と植物の相性は,最悪と言っても良い。

 杖を構え直したキャサリンに,無数の木々が襲いかかった。



 同じ頃,また別の公園でも戦いが繰り広げられていた。

 リリーナが防御魔法を張り,それに守られながらリオンが鎌を振る。

 ミーシアは闇魔法で相手の視界を奪っていたが,ベリーはというと。

「ねー! 教えてー! 何でここに来たのー?」

「教えないって」

「なんでー! 教えてよー!」

「だから教えないって」

 しっかり防御魔法の中に待機しつつ,ルシフェリオを問い詰めていた。

 ルシフェリオは暗闇の中で鎌を避けながら,ベリーの問いに答えなければいけない。

 普通に地獄だった。

 それに気付いたのか,ミーシアとリリーナが苦笑を浮かべる。

 無自覚で迷惑をかけているベリーは,気にせず同じ問いを繰り返していた。

「……にしても,防戦一方ですね」

 リリーナが眉を顰(ひそ)めて呟く。

 ルシフェリオは鎌をギリギリで躱(かわ)し続けるばかりで,反撃してこない。

「何か企んでいますね」

 ミーシアが冷静な声音で答える。

 避(よ)けてばかりのルシフェリオは木製の杖を持っているが,それを一度も使っていない。

 だが魔法使いである二人には,杖に集まる魔力の渦が見えていた。


「……埒(らち)が明かない。そろそろ何か出来ないかな」

 かなりの体力を消耗したリオンが防御魔法の中に戻り,疲れたように尋ねる。

「そうですね……。あちらが動いてこれば,対応しやすいんですけど」

「あの人どんな魔法使うんだろーね」

 作戦会議に入った四人を,ルシフェリオは穏やかに笑って眺めていた。

 動く気配はないし,そもそも戦闘中であることを感じさせない。

 まるで植物のように,どこまでも静かな魔族だった。

「……良い人っぽいんだよなぁぁぁ」

 ベリーが頭を抱えて悶絶する。

「でも本当に良い人だったら,ベリーさんの言葉に返してくれるでしょ?」

 ミーシアが困ったように返すと,ベリーはそれもそうか と呟いて立ち上がった。

「とりあえず,ローズ姉の言葉の意味を聞いてみる! ていうか私も戦って良い?」

 どこからか泡立て器を取り出して構える。

 リリーナは少し考えるように目を伏せてから,仕方なさそうに頷いた。

「気をつけてくださいね。多分ベリー,この中では最弱なので」

 ショックを受けたような表情になりつつ,ベリーはリオンと防御魔法を出る。


 その瞬間,気付いた。

 周囲を覆う,異常な量の魔力に。

「……何これ?」

 防御魔法の中では気付かなかったが,公園一体に無数の小さな青緑の球体が浮かんでいる。

 その全てに膨大な魔力が籠もっており,今にも爆発しそうだった。

「まぁ,とにかく全部斬れば良いでしょ」

 リオンがそう言って,鎌を振り被る。

 青緑の球体が,僅かに光を発した。

「……待って,それは__」

 リリーナが気付いた時には,もう遅い。


 無数の球体が一斉に破裂し,辺りを一色に塗り潰す。

 インクをぶちまけたような光景の中で,その粒子はまだ点滅していた。

 青褪めたリオンが,切れ味が悪くなった鎌を振って後退する。

 粒子が一斉に爆発し,大量の粉を撒き散らした。

「……容赦無さすぎでしょう」

 ミーシアが唖然と呟く。

 最初に破裂したのは触れた物を蝕(むしば)む毒で,最後に撒(ま)かれたのは魔力を動きを鈍らせる毒だ。

 どちらも即効型で,危険極まりない劇物。

 その事実に最初に気づいたリリーナは,慌てて逃げ帰ってきた二人に治癒魔法をかける。


 ベリーに被害はなかったものの,庇ったリオンは毒を正面から食らっていた。

「リオン……大丈夫?」

「大丈夫。すぐ治るから問題ない」

 明らかに強がりな言葉を返して,リオンは立ち上がる。

 それを,無言でリリーナが制した。

 一行に小さく微笑んで,そのまま防御魔法を出る。


「行きますよ,ベリーとミーシア」

 名前を呼ばれなかったリオンが困惑を浮かべた。

「え? 何で……」

 それに対して,リリーナの意図することがわかったベリーが笑う。


「今までずっとリオンが頑張ってたけど,リオンだけが無理する必要はないんだよ。私達は,仲間なんだから!」



最後までご覧頂きありがとうございます。

一言:曖昧。凄まじく色々曖昧。

   改めて考えると,リオンって頑張ってばかりなんですよね……。

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