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お菓子の王女は魔王討伐の旅に出る  作者: 冬桜 美狐
第二章 一期一会の旅人達

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38.翠と緑

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 長老の了承を得て,ベリー達は外に出る。

 念の為,長老の家と村長の家にリリーナが防御魔法を張った。

 不安そうな表情のゼーデルと別れて,ベリー達は魔王領の方角へ急ぐ。


「あー,いたね」

 不意にキャサリンが呟いた。

「え?」

 ゆめ以外が困惑を浮かべる。

「……上のあれが鳥獣人。まさか四天王とはね」

 キャサリンが指差した先,遥(はる)か後方の空に,緑の点が見えた。

 よく見るとそれは,鳥の形をしている気がする。

「……あの色,どっかで見た気がするんだけど」

 リオンが,小さくそう零(こぼ)した。


 少し経ってから,地面が派手に揺れる。

「何であんなちっこいのにこんな煩(うるさ)いの!?」

 ベリーがびっくりしたように叫ぶと,キャサリンが苦笑した。

「遠目だから小さく見えてただけ。鳥獣人は鳥形態で人間サイズだよ」

「でかぁ!?」

 まろんが驚いたように返すと,別の場所で地面が揺れる。

 それが伝わって,ベリー達の前方にも亀裂(きれつ)が走った。

「……登場が派手」

 ミーシアが呆れたように呟く。

「まぁローズ姉も草原ぐしゃっだったけどね」

 ベリーが思い出したように答えると,一行が微妙な表情になった。


「四天王は皆,登場にこだわりがあるんですかね」

「いや,ないから。誤解(ごかい)しないでくれない?」

「あれ,そなの? __ん?」

 突然,穏やかな男声が混じる。

 慌ててベリー達が振り返ると,真後ろに一人の青年が立っていた。

「……四天王だね」

 キャサリンが冷静にそう言ってから,杖を構える。


 暗緑色の魔術師風のローブに,同色の魔法使い風の帽子。

 手には蔦(つた)が絡みついた,背丈程ある木製の杖があった。

 明るい橙の髪に,穏やかな光を宿す翡翠(ひすい)の瞳。

 纏(まと)う気配は,明らかに高位の魔族のものだった。

 四天王 という言葉に,軽く頷いて笑みを浮かべる。

 優しげで,どこか冷たい笑みのまま,青年は静かに会釈した。

「僕は四天王の翠玉(エメラルド),ルシフェリオ・ソリタエンツァ。どうぞよろしく」

 慇懃(いんぎん)に微笑んで見せるルシフェリオの目の前で,鋭い刃が閃(ひらめ)く。

 だが,それは澄んだ音を立てて弾かれた。

 ルシフェリオは,微動だにしていない。

「あれー!? 名前,言っちゃって良いの!?」

 場違いなくらい明るい声が響いた。

 目を丸くするベリー達の前に,もう一つの影が降り立つ。

 鴉(からす)のような黒いローブに,羽のような素材で作られた円錐型の帽子。

 どこかルシフェリオに似た服装の少年は,その緑の瞳に狂気を宿して笑った。

「まぁ良いや。僕も名乗っとくー! えーとね……何だっけ?」

「知らんよ?」

 少年がわざとらしく首を傾げると,ベリーが思わずツッコむ。

「ベリーがツッコミに回っている……ですって……?」

 防御魔法を張っていたリリーナが,驚愕(きょうがく)で固まった。

 それを何とも言えない表情で見てから,ルシフェリオは困ったように言葉を引き取る。

「えーと,鳥獣人のリーダーで四天王の緑玉(ペリドット),グロース・ラルコクス君です。仲良くしてあげてください」

「幼児の紹介じゃん」

 すかさずベリーがツッコんだ。

 普段はボケに回っているが,ツッコめるのが嬉しいのだろう。


 グロースは可笑(おか)しそうに笑ってから,唐突(とうとつ)に瞳を細めた。

「……ところで,僕はお前らに用事があるんだよね」

 突然,明るい声が重く尖(とが)る。

 それに対して,キャサリンが僅(わず)かに眉を上げ,ゆめを庇うように立った。

 ルシフェリオは静かに成り行きを見守る体制に入っている。

「……どゆこと?」

「……鳥獣人と犬獣人は仲悪いらしいですから,それ絡みかと」

 困惑するベリーに,リリーナが小さく補足した。

 それが聞こえたのか,グロースが冷たく嘲笑(ちょうしょう)する。

「ずぅっと見てたよ,お前らのこと。んで,そこの犬!」

「え? ゆめ?」

 ビシッと指を差されて,ゆめがコテンと首を傾げた。

 グロースは,今度は恨みがましそうな目でゆめを睨む。

 怖がるゆめを背に隠して,キャサリンが睨み返した。

「……何でお前みたいな奴がこんな所にいるのさ」

 その声は,信じられないくらいに真剣味を帯びている。

 静観(せいかん)していたルシフェリオが,少し驚いたように瞬いていたのだからお察しだ。

「それ,どういうこと?」

 グロースの声に負けないくらい,低く唸(うな)るような声が返される。

 キャサリンは今にも飛び出しそうな程魔力を纏(まと)っていた。

 ゆめは,それを不安そうに眺めている。


「うーん,長くなりそうだね」

 不意に,ルシフェリオが穏やかに笑った。

 視線が一斉にそちらを向く。

 困惑や警戒,それと期待。

 様々な視線を浴びて,ルシフェリオは人差し指を立てて微笑んだ。


「二手に分かれようか。グロースは犬獣人の二人。僕……あれ? あと全員?」

「さんせーい!」

 ハッとしたように指を折るルシフェリオに,ベリーが他意のない明るい笑みを浮かべる。

 リリーナ達も,苦笑を交えた笑みで答えた。



最後までご覧頂きありがとうございます。

一言:四天王の登場は派手に。

   まぁ,魔王も派手でしたからね。

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