38.翠と緑
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長老の了承を得て,ベリー達は外に出る。
念の為,長老の家と村長の家にリリーナが防御魔法を張った。
不安そうな表情のゼーデルと別れて,ベリー達は魔王領の方角へ急ぐ。
「あー,いたね」
不意にキャサリンが呟いた。
「え?」
ゆめ以外が困惑を浮かべる。
「……上のあれが鳥獣人。まさか四天王とはね」
キャサリンが指差した先,遥か後方の空に,緑の点が見えた。
よく見るとそれは,鳥の形をしている気がする。
「……あの色,どっかで見た気がするんだけど」
リオンが,小さくそう零した。
少し経ってから,地面が派手に揺れる。
「何であんなちっこいのにこんな煩いの!?」
ベリーがびっくりしたように叫ぶと,キャサリンが苦笑した。
「遠目だから小さく見えてただけ。鳥獣人は鳥形態で人間サイズだよ」
「でかぁ!?」
まろんが驚いたように返すと,別の場所で地面が揺れる。
それが伝わって,ベリー達の前方にも亀裂が走った。
「……登場が派手」
ミーシアが呆れたように呟く。
「まぁローズ姉も草原ぐしゃっだったけどね」
ベリーが思い出したように答えると,一行が微妙な表情になった。
「四天王は皆,登場にこだわりがあるんですかね」
「いや,ないから。誤解しないでくれない?」
「あれ,そなの? __ん?」
突然,穏やかな男声が混じる。
慌ててベリー達が振り返ると,真後ろに一人の青年が立っていた。
「……四天王だね」
キャサリンが冷静にそう言ってから,杖を構える。
暗緑色の魔術師風のローブに,同色の魔法使い風の帽子。
手には蔦が絡みついた,背丈程ある木製の杖があった。
明るい橙の髪に,穏やかな光を宿す翡翠の瞳。
纏う気配は,明らかに高位の魔族のものだった。
四天王 という言葉に,軽く頷いて笑みを浮かべる。
優しげで,どこか冷たい笑みのまま,青年は静かに会釈した。
「僕は四天王の翠玉,ルシフェリオ・ソリタエンツァ。どうぞよろしく」
慇懃に微笑んで見せるルシフェリオの目の前で,鋭い刃が閃く。
だが,それは澄んだ音を立てて弾かれた。
ルシフェリオは,微動だにしていない。
「あれー!? 名前,言っちゃって良いの!?」
場違いなくらい明るい声が響いた。
目を丸くするベリー達の前に,もう一つの影が降り立つ。
鴉のような黒いローブに,羽のような素材で作られた円錐型の帽子。
どこかルシフェリオに似た服装の少年は,その緑の瞳に狂気を宿して笑った。
「まぁ良いや。僕も名乗っとくー! えーとね……何だっけ?」
「知らんよ?」
少年がわざとらしく首を傾げると,ベリーが思わずツッコむ。
「ベリーがツッコミに回っている……ですって……?」
防御魔法を張っていたリリーナが,驚愕で固まった。
それを何とも言えない表情で見てから,ルシフェリオは困ったように言葉を引き取る。
「えーと,鳥獣人のリーダーで四天王の緑玉,グロース・ラルコクス君です。仲良くしてあげてください」
「幼児の紹介じゃん」
すかさずベリーがツッコんだ。
普段はボケに回っているが,ツッコめるのが嬉しいのだろう。
グロースは可笑しそうに笑ってから,唐突に瞳を細めた。
「……ところで,僕はお前らに用事があるんだよね」
突然,明るい声が重く尖る。
それに対して,キャサリンが僅かに眉を上げ,ゆめを庇うように立った。
ルシフェリオは静かに成り行きを見守る体制に入っている。
「……どゆこと?」
「……鳥獣人と犬獣人は仲悪いらしいですから,それ絡みかと」
困惑するベリーに,リリーナが小さく補足した。
それが聞こえたのか,グロースが冷たく嘲笑する。
「ずぅっと見てたよ,お前らのこと。んで,そこの犬!」
「え? ゆめ?」
ビシッと指を差されて,ゆめがコテンと首を傾げた。
グロースは,今度は恨みがましそうな目でゆめを睨む。
怖がるゆめを背に隠して,キャサリンが睨み返した。
「……何でお前みたいな奴がこんな所にいるのさ」
その声は,信じられないくらいに真剣味を帯びている。
静観していたルシフェリオが,少し驚いたように瞬いていたのだからお察しだ。
「それ,どういうこと?」
グロースの声に負けないくらい,低く唸るような声が返される。
キャサリンは今にも飛び出しそうな程魔力を纏っていた。
ゆめは,それを不安そうに眺めている。
「うーん,長くなりそうだね」
不意に,ルシフェリオが穏やかに笑った。
視線が一斉にそちらを向く。
困惑や警戒,それと期待。
様々な視線を浴びて,ルシフェリオは人差し指を立てて微笑んだ。
「二手に分かれようか。グロースは犬獣人の二人。僕……あれ? あと全員?」
「さんせーい!」
ハッとしたように指を折るルシフェリオに,ベリーが他意のない明るい笑みを浮かべる。
リリーナ達も,苦笑を交えた笑みで答えた。
最後までご覧頂きありがとうございます。
一言:四天王の登場は派手に。
まぁ,魔王も派手でしたからね。




