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お菓子の王女は魔王討伐の旅に出る  作者: 冬桜 美狐
第二章 一期一会の旅人達

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37.共有と整理

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感想,レビュー等大歓迎です。

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「過去については殆(ほとん)ど話しましたが,他に何か聞きたいことはありますか?」

 話を終えた長老が問うと,ベリー達は顔を見合わせる。

「……あ,一つ良いですか?」

 キャサリンがふと思い出したように挙手した。

 長老が首を傾げると,キャサリンは一瞬だけ扉の方に視線を投げる。

「えーと,ゼーデルさん? って,何か特殊な力とか持ってます?」

「特殊な……?」

 困惑を浮かべるベリー達と違い,長老は少し驚いたようだった。

 意外と気付かれるものなのですか と呟いてから,同意するように頷く。

「そうですよ。あの子は呪われたこの地に生まれたことで,少し変わった能力を持っているんです」

「変わった能力!? かっこいい!」

 ゆめが目を輝かせると,長老は少し微妙な表情になった。

 それから,静かに言葉を続ける。

「あの子は“魔族の気配を察知する力”を持っているのです」

「え……!?」

 すごくない!? と言いかけて,ベリーがハッと動きを止めた。

 そのまま,そっと視線を窓の方に向ける。

 相変わらずの,禍々(まがまが)しい暗雲。

 察した一行に,長老が重々しく頷く。

「隣が魔王領ですからね。常日頃から気配を察知しているんですよ」

「それは……大変そうですね」

 リリーナがなんとも言えない表情で,全員の気持ちを代弁した。


「……そう言えば,妾(わらわ)からも一つ質問を良いですか?」

 不意に,長老が控えめに呟く。

 ベリーは姿勢を正して続きを待った。

「……確か目的は魔王討伐,ですよね。その様子だと,この村に妾がいることも知らなかったでしょう? 何故立ち寄られたのです?」

 その言葉に,一行がハッとしたような表情になる。

「あのっえっと! ローズ姉がドパーンってしたらここがズガーンてなるって!」

「はい?」

 ベリーが自分史上最高に丁寧に説明すると,当然長老は疑問符を浮かべた。

 伝わらなかったショックで震えるベリーに呆れたような視線を向けてから,リリーナが口を開く。

「先日ローゼリアという魔王四天王と遭遇(そうぐう)しまして。その時に,残り二人の四天王がこの村に来る,と言っていたんです」

 簡潔(かんけつ)かつ丁寧に説明すると,長老はふと首を傾げた。

「……残り二人ということは,其方等(そなたら)は既(すで)に四天王二人に遭遇しているのですか?」

「そう……だと思います。ローゼリアと,ウェルフィマ……だよね?」

 キャサリンが頷いてから確認するようにリリーナ達を見る。


 すると,長老は何度か瞬いてから,小さく「ウェルフィマ……?」と呟いた。

「知ってるんですか?」

 ベリーが問うと,長老は困ったように微笑む。

「どこかで聞いたような気がするのですが……物忘れが酷(ひど)いもので」

 申し訳なさそうな表情になった一行に苦笑しつつ,小さく続けた。

「……その四天王の話が本当なら,この村は危険ですよね」

「そうだと思います。四天王は高い実力と残虐(ざんぎゃく)性を兼ね備えているという話ですから」

 ローゼリアだって残虐性はともかく,高い実力を有しているのは間違いない。

 リリーナが少し沈んだ声で告げると,長老は少し考え込むように黙り込む。


 それから,すっと青い瞳を細めた。

「其方等,本気で魔王を倒す気ではないでしょう」

 ベリー達が驚いたように目を丸くする。

「……そうです。ベリーが,魔王軍と戦わない道を探したいと」

 リリーナが言葉を整理するように答えると,長老は少し表情を緩(ゆる)めた。

「……貴女(あなた)はカランティ様の孫ですからね。そうなるでしょう」

「?」

 本人が,ほぁ? と言いたげな表情を浮かべる。

 その反応に軽く頷いて,長老は続けた。

「カランティ様は『魔族だって同じ生き物。話せばわかり合えるさ』と言っていました。……あの口調からして,多分彼女は魔族と関わったことがあるんでしょうね」

 リリーナやキャサリンの表情が驚愕(きょうがく)に変わる。

 稀代(きだい)の大魔法使いが,魔族との友好を望んでいた。

 それはどんな歴史書にも,魔法書にも書かれていない事実である。

 しかも,既に魔族と交流があるということが知れれば,これまでの定説が大きく覆(くつがえ)されるだろう。

 それを理解している二人の驚愕に気付いたのか,長老は悲しげに微笑んだ。

「カランティ様の実態は,他者に告げると混乱しか招きませんからね。妾達はずっと秘匿(ひとく)してきました」

 広めてはならない,と暗に告げられ,ベリーは口を手で覆(おお)って頷く。


 その時,扉が控えめに叩かれた。

 長老が入室を許可すると,少し慌てた様子のゼーデルが入ってくる。

 僅(わず)かに青褪(あおざ)めた表情から,ベリー達は察した。


「強大な魔族の気配が二つ感じられました。この村に向かっています!」


 魔族は,ベリー達を待ってくれない。

 窓から見える暗雲が,一層不気味に揺れた。



最後までご覧頂きありがとうございます。

一言:ほのぼの回なのか,何なのか。

   自分史上最高に何とも言えない回になりましたね。

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