35.流石に意外
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「__そうですか。貴女達がカランティ様の言っていた……」
リリーナがこれまでの事とカランティとの関わりを話すと,長老は何度か頷いてそう言った。
それから,何故か自身の膝の上に収まったまろんを撫でる。
「カランティ様から話は聞いていました。ただ,人数が増えていたもので」
先程とは打って変わって穏やかな表情で,長老は続けた。
「あー……。ていうか,ラティお祖母様はどこまで知ってるの?」
ベリーが困惑を浮かべると,長老は小さく笑う。
ちなみに一行の半分くらいは,話について行けていない。
リオンとゆめは寝ていたし,まろんとミーシアはその話の時はいなかった。
ちなみにリオンは現在も既に寝る体制に入っている。
「グラッセリアが魔王に滅ぼされたことも,孫と弟子が討伐の旅に出たことも,犬獣人を仲間にしたことも知っていますよ」
「そうなんですか!?」
長老が普通の表情で告げると,リリーナが驚愕を浮かべた。
カランティは,何年も前に行方を晦ましている。
愛弟子であるリリーナにも何も言わずに。
それを察したのか,長老が苦笑を浮かべた。
「カランティ様は元気ですよ。今はグラッセリア近辺の森で仲良く平和に暮らしています」
「……仲良く? 別の人もいるの?」
キャサリンが首を傾げると,長老は何かを思い出すように視線を外に向ける。
「いますよ。俗に……というかカランティ様が勝手に呼んでいる名前では“カランティ三銃士”というのですが……」
「名付けセンスがベリーレベル」
リリーナがぼそっと零し,ベリーがそれほどでも〜 と言いたげに笑った。
その様子を微笑ましそうに眺めたあと,ふと微睡んでいるリオンに視線を向ける。
「……その子は,シレーナの言っていた鎌使いでしょう?」
「師匠のこと知ってるの?」
飛び起きたリオンが驚いたように問うと,長老は軽く頷いた。
「カランティ三銃士の一人ですよ。三銃士はカランティ様とシレーナ,そして私です」
流石に想像していなかったのか,リリーナの表情が固まる。
キャサリンは苦笑しながらゆめを撫でていた。
「……じゃあもしかして,師匠が会いに行くって言ってたのは……」
「あぁ,一応シレーナはカランティを主と見ていますよ」
まさかの繋がりに,一行は声も出ない。
「リオン,仲間にしといて良かった……」
ベリーが小さく呟くと,リリーナも静かに同意した。
「それはともかく。妾にこの村の歴史について尋ねたいのでしょう?」
「あっ! そうだった……。お願いします」
ハッとしたように声を上げてから,ベリーがペコリと頭を下げる。
長老は膝の上のまろんを返してから,滔々と語り始めた。
*……*
妙に静かな夜だった。
一つの町程の人口を持つ大きな村は,通常は夜でも賑わっている。
その日は,皆が何かを避けるように,何かに怯えるように室内に閉じこもっていた。
幼馴染の家に届けるものがあった私は,白い石畳を小走りで進んでいた。
だが,それはもう遅かった。
私が辿り着いた幼馴染の家は,燃え落ちていた。
燃えていた,という表現は正確ではない。
仄暗い黒炎に焼かれ,影もなかった。
無惨な残骸と化した家の上に,一人の魔族が浮かんでいた。
暗い夜のなかで,その姿をはっきりと視認することは出来なかった。
だが,私はその魔族が誰なのかを知っていた。
私の幼馴染の青年は,最近同年代の少女と親しかった。
どこから来たのかもわからない,人間とは思えない程美しい少女だった。
今思えば,その目は魔族であることを示す濃い色をしていたと思う。
恐らく彼女は,人間のフリをしていた魔族だ。
少し素行が悪いが勘の鋭い幼馴染は,彼女の正体に気づいてしまったのだろう。
*……*
「……ん? ちょっと待って」
ベリーが唐突に話を遮った。
それに,ゆめが賛同する。
首を傾げる一同に向けて,ベリーは僅かに震えた声で続けた。
「……それ,そっくりなお話してなかった? ミーシアが」
「ん? ……あぁ。言われてみれば,似ていますね」
前に話してベリー達を震え上がらせた,実際にあった怖い話(?)である。
それを思い出したのか,キャサリン達も軽く頷いた。
「あれ? でも確か,人間が魔族のフリをしたんじゃ……」
「みーしあのお友達なら,みーしあ……めちゃくちゃお婆さんだよね」
獣人二人が矛盾点を上げると,ミーシアが困ったように笑う。
「私はあのお話で,一つ嘘をついたんです。実際は私の友人ではなく,母親が『生まれた村に伝わる話』として語っていたことなんですよね」
「……え,じゃあさ。ミーシアのお母さんが生まれたのって……」
ベリーがハッとしたように顔を上げた。
話を静かに聞いていた長老が言葉を引き継ぐ。
「ここでしょうね。歴史というのは改変され,作り変えられていく物。御伽噺のように伝わっていても不思議ではありません」
その言葉には,妙な実感が籠もっていた。
最後までご覧頂きありがとうございます。
一言:これは長くなりそうな予感……。
長老も見た目は若いですが,凄くお年寄りなんですよね。




