34.人々の繋がり
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苺のぬいぐるみ__まろんが仲間になって,一行は改めてその場を後にする。
「目を瞑ってくださいね! まろんさんも!」
転移魔法の魔法陣の上に全員が立ってから,ミーシアが思い出したように告げた。
まろんの目はボタンで出来ているが,閉じることが出来るらしい。
眩しい程の光と共に,一行の姿は草原から消える。
次の瞬間,目当ての村に現れた。
「__うわあ!?」
「わああ!?」
突然叫び声が響いて,驚いたベリーが叫び返す。
「……って,人間? ですか?」
叫んだ人物は何度か瞬いた後,首を傾げた。
転移したのは村の端の方なのか,周囲には誰もいない。
「? 私は人間だよ? ベリーっていうの」
ベリーが自己紹介すると,叫んだ人物__金髪の穏やかそうな少年は,ハッとしたように礼をする。
「この村の住民の,ゼーデルと言います。えっと……皆さんは?」
律儀に名乗ってから,困惑したような表情を浮かべた。
「えーとね,こっちからリリーナとゆっちゃんとキャサリンとリオンとミーシアとまろん! 魔王討伐を目指してる勇者なんだよー!」
「ま,魔王討伐!? 無茶じゃないですか……!」
困惑を一瞬で驚愕に変えて,ゼーデルが叫ぶ。
驚いたように耳を押さえるベリーに慌てて謝ってから,ゼーデルは視線を遠くに向けた。
その方向には,相変わらず禍々しい気配を持つ魔王領がある。
「……魔族は,一人でこの大きな村を滅ぼしたんです。それもたった一晩で」
「え? ……どうして?」
ベリーが色々な疑問をまとめて尋ねると,ゼーデルは困ったように笑った。
「僕も詳しいことは知りません。曾祖母の長老だけが,当時のことを知っているので……」
その言葉に,ベリー達は顔を見合わせる。
ゆめとまろんが,目を輝かせていた。
キャサリンやリリーナも,仕方なさそうに頷く。
「じゃあ! その長老さんのお話,聞かせてください!」
通されたのは,村で一番大きな屋敷の隣にある小さな家だった。
「……あっちじゃないの?」
ベリーが首を傾げると,ゼーデルが苦笑する。
「長老は魔族の目につくことを恐れていますからね。あちらには現村長である僕の祖父母が住んでます」
「ぜーでるさんは,おえらいさんなの?」
まろんが目を瞬くと,ゼーデルは「苺が喋った!?」と驚いてから小さく頷いた。
「……この村は曰く付きだから,人があまりいないんです。だから,偉いとかは特になくて」
「曰く付き?」
キャサリンが問うと,ゼーデルは一番奥の扉を指差す。
「あそこにいる長老が教えてくれると思います」
そう言ってから,扉を開けた。
「__何の用ですか? ゼーデル」
そこにいたのは,三十代半ばくらいの女性だった。
キャサリン達と同じくらいの年齢のゼーデルの曾祖母には,とても見えない。
喪服めいた黒と白の着物に,古風な口調。
真っ白な髪はそのまま流され,確かに存在しているはずなのに,儚く見えた。
「……魔族について知りたいという方々がいましたので,連れてきました」
「そう。下がってなさい」
素っ気ない態度で一瞬だけベリー達を見てから,ゼーデルに向けて出ていくように示す。
ゼーデルが去ってから,長老は深く溜息をついて腰掛けていた椅子から立ち上がった。
「其方等のように,妾にあの時のことを尋ねる若者は多いのですが」
重々しく告げてから,射抜くような目でベリー達を見据える。
「問いますよ。何故,知りたいと思うのです?」
リリーナやミーシアが息を呑んだ。
目には見えない,魔力の圧を感じ取っている。
それには気付かないのか,ベリーが姿勢を正して答えた。
「魔王を討伐するためです!」
「…………何?」
声が重く尖り,部屋の空気が凍る。
同時に,リリーナが立ち上がって杖を構えた。
「え? え?」
事態が把握出来ていないベリーが周囲を見回すと,ゆめとまろんが同じ反応をしている。
キャサリンとリオン,ミーシアは杖と鎌を構えかけていた。
「……反応の素早さだけは認めるけれど。何を言っているのです?」
そこでようやく,ベリーも気がつく。
長老から溢れ出る,深い憤怒の魔力に。
自分が無意識にその圧倒的な“攻撃”を無効化していたことには,気付いていない。
冷たく澄んだ青い目が,僅かな困惑を帯びた。
「……魔王に歯向かうなど,愚の極み。帰りなさい。愚者に付き合う趣味はありません」
そう切り捨て,長老は腰掛けていた椅子に戻る。
それに対して,ベリーがムッとしたように頬を膨らませた。
それぞれが何かを考えるように視線を逸らす中で,ふとまろんが頭を傾ける。
「ちょーろーさん! いっこしつもんしてもいい?」
「なんですか」
長老の態度は冷たいが,まろんは気にしない。
まろんは少し言葉を選ぶように間を空けたあと,明るく笑った。
「このむらって,べりーのおばあさまのまほうでできてるよね?」
「……え?」
ベリー達は勿論,長老も困惑したような表情を浮かべる。
そこで,リリーナがハッとしたように顔を上げた。
「……もしかしてですが。魔族によって滅ぼされたこの村を創り直したのは,カランティという方ではないですか?」
長老の驚いたような顔が,それが事実だと答えていた。
最後までご覧頂きありがとうございます。
一言:また新キャラ……。
第二章終了時が楽しみですね……!




