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33.ベリーと苺

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 翌日。

 草原の空は曇天どんてんと晴天に割れていた。

 ベリー達はいつもと変わらないルーティーンで朝を過ごす。

「それで,その何とか村に行くんだっけ?」

 朝食を口に入れながら,ベリーはそう首を傾げた。

 ちなみにベリーは外で寝ているのを発見されて,リリーナに怒られたあとである。

 寝ているのを見つけた張本人であるリオンは知らぬ顔で朝食を済ませていた。

「ヘルト村,ですよ。そこに四天王が来るなら,行くべきでしょうね」

 まだ怒りは収まっていないらしいリリーナが,素っ気なく答える。

 それを聞きつつ,キャサリンはゆめの頭をでながら付け加えた。

「確かあっちの近道を使っても良いけど,転移魔法でも行けるんでしょ?」

「……転移魔法。身体バラバラ」

 リオンがぽつりとこぼした言葉に,ミーシアは苦笑し,ベリー達が震え上がる。

「失敗したことはないですから! ほら,私バラバラじゃないでしょう?」

「あー……確かに!」

 ゆめが何度か頷いて,輝かんばかりに笑った。


「荷物まとめた? 忘れ物無い?」

 ベリーがその場でくるくると回って,周囲を確認する。

「テントの中にこれ,置いたままだけど良いの?」

「ぬ?」

 回るのを止めたベリーがキャサリンの方に行くと,その手には大きな苺のぬいぐるみがあった。

「あー! ダメダメ! この子はこっちだから!」

 慌てたようにぬいぐるみをつかんで,自分の袋の中に押し込む。

「そういえば,その子は何で連れてきたんです?」

 ふと思い出したように,リリーナが問うた。

 ベリーはいくつかぬいぐるみを持っていたが,旅に連れてきたのは大きな苺だけ。

 その問いに,ベリーは少し考え込むように沈黙する。

「うーん……。何か,持ってって言ってる気がしたんだよね」

「そうなの?」

 疑問符を浮かべたゆめが,頭がはみ出している苺に声をかけた。

 当然返事はない。

 はずだった。


「そーだよ! おいてかれたくないから,ついてきたんだよ!」

 喋った。

 ベリーが目を丸くして,苺のぬいぐるみを取り出す。

 糸でわれた口が動いていた。

 あめ色のボタンで出来た目が瞬く。

「……え?」

 しばらく見つめ合っていたベリーが,小さくそう零した。

 大きな苺は一行の困惑こんわくに気付いたのか,ベリーの手から降りて草原に立つ。

「はじめまして! べりーのいちごのぬいぐるみといいます。なんか,しゃべれました!」

 幼児のように辿々(たどたど)しい口調でそう言ってから,綿がつまった体を曲げてぺこりと礼をした。

 ベリーはそんな苺を見て,次にリリーナを見る。

「いや,私何もしてないですよ!?」

 視線の意味に気付いたのか,リリーナが激しく首を振って否定した。

 次いで視線を向けられたキャサリンとミーシアも,自分は関係ないと主張するように視線を逸らす。


 その様子を見ていた苺が,にぱっと笑った。

「えーとね! “縺?■縺”はね,べりーのおばあさまのまほーでうごいてるの!」

「ん? なんて?」

 ベリーがふっと真顔になって尋ねる。

 すると,ぬいぐるみは頭の方をかしげた。

「? べりーのおばあさまのまほーでうごいてるの!」

「違います。その一個前」

 リリーナが重ねると,苺は納得したように頷く。

「あー! あのね! “縺?■縺”には,なまえがないの!」

「え? いちごじゃないの?」

 ゆめが不思議そうに見つめると,ぬいぐるみは胴体を上下に振った。

「それはなまえじゃない! ってべりーのおばあさまが」

「ラティお祖母様わかってるぅ」

 ベリーが感心したように呟く。

 前までは祖母のことをラティ姉様と呼んでいたが,自分の祖母だとわかって呼び方を変えたらしい。

「うーん,じゃあさ! お名前つけてあげようよ!」

 ゆめがパッと顔を輝かせてそう言うと,ベリーも確かに! と賛同した。


「そーだなぁ……いちゴンとかは?」

「つよそー!」

 苺が目を輝かせる。

「いちぬい,とか」

「かしこそー!」

 ぬいぐるみが糸でできた手を組んだ。

「……なんかベリーみたいだね。この子」

 キャサリンが苦笑すると,一行が納得したような声を漏らす。

「べりりんとかは?」

「べりーちとか」

 出てくる案が,一気にベリーらしい名前に変化した。

 苺が べりーっぽい! と喜ぶ。

 その中で,珍しく真剣な表情で考え込んでいたベリーがふと顔を上げた。

「“まろん”……なんてどう?」

 人差し指を立ててそう呟くと,全員の視線が向く。

「良いね〜! けど,何で? いちごだよ?」

 ゆめがコテンと首を傾けると,ベリーはふふん と胸を張った。

「まろんってくりのことだけど,苺なのに栗って面白いでしょ? 他にも理由はあるけど……まぁ,良いかなって思って!」

 なるほど……と,それぞれが納得の反応を見せる。


 その様子を見てから,苺は花開くように笑った。

「じゃあ,きょうからまろんも,べりーたちのたびのなかまにしてください!」


最後までご覧頂きありがとうございます。

一言:苺が喋ってますね……。

   ちなみにお名前は,ベリー本人様のご希望です!

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