↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お菓子の王女は魔王討伐の旅に出る  作者: 冬桜 美狐
第二章 一期一会の旅人達

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/73

31.人間と それ以外と

誤字,脱字報告受け付けております。

見つけた際は遠慮なく報告して頂けると幸いです。

感想,レビュー等大歓迎です。

ブックマークも是非お願い致します。

 

 草原が,燃えていた。

 一瞬で,青々と風に揺れていた草が焼き尽くされる。

 その一部分だけが,切り取られたように赤く染まっていた。

 広く広大な草原の,ほんの一部。

 ロ(・)ー(・)ゼ(・)リ(・)ア(・)が(・)立(・)っ(・)て(・)い(・)た(・)場(・)所(・)。


「……ん!?」

「ちょっと!?」

 ベリー一行が目を剥(む)く。

「……きゃさりん?」

 炎の発生源__一筋の雷をその目に捉えてしまったゆめが,震えながら呟いた。

 キャサリンは,ゆめの声に答えない。

 尋常(じんじょう)ならざる態度に,ゆめ達が困惑を浮かべた。

 それでもキャサリンは,どこまでも冷たく尖った黒い瞳で,目の前で燃え盛る火を見ている。


「__違う」

 それから,ぽつりとそう零(こぼ)した。

 ゆめ達が驚いたように視線を向ける。

「……何が? 何が違うというの?」

 それに答える声が,頭上から降った。

 咄嗟(とっさ)に振られたリオンの鎌が,躱(かわ)されて空(くう)を切る。

 空中で身を捻(ひね)って避(よ)けたローゼリアは,音を立てずにベリー達の背後に降り立った。

 衣服や髪の一部が焦げ,薔薇赤(ローズピンク)の目が据(す)わっている。


 幽鬼(ゆうき)めいた動きで,キャサリンがローゼリアの方を振り返った。

 それから,深く息を吸う。

「貴女の言ってることは,間違ってる! 人間と,人間じゃない種族が相容(あいい)れないなんて時代はもう終わった! それは私が,私達が証明できる!」

 草原一帯に響(ひび)き渡った声に,全員がそれぞれの反応を見せた。


 ローゼリアは何度か瞬(まばた)いてから,目を細める。

「……確か犬獣人でしょう? 犬獣人は人間とは仲が悪いって聞くけど……どういう心変わり?」

 挑発的なローゼリアの言葉に,ゆめやベリーが悲しそうな表情になった。

「私だって……人間のこと,最初は信じてなかった。でもベリー達と話して,歴史が全てじゃないって思ったの」

 キャサリンが反論すると,ハッとしたようにゆめも何度か頷く。

「そうだよ! ゆめは,べりー達に助けてもらった! 人間には,良い人もいるんだよ!」

 ベリーとリリーナが,顔を見合わせて嬉しそうに笑う。

 リオンも少し表情を緩(ゆる)めて同意を示した。

 ミーシアは特に反応を見せず,静かに成り行きを見つめている。

 その様子を見ていたローゼリアは,少し不服そうに眉を上げた。


「……なら,何で私とベリーは」

 草原に一層強く吹いた風が,言葉の続きを攫(さら)っていく。


「……ローズ姉。キャサリンの話を聞いてて思ったんだけどさ」

 不意に,ベリーが小さく口を開いた。

 訝(いぶか)しげに視線を向けたローゼリアに,ベリーが静かに言葉を重ねる。

「私,あの記憶に,あの思い出に嘘をつきたくないの。……だから,ローズ姉と戦わなくて良い道を探したい。ダメかな?」

 ローゼリアが虚(きょ)を突かれたように動きを止めた。

 その瞳には,困惑と警戒,それ以外の無数の感情が渦巻いている。


 何かを考えるような間が空いたあと,ローゼリアは少し不満げな表情になった。

「……拍子(ひょうし)抜けね。今日は本気で貴女を始末するために来たのに……覚悟は決まっていないわけ?」

 呆れたようにそう言う姿は,見た目相応の幼さを持っているように見える。

 少し申し訳なさそうな,それでも意志の強い瞳で見つめてくるベリーに,ローゼリアは深く溜息を吐いて首を左右に振った。

「もう良いわ。覚悟が決まったら来なさいな。……私達が戦わなくて良い道なんて,一つしかないんだから」

 小さく呟かれた言葉に,ベリー達がハッとしたように顔を上げる。

 その様子を見て,ローゼリアはほんの少しだけ苦笑してから身を翻(ひるがえ)した。


「絶対見つける! どうやったら見つけられる!?」

 慌ててベリーがそう問うと,ローゼリアは少し考え込むような仕草を見せたあと,遥(はる)か後方の空に視線を向ける。

 魔王領とは反対側の,明るい空を。

 疑問符を浮かべてそちらに視線を向けるベリー達に対して,ローゼリアは悪戯(いたずら)を思いついたような表情を浮かべて言った。

「あの向こうにある村に,残(・)り(・)二(・)人(・)の(・)四天王が行くわ。その二人に聞いてみれば,何かわかるかもしれないわね」

 軽やかな声を残して,深紅の少女は風に乗って去っていく。


 どこまでも広い草原に残されたベリー達は,長い間,暗雲の方を眺めていた。



最後までご覧頂きありがとうございます。

一言:一度ベリーを平仮名で打つと,全て平仮名になってしまいます。

   ゆめの台詞以外で平仮名があったら教えてください……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。