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お菓子の王女は魔王討伐の旅に出る  作者: 冬桜 美狐
第二章 一期一会の旅人達

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30.草原を舞う

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「__ベリー!」

 顔を真っ青にしたリリーナが,ベリーの周囲に無数の防御魔法を展開する。

 弾き返されたローゼリアが頬を膨らませて距離を取ると,リオンの容赦ない鎌が襲(おそ)った。

「一刃必捉(ソルプレーファ)」

 小さく告げると同時に,無駄のないスピードの鎌がローゼリアの首筋を通る。

「……!」

 刃が当たる寸前,ローゼリアの姿が掻(か)き消えた。

 その瞬間,リオンが横に吹き飛ばされる。

「リオン!?」

 ベリーが目を丸くすると,リオンはむっと不満気な顔で立ち上がった。

「動きが遅いわね。拍子(ひょうし)抜けよ」

「一筋の閃撃(エクレトラール)!」

 ローゼリアの言葉を遮(さえぎ)るように,巨大な雷が落ちる。

 辺り一帯を焼き尽くすような魔法も,姿を消したローゼリアには当たらない。

「……どうして消えるんでしょうか」

「瞬間移動系の魔法,とかですかね」

 リリーナとミーシアが冷静に会話を交わす。


「なら……これかな」

 少し考え込んだ後,リオンは鎌の持ち方を変えた。

「風刃舞乱(フィローレ・ヴィント)」

 そう呟いた瞬間,辺り一帯の風が沈黙する。

 リオンを中心に,尋常(じんじょう)ではない竜巻が発生していた。

「……魔法じゃないんだよね。ヤバくない?」

 キャサリンが唖然(あぜん)としつつ,ローゼリアの方に視線を戻す。

 ローゼリアも流石に鎌使いの攻撃は読めないのか,警戒するように数歩下がっていた。

「そーれっ」

 規模と迫力に似合わない軽い掛け声と共に,竜巻が大きく動く。

 竜巻は瞬く間に大きく広がって,辺り一帯を覆(おお)ってから去っていった。

 それはほんの一瞬のことだったが,竜巻の範囲に入った草原は,草一本生えていない剥(む)き出しの土地になっている。

 咄嗟(とっさ)に対応できなかったローゼリアは,獅子に庇(かば)われたことで傷はなかった。

 だが,竜巻を正面から受けた獅子は既(すで)に,満身創痍(まんしんそうい)といった様子で崩れ落ちている。

「……どういうこと……?」

 ミーシアの困惑は,その場にいる全員のものでもあった。

 竜巻の範囲にいたベリー達は,何(・)も(・)受(・)け(・)て(・)い(・)な(・)い(・)。

 説明を求められていることに気付いたのか,リオンが警戒を崩さないまま話し出す。

「今使える鎌の技の中で……三番目? くらいに強い奴。自分が敵だと認識した相手だけダメージを受けるんだって」

「すごーい……」

 ゆめは何度も目を瞬いて,驚きをどうにか逃がそうとしていた。

「待ってゆっちゃん私の方が凄(すご)いよ!?」

 キャサリンが驚愕(きょうがく)したように杖を構え直すと,ゆめが少しだけ視線をそちらに向ける。

「……でも,きゃさりんの魔法はもう見たことあるから」

「なっ……!?」

 ショックで倒れ込みそうなキャサリンを押さえつつ,リリーナが冷静な瞳でローゼリアの方を見た。

「その話は後にしてください。敵は一応無傷なんですよ」

 リリーナの言葉に,話についていけなかったローゼリアが賛同する。

「そうよ! 貴女達,少し四天王を舐めてるんじゃないの!?」

 やっぱりあの女のせいなわけ……? と続けてから,ローゼリアは一瞬で移動した。


「……肉弾戦とか絶対嫌だし,シャルルもいないからさっさと終わらせましょう」

 いつの間にか消えている獅子の名を出してから,ベリー達の背後に降り立つ。

「そういえば一個だけ言っておくけど」

 すかさず飛んできた雷を避(よ)けて,立ち尽くすベリーに肉薄した。

 リリーナの魔法に弾かれる前にすぐ後退り,手元に魔力を込める。

「私は別に,瞬間移動の魔法を使ってるわけじゃないのよ」

「……!?」

 キャサリン達の表情に驚きが浮かんだ。

 それを気に留めず,ローゼリアは軽く腕を振る。

 次の瞬間,彼女の周囲を囲むように,無数の赤黒い柱が起立した。


「さぁ,避(さ)けてご覧なさい!」

 軽やかな声とともに,柱が一斉に弾(はじ)ける。

「わぁっ!?」

「これ当たったらヤバいかも」

 慌てふためくゆめの首根っこを掴んで,リオンが鎌で自身の前を高速で切り刻んだ。

 空間が途絶え,襲(おそ)い来る水飛沫(みずしぶき)が届かなくなる。

 リリーナは防御魔法でベリーと自分を護(まも)り,キャサリンは上に飛んで逃げていた。


「……あの,ベリーさんはどうしたんですか?」

 水飛沫を闇魔法で吸収していたミーシアが問うと,先程から微動だにしないベリーに全員の視線が向く。

 雷と風,そして赤黒い飛沫(しぶき)が舞うその場で,ベリーはただ呆然と目を瞬いていた。

「…………私,ローズ姉が四天王なんて,知らなかった」

 僅(わず)かに零(こぼ)れた呟きに,半数が疑問符を浮かべる。

「私だって初めて知りましたよ。いや,魔族なんじゃないかとは思ってたんですが」

「まぁ教えてないもの。知らなくて当然ね」

 困惑していないのは,リリーナとローゼリアの二人だ。


「えーと,本当にどういうこと?」

 キャサリンが雷を落とすのを止めて降りてくると,他三人も動きを止めてベリー達を見る。

 その様子を見て,ローゼリアは仕方なさそうに溜息をついてから話し始めた。

「面倒だから話すけど……私はベリーが小さい時に会っていたの。ちなみに理由はグラッセリアの偵(・)察(・)と(・)監(・)視(・)」


「……お友達なの?」

 ゆめが純粋(じゅんすい)な瞳で首を傾げると,ローゼリアは不愉快そうに目を細める。

「違うわよ。ベリーは人間で,私は人間じゃない。相容(あいい)れるわけないわ」

 冷たく拒絶(きょぜつ)するような声が,妙に静まった草原に響いて,零(こぼ)れ落ちた。



最後までご覧頂きありがとうございます。

一言:敵が出てくると戦ってばかりになるので,色々入れました。

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