30.草原を舞う
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「__ベリー!」
顔を真っ青にしたリリーナが,ベリーの周囲に無数の防御魔法を展開する。
弾き返されたローゼリアが頬を膨らませて距離を取ると,リオンの容赦ない鎌が襲った。
「一刃必捉」
小さく告げると同時に,無駄のないスピードの鎌がローゼリアの首筋を通る。
「……!」
刃が当たる寸前,ローゼリアの姿が掻き消えた。
その瞬間,リオンが横に吹き飛ばされる。
「リオン!?」
ベリーが目を丸くすると,リオンはむっと不満気な顔で立ち上がった。
「動きが遅いわね。拍子抜けよ」
「一筋の閃撃!」
ローゼリアの言葉を遮るように,巨大な雷が落ちる。
辺り一帯を焼き尽くすような魔法も,姿を消したローゼリアには当たらない。
「……どうして消えるんでしょうか」
「瞬間移動系の魔法,とかですかね」
リリーナとミーシアが冷静に会話を交わす。
「なら……これかな」
少し考え込んだ後,リオンは鎌の持ち方を変えた。
「風刃舞乱」
そう呟いた瞬間,辺り一帯の風が沈黙する。
リオンを中心に,尋常ではない竜巻が発生していた。
「……魔法じゃないんだよね。ヤバくない?」
キャサリンが唖然としつつ,ローゼリアの方に視線を戻す。
ローゼリアも流石に鎌使いの攻撃は読めないのか,警戒するように数歩下がっていた。
「そーれっ」
規模と迫力に似合わない軽い掛け声と共に,竜巻が大きく動く。
竜巻は瞬く間に大きく広がって,辺り一帯を覆ってから去っていった。
それはほんの一瞬のことだったが,竜巻の範囲に入った草原は,草一本生えていない剥き出しの土地になっている。
咄嗟に対応できなかったローゼリアは,獅子に庇われたことで傷はなかった。
だが,竜巻を正面から受けた獅子は既に,満身創痍といった様子で崩れ落ちている。
「……どういうこと……?」
ミーシアの困惑は,その場にいる全員のものでもあった。
竜巻の範囲にいたベリー達は,何も受けていない。
説明を求められていることに気付いたのか,リオンが警戒を崩さないまま話し出す。
「今使える鎌の技の中で……三番目? くらいに強い奴。自分が敵だと認識した相手だけダメージを受けるんだって」
「すごーい……」
ゆめは何度も目を瞬いて,驚きをどうにか逃がそうとしていた。
「待ってゆっちゃん私の方が凄いよ!?」
キャサリンが驚愕したように杖を構え直すと,ゆめが少しだけ視線をそちらに向ける。
「……でも,きゃさりんの魔法はもう見たことあるから」
「なっ……!?」
ショックで倒れ込みそうなキャサリンを押さえつつ,リリーナが冷静な瞳でローゼリアの方を見た。
「その話は後にしてください。敵は一応無傷なんですよ」
リリーナの言葉に,話についていけなかったローゼリアが賛同する。
「そうよ! 貴女達,少し四天王を舐めてるんじゃないの!?」
やっぱりあの女のせいなわけ……? と続けてから,ローゼリアは一瞬で移動した。
「……肉弾戦とか絶対嫌だし,シャルルもいないからさっさと終わらせましょう」
いつの間にか消えている獅子の名を出してから,ベリー達の背後に降り立つ。
「そういえば一個だけ言っておくけど」
すかさず飛んできた雷を避けて,立ち尽くすベリーに肉薄した。
リリーナの魔法に弾かれる前にすぐ後退り,手元に魔力を込める。
「私は別に,瞬間移動の魔法を使ってるわけじゃないのよ」
「……!?」
キャサリン達の表情に驚きが浮かんだ。
それを気に留めず,ローゼリアは軽く腕を振る。
次の瞬間,彼女の周囲を囲むように,無数の赤黒い柱が起立した。
「さぁ,避けてご覧なさい!」
軽やかな声とともに,柱が一斉に弾ける。
「わぁっ!?」
「これ当たったらヤバいかも」
慌てふためくゆめの首根っこを掴んで,リオンが鎌で自身の前を高速で切り刻んだ。
空間が途絶え,襲い来る水飛沫が届かなくなる。
リリーナは防御魔法でベリーと自分を護り,キャサリンは上に飛んで逃げていた。
「……あの,ベリーさんはどうしたんですか?」
水飛沫を闇魔法で吸収していたミーシアが問うと,先程から微動だにしないベリーに全員の視線が向く。
雷と風,そして赤黒い飛沫が舞うその場で,ベリーはただ呆然と目を瞬いていた。
「…………私,ローズ姉が四天王なんて,知らなかった」
僅かに零れた呟きに,半数が疑問符を浮かべる。
「私だって初めて知りましたよ。いや,魔族なんじゃないかとは思ってたんですが」
「まぁ教えてないもの。知らなくて当然ね」
困惑していないのは,リリーナとローゼリアの二人だ。
「えーと,本当にどういうこと?」
キャサリンが雷を落とすのを止めて降りてくると,他三人も動きを止めてベリー達を見る。
その様子を見て,ローゼリアは仕方なさそうに溜息をついてから話し始めた。
「面倒だから話すけど……私はベリーが小さい時に会っていたの。ちなみに理由はグラッセリアの偵察と監視」
「……お友達なの?」
ゆめが純粋な瞳で首を傾げると,ローゼリアは不愉快そうに目を細める。
「違うわよ。ベリーは人間で,私は人間じゃない。相容れるわけないわ」
冷たく拒絶するような声が,妙に静まった草原に響いて,零れ落ちた。
最後までご覧頂きありがとうございます。
一言:敵が出てくると戦ってばかりになるので,色々入れました。




