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 翌日。

 相変わらず崩れない天気の下,ベリー達は草原を進んでいた。

「そーいえば,ミーシアってどこまで行けるの?」

 ふと思い出したように,ベリーが足を止めて尋ねる。

 ミーシアが使用する転移魔法は,一度言ったことのある場所ならどこにでも転移が可能だ。

 そういう意図が込められた問いに,ミーシアは少し考えるような仕草を見せる。

「……あまり魔王領に近づいたことがないので,対してお役に立てないのですが」

 そう前置きしつつ,リリーナが手渡してきた地図をのぞき込んだ。

「えーとですね,この辺りまでなら」

 全員が見ているのを確認してから,ミーシアは地図に指を置く。

 それは,今いる位置からかなり離れた,草原と魔王領のさかいと言ってもいい場所だった。

「めっちゃいけるじゃん!?」

 ベリーが思わず叫ぶ。

 ミーシアはそれに対して,何とも言えない表情で空を眺めた。

「何か……魔獣におそわれて逃げてたら偶然ぐうぜん通りかかったみたいで」

 あー……,という納得の雰囲気が流れる。


「あ,いつでもおそわれてるんだ」

「気付いても言わないでくださいな……!」

 リオンがズバッと呟くと,ミーシアがすかさず合いの手を入れた。

「……既視感きしかんしかない」

「新コンビ爆誕ばくたんだね」

 キャサリンとゆめが若干じゃっかん遠い目になる。

「どっちがツッコミだろ……?」

「どちらも天然ボケかと」

 それに対して,お菓子をみ始めたベリー達も答えた。

「良い感じにコンビになったねー」

「偶数の良いところ」

 ベリーの言葉に,リオンが混ざって少し嬉しそうに言う。


 に落ちないという顔をするミーシアに苦笑しつつ,リリーナが地図を広げ直した。

「では,そこまで行ってしまいますか。……魔力量的に大丈夫ですか?」

 ハッとしたようにリリーナが問うと,ミーシアは杖を構えて頷く。

「問題ありませんよ! 私,魔力だけは多いので」

 単純に戦闘センスが低いだけだ,とあんに告げた。

「おっ,もう移動?」

 お菓子を食べ終わったベリーが興奮したように飛びねる。

 真似して飛び跳ねるゆめをなだめつつ,キャサリンが視線をめぐらせた。

「転移した先が魔王領に近いなら,いきなりおそわれる可能性も考えた方が良さそうじゃない?」

「対策は万全で行く」

 リオンが鎌をかついで,くるっと一回転する。

 今度はリオンを真似しようとしたゆめは,派手にずっこけた後,慌てて立ち上がって装備そうびを確認した。

「ゆめも! ゆめもう準備万端だよー!」

「凄いよゆっちゃん! ゆっちゃんなら魔王も倒せるよ!」

 派手にずっこけた所は見なかったことにしたのか,キャサリンがいつものように歓喜の声を上げる。

 それに苦笑するミーシアは,驚くくらいにベリー達に馴染んでいた。


「まぁ,確かに魔王領の近くは最近何かあったらしいですし,警戒はした方が良いでしょう」

「? 何かあったってわかるの?」

 広げていた荷物をまとめつつ,ベリーが首を傾げる。

 すると,リリーナはおもむろに空を指差した。

 つられて全員が見上げた空を,一羽の鳥が横切る。

「私は,子飼いの鳥に情報伝達を頼んでいるんです。彼等なら魔王領付近を飛んでいてもおかしくないですし」

「……ん? それは大丈夫なんですか?」

 ミーシアが疑問符を浮かべた。

 それに,キャサリンが同意を示す。

「鳥獣人は魔王サイドだから,危なくない?」

 リリーナはその質問は想定済みだったのか,軽く頷いてから微笑んだ。

「彼等は純粋な鳥ですから。ただ文字が書けるだけで」

「エリート鳥さんじゃん」

 ベリーがすかさずツッコむ。

「字が書けるって獣人じゃないんですか……」

 ミーシアとキャサリンは本気で驚いたように目を瞬いているが,リリーナが嘘を言っているようには見えない。

 でも,何故か突然人化できる純犬獣人もいるのだから,そういうこともあるのだろう。

 一同はそう割り切ることにした。


「ちなみに,魔王領付近で何があったの?」

 そういえばと言うように,リオンが尋ねる。

 リリーナは軽く頷いてから,一枚の紙を取り出した。

 シンプルな小さい紙に,粗雑そざつくせのある字が踊っている。

「……どうやら草原で,何か大きな力が動いたみたいです。一部がひどく荒れているらしく」

「何だろ? 誰か戦ったのかな」

 うーん,と首を傾げたベリーが考え込み始めた。


「……蛇さんとか?」

 ふと,ゆめが思い出したように呟きを漏らす。

「蛇?」

 ミーシアが首を傾げると,ベリーが身振り手振りで説明を試みた。

「えーとね,でっかい蛇に変身する獣人の女の人がいたの! 魔王四天王で,ハチャメチャ強かった!」

「……魔王四天王,ですか? それは強いでしょうね」

 一瞬,視線を伏せたミーシアが感嘆かんたんしたようにそう答える。

「めっちゃ強かったけど,ゆめ達が倒したんだよー!」

「……皆さんは四天王を倒せるのですか?」

 ポカンという擬音ぎおんがつきそうな表情で,ミーシアが呟くと,キャサリンが軽く頷いた。

「何か倒せたね。勿論ゆっちゃんのおかげだし,ベリーも何か強いし」

 驚きで声も出ないミーシアだけでなく,リオンもどこか遠い目になっている。

「その四天王の蛇って,セイレーストを一晩でほろぼしてるんだよね」

「それを,一瞬でサクッと」

 リオンの言葉に,ベリーがかなり脚色きゃくしょくして続けた。


 呆れたようなリリーナの表情から色々察しつつ,ミーシアは苦笑する。

「まぁ,四天王を名乗る者を倒せるだけで,すごいと思いますよ。私,足手まといになりませんかね?」

「そんなことないよ。攻撃魔法は多い方が良い!」

 ベリー一行における攻撃魔法担当のキャサリンがそう断言した。

 そういうものなのか……と言いたげな四対くらいの視線をけつつ,キャサリンはゆめに同意を求めに行く。


「それで,結局どうします?」

 ほぁ? と言いたげなベリー。

 リリーナは,魔王領近くの草原で何かあったみたいですが,転移しますか? と言い直した。

 一同は視線を交わして,小さく頷く。

「うん。行ってみないとわかんないし,行ってみよー!」

「行ってみよー!」

 おー! とベリーとゆめ,リオンが腕を上げた。

 微笑ましそうに眺めるキャサリン達の足元に,巨大な魔法陣が形成される。


「じゃあ,ちょっと目をつむっててくださいね! 酔いますから!」

 さらっと告げられ,ベリー達が慌てて目を閉じた。

 一瞬の浮遊ふゆう感が包み込み,見えなくてもわかる光が周囲をおおう。


「はい。草原ですよー」

 ミーシアの軽い声とともに目を開けると,そこは先程と変わらない光景。


 違うのは,少し遠くに禍々(まがまが)しい世界が見えていることだった。



最後までご覧頂きありがとうございます。

一言:今までのおさらい的なことをしてますね。

   第二章に入ってほのぼの要素が加速している気が……。

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