27.情報の共有
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翌日。
相変わらず崩れない天気の下,ベリー達は草原を進んでいた。
「そーいえば,ミーシアってどこまで行けるの?」
ふと思い出したように,ベリーが足を止めて尋ねる。
ミーシアが使用する転移魔法は,一度言ったことのある場所ならどこにでも転移が可能だ。
そういう意図が込められた問いに,ミーシアは少し考えるような仕草を見せる。
「……あまり魔王領に近づいたことがないので,対してお役に立てないのですが」
そう前置きしつつ,リリーナが手渡してきた地図を覗き込んだ。
「えーとですね,この辺りまでなら」
全員が見ているのを確認してから,ミーシアは地図に指を置く。
それは,今いる位置からかなり離れた,草原と魔王領の境と言ってもいい場所だった。
「めっちゃいけるじゃん!?」
ベリーが思わず叫ぶ。
ミーシアはそれに対して,何とも言えない表情で空を眺めた。
「何か……魔獣に襲われて逃げてたら偶然通りかかったみたいで」
あー……,という納得の雰囲気が流れる。
「あ,いつでも襲われてるんだ」
「気付いても言わないでくださいな……!」
リオンがズバッと呟くと,ミーシアがすかさず合いの手を入れた。
「……既視感しかない」
「新コンビ爆誕だね」
キャサリンとゆめが若干遠い目になる。
「どっちがツッコミだろ……?」
「どちらも天然ボケかと」
それに対して,お菓子を食み始めたベリー達も答えた。
「良い感じにコンビになったねー」
「偶数の良いところ」
ベリーの言葉に,リオンが混ざって少し嬉しそうに言う。
腑に落ちないという顔をするミーシアに苦笑しつつ,リリーナが地図を広げ直した。
「では,そこまで行ってしまいますか。……魔力量的に大丈夫ですか?」
ハッとしたようにリリーナが問うと,ミーシアは杖を構えて頷く。
「問題ありませんよ! 私,魔力だけは多いので」
単純に戦闘センスが低いだけだ,と暗に告げた。
「おっ,もう移動?」
お菓子を食べ終わったベリーが興奮したように飛び跳ねる。
真似して飛び跳ねるゆめを宥めつつ,キャサリンが視線を巡らせた。
「転移した先が魔王領に近いなら,いきなり襲われる可能性も考えた方が良さそうじゃない?」
「対策は万全で行く」
リオンが鎌を担いで,くるっと一回転する。
今度はリオンを真似しようとしたゆめは,派手にずっこけた後,慌てて立ち上がって装備を確認した。
「ゆめも! ゆめもう準備万端だよー!」
「凄いよゆっちゃん! ゆっちゃんなら魔王も倒せるよ!」
派手にずっこけた所は見なかったことにしたのか,キャサリンがいつものように歓喜の声を上げる。
それに苦笑するミーシアは,驚くくらいにベリー達に馴染んでいた。
「まぁ,確かに魔王領の近くは最近何かあったらしいですし,警戒はした方が良いでしょう」
「? 何かあったってわかるの?」
広げていた荷物をまとめつつ,ベリーが首を傾げる。
すると,リリーナは徐ろに空を指差した。
つられて全員が見上げた空を,一羽の鳥が横切る。
「私は,子飼いの鳥に情報伝達を頼んでいるんです。彼等なら魔王領付近を飛んでいてもおかしくないですし」
「……ん? それは大丈夫なんですか?」
ミーシアが疑問符を浮かべた。
それに,キャサリンが同意を示す。
「鳥獣人は魔王サイドだから,危なくない?」
リリーナはその質問は想定済みだったのか,軽く頷いてから微笑んだ。
「彼等は純粋な鳥ですから。ただ文字が書けるだけで」
「エリート鳥さんじゃん」
ベリーがすかさずツッコむ。
「字が書けるって獣人じゃないんですか……」
ミーシアとキャサリンは本気で驚いたように目を瞬いているが,リリーナが嘘を言っているようには見えない。
でも,何故か突然人化できる純犬獣人もいるのだから,そういうこともあるのだろう。
一同はそう割り切ることにした。
「ちなみに,魔王領付近で何があったの?」
そういえばと言うように,リオンが尋ねる。
リリーナは軽く頷いてから,一枚の紙を取り出した。
シンプルな小さい紙に,粗雑で癖のある字が踊っている。
「……どうやら草原で,何か大きな力が動いたみたいです。一部が酷く荒れているらしく」
「何だろ? 誰か戦ったのかな」
うーん,と首を傾げたベリーが考え込み始めた。
「……蛇さんとか?」
ふと,ゆめが思い出したように呟きを漏らす。
「蛇?」
ミーシアが首を傾げると,ベリーが身振り手振りで説明を試みた。
「えーとね,でっかい蛇に変身する獣人の女の人がいたの! 魔王四天王で,ハチャメチャ強かった!」
「……魔王四天王,ですか? それは強いでしょうね」
一瞬,視線を伏せたミーシアが感嘆したようにそう答える。
「めっちゃ強かったけど,ゆめ達が倒したんだよー!」
「……皆さんは四天王を倒せるのですか?」
ポカンという擬音がつきそうな表情で,ミーシアが呟くと,キャサリンが軽く頷いた。
「何か倒せたね。勿論ゆっちゃんのおかげだし,ベリーも何か強いし」
驚きで声も出ないミーシアだけでなく,リオンもどこか遠い目になっている。
「その四天王の蛇って,セイレーストを一晩で滅ぼしてるんだよね」
「それを,一瞬でサクッと」
リオンの言葉に,ベリーがかなり脚色して続けた。
呆れたようなリリーナの表情から色々察しつつ,ミーシアは苦笑する。
「まぁ,四天王を名乗る者を倒せるだけで,凄いと思いますよ。私,足手まといになりませんかね?」
「そんなことないよ。攻撃魔法は多い方が良い!」
ベリー一行における攻撃魔法担当のキャサリンがそう断言した。
そういうものなのか……と言いたげな四対くらいの視線を避けつつ,キャサリンはゆめに同意を求めに行く。
「それで,結局どうします?」
ほぁ? と言いたげなベリー。
リリーナは,魔王領近くの草原で何かあったみたいですが,転移しますか? と言い直した。
一同は視線を交わして,小さく頷く。
「うん。行ってみないとわかんないし,行ってみよー!」
「行ってみよー!」
おー! とベリーとゆめ,リオンが腕を上げた。
微笑ましそうに眺めるキャサリン達の足元に,巨大な魔法陣が形成される。
「じゃあ,ちょっと目を瞑っててくださいね! 酔いますから!」
さらっと告げられ,ベリー達が慌てて目を閉じた。
一瞬の浮遊感が包み込み,見えなくてもわかる光が周囲を覆う。
「はい。草原ですよー」
ミーシアの軽い声とともに目を開けると,そこは先程と変わらない光景。
違うのは,少し遠くに禍々しい世界が見えていることだった。
最後までご覧頂きありがとうございます。
一言:今までのおさらい的なことをしてますね。
第二章に入ってほのぼの要素が加速している気が……。




