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26.変わったもの

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 魔獣が完全に消滅したのを確認してから,五人はおそわれていた人物の方に向かう。

 その人物はキャサリンと同じか,それより年上くらいの少女だった。

 複雑な刺繍ししゅうほどこされた濃い紫のローブを羽織はおっており,先端に巨大な魔石が輝く豪奢ごうしゃな杖を持っている。

 いかにも魔法使いというような見た目の少女は,唖然あぜんとしたように赤い目をまばたいていた。


「えーと,大丈夫?」

 ベリーがにぱっと笑って尋ねると,少女はハッとしたように何度も頷く。

「あの,助けて頂きありがとうございます。旅をしている魔法使いのミーシアと言います」

「ベリーだよ! んで,リリーナとキャサリンとゆっちゃんとリオン!」

 面倒だったのか,べりーがまとめて紹介した。


「……えーと,皆様はこの草原で何を……?」

 礼を述べてから,ふと思い出したようにミーシアに尋ねられ,ベリーは得意気に胸を張る。

魔王討伐まおーとーばつに向かってる! 勇者なんだよ〜!」

「……魔王討伐……? そんな事が可能なんですか?」

 困惑したように目を瞬くミーシアに,リリーナが補足した。

「ベリーは人間の国グラッセリアの王女でして。国の平和を取り戻すために……」

「私達は別にそうでもないんだけどね」

「右に同じー」

「ゆめも同じー」

 キャサリン達が堂々とさえぎる。

 呆れたような表情になってリリーナが説明を諦めると,ベリーが誤魔化ごまかすように笑った。

「まぁ,別にそんな重い話じゃないよ! 出来たら倒したいなーっていう?」

「なるほど……?」

 ミーシアは何度か目を瞬いた後,小さく頷いて微笑む。

「私自身は魔王に何か思うことはありませんが……。応援しております」

「ありがとー!」

 ベリーが明るく礼を言うと,ミーシアは深くお辞儀をしてからくるりとローブをひるがえした。


「……ん?」

 ミーシアの足元に,複雑な魔法陣が形成される。

 徐々に光を増していくそれを見たリリーナが,あ と小さく呟いた。

「それ,転移魔法……!?」

「えぇ!?」

 ベリー達が叫ぶと,ミーシアが驚いたように振り向き,魔法陣の動きが止まる。


「え? それ転移魔法ですよね?」

「はい。転移魔法ですが……?」

 ミーシアが答えると,五人が目を輝かせた。

「え,えっと……?」

 五人,主にベリーとゆめが光の速度で詰め寄る。

「良いなぁ。転移魔法,良いなぁ〜」

「ゆめ,歩きたくないんだよぉ。転移魔法,良いなぁ〜」

「こらっ!!」

 身長が届かないため,かかとを上げて二人がミーシアに圧をかけると,リリーナが慌てて止めた。

 むーっと頬をふくらませる二人の頭をはたいたあと,ミーシアに視線を戻す。

「……うちの子達がすみません。ただあのですね。我々ここから魔王領が遠いので,転移魔法の使い手がいて欲しいと思っておりまして……」

 二人を叱った手前,流石に気が引けるのか,後半は視線が泳いでいた。

 それに気付いていないのか,ミーシアは少しの間考え込むように目を伏せる。

 じっと答えを待つベリーに視線を向けてから,瞳を順番にずらした。


 それから間を開けて,小さく微笑む。

「良いですよ。ぜひお供させてください」

「ぅえ!? 良いの!?」

 びっくり! と言いたげにベリーが大きくった。

「でも何で?」

 ベリーのオーバーリアクションを真似しつつ,リオンが冷静に問う。

 ミーシアは言葉を選ぶように虚空こくうながめた後,微苦笑を浮かべた。

「……先程も申し上げたかもしれませんが,私はずっと一人で旅をしておりまして。でもあまり強くないですし,そろそろ潮時かと思っていたんですよね」

 ほぁー……という擬音が口から漏れているベリーの横目に,ミーシアは続ける。

「あと私,少し変わった魔法を使っていて……」

「転移魔法だけでなく?」

 リリーナが首を傾げると,ミーシアは軽く頷いた。

「はい。こちらなのですが……」

 そう言って,軽く杖を振る。


 次の瞬間,その場を暗闇がおおった。

 三人の杖の宝石飾りだけが,陽炎かげろうのように揺らめいている。

「わぁ!? 真っ暗ー!」

「すみませんすみません! 戻しますねー!」

 慌てふためいて駆け回るベリーとゆめが闇の中で激突げきとつした。

 ミーシアの杖が一際強く輝いて,太陽の光が戻る。


「……闇魔法?」

 キャサリンがゆめをなぐさめつつ問うた。

「そうです。私の実家がこの魔法を専門にしていまして」

「やみまほー?」

 自分の頭をでているベリーに,リリーナが説明を加える。

「闇魔法というのは,先程のような闇を操ったりする魔法のことですよ。基本的に魔族の使用する魔法で,あまり解明されていないのですが……」

 そう述べたリリーナは,少し困惑しているようだった。

 ミーシアはその困惑は当然だ,と言わんばかりに何度も頷く。

「私自身,何故実家にこれが伝わっているのかはわかりません。ただ,何となく馴染むので使っています」

「祖先に魔族がいるとか?」

 暗闇の中でも特にリアクションを示さなかったリオンが鎌を担ぎ直して呟いた。

「……まぁ,そうかもしれませんね」

 少しミーシアの声のトーンが落ちる。

「……むしろ,こちらから聞きたいです。対して強くもない,魔族の血を引いているかもしれない私を,仲間にして良いんですか?」

 その問いに,ベリー達は顔を見合わせた。


 小さく頷き合って,ベリーははじけるような笑みを浮かべる。

「全然良いよ! 私達は皆違う種族だし,別に皆,鬼強おにつよーってわけでもないから!」

「そーだよ。仲間は沢山いる方が良いよ」

 珍しくリオンが同調した。

「……その,私達は少しじゃすまないくらい変わっていますから,気負わないでほしいです」

「うんうん。むしろ,ちょっと変わってないと仲間にはなれないよ」

 リリーナの言葉に,キャサリンが遠慮なく付け加える。

「ゆめ別に変わってないもん!」

「ゆっちゃんは異常に可愛いから良いの」

 ハッとしたように頬を膨らませるゆめをなだめるのも忘れない。


 その様子を微笑ましそうに眺めていたミーシアの手を取り,ベリーが太陽のように笑う。

「そんなわけで,私達ちょっと変わってるけど……仲間になってくれない?」


 ミーシアはほんの一瞬だけ目を伏せた後,花開くように微笑んだ。

「こちらこそ。ぜひ,お仲間に加えてください」


最後までご覧頂きありがとうございます。

一言:旅の仲間が増えました。今何人ですかね……?

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