表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
33/44

25.大魔法使いの記憶

誤字,脱字報告受け付けております。

見つけた際は遠慮なく報告して頂けると幸いです。

感想,レビュー等大歓迎です。

ブックマークも是非お願い致します。

 

「お祖母……様?」

 ベリーが反芻はんすうする。

 キャサリンは唖然あぜんとして声も出ないようだった。

「そうです。ベリーが小さい時はお城にいたんですが,ある時突然行方不明になって……」

「……死んじゃったの?」

 感情のもらない声が静かに響く。

「いえ,違います。彼女が亡くなれば,彼女が魔法で創ったグラッセリアは消滅しますから」

 リリーナは慌てたように否定した。

「それもそれでヤバくない……?」

 驚いたようにキャサリンが呟く。

 それから,そっとベリーの様子を伺った。

 ベリーは本当にその事実を知らなかったのか,ぽかんと口を開いている。


 それからややあって,表情が崩れた。

「__そっか。そうなんだ。……良かった」

「……え?」

 リリーナが困惑を浮かべる。

 弾けるような笑みが,ベリーの顔に浮かんでいた。

 二人の驚きに気付いたのか,ベリーは立ち上がってその場でくるりと回ってから,笑みを深める。

「覚えてるんだ,私。お姉さんみたいな女の人。お祖母様って言われてわかんなかったけど,自分のことをラティって言ってたから間違いないね」

 リリーナは少し瞬いた後,驚愕きょうがくしたように目を見開いた。

「……じゃあ,カランティ様のことをベリーは覚えてるんですか?」

 彼女が姿を消したのは,ベリーがまだ喋ることも出来ないような時期である。

「ふふん。私,記憶力だけは良いから」

「記憶力()()なのね」

 呆れたようにツッコむキャサリンは,とうに驚きから逸脱いつだつしたようだ。

 リリーナも疑問符を浮かべていたが,彼女ならあり得るか と思考を放棄する。


「……それで,ラティ姉様の話じゃなかったよね? 何だっけ?」

 こんな時ばかりはベリーの記憶力が働かない。

 リリーナもその質問が飛んで来ることはわかっていたのか,軽く頭を振って答える。

「ベリーのお菓子魔法はそもそも存在していないという話ですよ」

 それを聞いたベリーだけでなく,キャサリンもそういえばという顔をした。

「えーとだから,グラッセリアの建物はラティ姉様の創造魔法(そーぞーまほう)で,お菓子の魔法じゃないってことだよね?」

「そうです」

 ベリーが内容を整理すると,リリーナが軽く頷く。


「……つまり私は,本当に存在しない魔法を生み出しちゃったってこと……?」

「そういうことですね。でもまぁ,何となく理由はわかりました」

「え?」

 キャサリンとベリーが目を瞬いた。

 それに対して,リリーナは苦笑とも微笑とも取れない表情を浮かべる。

「……カランティ様はまだ幼いベリーに,魔法書を読み聞かせていましたからね。無意識に覚えていたとしたら,納得できます」

「……小さい孫に魔法書を読み聞かせる祖母とか,初めて聞いたんだけど」

 キャサリンが呆然と呟くが,その後「まぁ,あの伝説のカランティならあり得るか」と付け加えた。

「え? ラティ姉様そんなに有名なの?」

「歴史上の魔法創造師達がかすむような,偉大で変わった方でしたよ」

 リリーナが呆れたように笑う。

「えー? 何やったのか気になるー!」

 ベリーが目を輝かせて身を乗り出すと,リリーナはそれを押し留めて人差し指を立てた。

「また時間があったらいくらでも話してあげますよ。カランティ様のことは多分,私が一番詳しいですから」

「え? なんで?」

 今度はキャサリンが反応する。


 それに対して,リリーナは少し遠くに飛ばした。

「カランティ様は,私の育て親であり,魔法の師匠なんですよ」

「……はぁ!?」

 キャサリンが目をいて叫び,ゆめが飛び跳ねる。


 不機嫌そうなゆめを慌てて寝かしつけてから,再び口を開いた。

「……言われてみれば,確かにあり得ないくらい魔法上手だよね。師匠がカランティなら納得」

 この世の大体の不思議は大魔法使いカランティの仕業,で解決する。

 それは,今でも魔法使いの世界で語り継がれる常識だった。

「そういうことです。今の魔王が魔法の扱いにけているのも,実はカランティ様が絡んでいるのでは? とかいう迷信もありますしね」

「えぇ!? そうなの!?」

 ベリーが驚いたように声を抑えて叫ぶと,リリーナが軽く首を振る。

「あくまで迷信です。まず魔王領で生まれ育ったはずの魔王と,人間界にいるカランティ様が出会う状況が想像出来ませんし,カランティ様からそんな話を聞いたことはありません」

 それを聞いて,ベリーはホッとしたように座り直した。


「……まぁ,この講義で話すことはもう特にありません。結論としては,ベリーの魔法は本来存在しない魔法なので,魔王に有利だと思います」

 説明にも疲れてきたのか,リリーナがそう締めくくる。

 話の繋がりが悪いが,驚きの話ばかりで疲れているベリー達は気にしない。

 すると,終わる瞬間を見計らったようにリオンが瞬いた。

「__おはよ。終わった?」

 かなり図太い神経を発揮しつつ,リオンはふわぁっと欠伸あくびをしてから猫のように伸びる。

「おはよー。私疲れたからお菓子食べたーい」

「甘いものを食べると頭が良くなるんだよ!」

 ベリーがかばんあさり始め,ゆめが目をキラキラさせた。

 それを見て,リリーナも仕方なさそうに笑ってお菓子のセットを取り出す。


 和やかな時間というのは,やはり唐突とうとつに崩れるものだった。

 ほわほわとした空気が流れる草原に,魔獣の咆哮ほうこうが響く。

 ベリー達がいる所からそれほど離れていない位置に巨大な魔獣がおり,その目の前に一つの人影があった。

「……え? おそわれてる?」

 人影は魔獣相手に魔法を放っているようだが,全く効果がないように見える。

 逆に魔獣は随分と機嫌が悪いようで,激しくあばれていた。

「……よし。助けに行くか」

 最後のクッキーを口に入れてから,リオンが鎌を持って立ち上がる。

 それを見て,残り四人も各々準備を始めた。


「……あのでっかい魔獣見たことない。何あれ?」

「わからないです」

 視力が良いため,じっとながめていたベリーが小さく呟く。

「取りえず,倒しとけば良いよね」

 リオンがそう言ったのと同時に,五人は草原を駆けて魔獣の方に向かった。


「そーれ!」

 キャサリンが無詠唱で魔法を行使し,魔獣の頭に雷が落ちる。

 羊のような巨大な魔獣は鋭い叫びを上げ,五人におそいかかってきた。

「わぁっ!?」

 咄嗟とっさにベリーからクッキーが飛び出す。

 クッキーの強度は半端はんぱないのか,巨大な魔獣が後方に吹っ飛んだ。

「よっ,と」

 掛け声つきで,リオンが軽やかに宙を舞う。

 そのまま,巨大な鎌が魔獣の脳天に刺さった。

「かっこいいー! 頑張れー!」

 ゆめが目を輝かせて大きく両手を振る。

 それだけで,全員の魔力量が底上げされていた。


「トドメの一撃ー! 誰行くー!?」

「はいはいはいはい! 私行く!!」

 暴れ狂う魔獣をけながら,キャサリンが上空から叫ぶ。

 それに対して慌てたようにベリーが挙手して前方に立った。

「えーとね! んー……,やっぱりキャンディ食べたーい! 出てこーい!」

 満面の笑みでそう言って大きく腕を振り下ろすと,魔獣に鋭いカラフルな矢が次々と刺さる。

 魔獣は苦しげな絶叫ぜっきょうを残して,跡形もなく消えた。


最後までご覧頂きありがとうございます。

一言:カランティお姉様(お祖母様)はヤバいんですよね。

   でもそれを継いだベリーも,普通にヤバいんですよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ