24.魔法創造師
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「……なんで?」
何度か口をパクパクさせた後,ベリーがそんな言葉を絞り出す。
それに対して,リリーナとキャサリンの良い笑顔が返ってきた。
「知りません。私達が聞きたいんですよ」
「そうだよ? 魔法を創り出せる人物なんて,歴史上数人しかいないんだから」
呆れたように首を振るキャサリンに,ゆめが首を傾げて質問を投げる。
「じゃあ,魔法を創れる人がいなかったら新しい魔法が出来ないの?」
その質問に,ベリーも興味を惹かれたような表情になった。
「実はねー,そうとも言えるんだよね。私も必殺魔法とか創ったりしてるけど,あれは派生型。だから創った本人にしか使えないんだよね」
「その点,魔法を創り出せる人……魔法創造師が創った魔法は,呪文を覚えて馴染めば誰でも使えるんです」
そこまで聞いて,ふとベリーが疑問符を浮かべる。
「あれ? じゃあ私の魔法って派生型じゃない? なら別に存在しない魔法を使ってても」
「おかしいんですよ」
おかしくないんじゃ? と言おうとしたベリーの言葉が遮られた。
ぽかんと口を開けるベリーに,リリーナは苦笑交じりの笑みを浮かべる。
「では試しに,ベリーの思う最初級のお菓子魔法を出してみてください」
「? 良いけど……」
首を傾げつつ,ベリーは手元に魔力を集中させた。
それから一瞬の間を置いて,魔力が小麦色の掌くらいの薄い板に変化する。
「すご……。本当に無詠唱で,魔力の流れも安定してる」
感嘆したようなキャサリンの声に,ベリーが首を傾げた。
リリーナが「魔法を無詠唱で行使すると,魔力が不安定になって失敗しやすいんですよ」と答え,自らの杖を出す。
「ベリーの思う最初級魔法はクッキーなんですね?」
「うん。一番なんか出しやすいんだよね」
ベリーが食べられない手元のクッキーを恨めしそうに眺めながら,小さく頷いた。
リリーナはそれを聞いてから,軽く杖を振る。
その場に,ベリーの身長ほどの半透明の板が出現した。
「これはお馴染み私の最初級防御魔法【聖なる防御】です」
ベリーはハッとしたように板を見て,そんな名前だったんだ……と言いたげな表情になる。
それに苦笑しつつ,リリーナは言葉を続けた。
「ここで問題です。私のこれと,ベリーのクッキー。共通点は何でしょう?」
「はい! 薄くって,硬い!」
ゆめが元気よく答えると,リリーナは小さく微笑む。
「惜しいです。良いところに目をつけてますよ」
キャサリンは答えがわかっているのか,嬉しそうな顔でゆめを見ていた。
「えーと,食べられない!」
「それは当然でしょ。離れましたよ」
ベリーがバッサリ切り捨てられて,わかりやすくショックを受けた顔になる。
「……ヒント。ベリーが最初にクッキーを出したのはいつ?」
呆れたようにリリーナが呟くと,ベリーはぱっと顔を輝かせて思案し始めた。
それを横目に,ゆめが得意気に胸を張る。
「それ,ゆめわかるよ! ゆめも居たもん!」
「え……? ゆっちゃん……?」
キャサリンが困惑したような表情になった。
それを無視して,ゆめは笑顔で続ける。
「ゆめを襲ってきたまものさんを倒した時! ゆめ見てた!」
数秒固まっていたベリーが,ようやく思いだしたように口元を抑えた。
「正解です。正確には,魔物が飛んできたのを防いでいましたね」
リリーナが優しい笑みを浮かべて拍手する。
そして,ここまできたらわかるでしょ? と言いたげな視線をベリーに向けた。
「えーと……,あ,守るやつってこと?」
コテンと首を傾げて答えると,リリーナが小さく笑って頷く。
「そうです。私は元々,ベリーが幼い頃から自分の身を守ってもらうために,防御を中心とした魔法を教えていました」
そもそも私が教えられるのが防御くらいなんですが,と付け足しつつ,視線を遠くに投げた。
「……ベリーが魔法に異常なまでの才能を持っているのは,何となく勘付いていました。ですが,防御魔法は一向に上達しなくって……」
防御魔法に失敗して部屋を一つ爆破したことを思い出したのか,ベリーがそっと視線を逸らす。
「ですがまぁ,旅に出て謎が解けました。ベリーは別の魔法に適正があったということです」
それを聞いて誇らしげにしつつ,ベリーはあれ? と首を傾げた。
「……それの何が,私の魔法が派生型じゃないって話に繋がるの?」
「……思い出してほしいんですが,私は今“防御を中心とした魔法を教えていた”と言いましたよね?」
リリーナの言いたいことがわからず,ベリーは曖昧に頷く。
「派生型というのは,自分が極めてきた魔法を変化させるものです。ベリーが極めてきたのは,お菓子魔法ではないですよね?」
「そーだね」
こんな時ばかりは,ベリーの鋭い勘が冴えない。
頭の片隅で理解したのに,気付かないふりをしているのかもしれないが。
「そもそも大前提として,お菓子を操る魔法というのは存在していないんですよ」
「……え?」
今度こそ,ベリーの表情が驚愕に変わった。
琥珀色の瞳を溢れんばかりに見開き,反論したそうに首を左右に振る。
「で,でも,グラッセリアの建物は魔法で出来てるでしょ? あれはお菓子魔法じゃないの?」
それを聞いて,リリーナは僅かに表情を緩めた。
「確かに,建物は魔法で作られていました。ですが,あれは厳密には“物質を創造する魔法”であり,“お菓子を創造する魔法”ではないんです」
ほへーっと言いたげな表情で,ベリーが何度か頷く。
そこで,ん? と首を傾げたのは,いつの間にか生徒側に回っていたキャサリンだった。
「物質を創造する魔法って……伝説級のあの魔法? じゃあグラッセリアを建国したのって……」
驚きと困惑が混じったキャサリンの問いに,リリーナは小さく頷く。
「はい。世紀の大魔女カランティその人ですよ」
「えぇぇ!?」
キャサリンが素っ頓狂な声を上げて,夢落ちしかけていたゆめが飛び上がった。
それでも眠り続けるリオンの貫禄に感心しつつ,ゆめはもう一度微睡み始める。
一連の流れを微笑まし気に眺めていた三人は視線を戻して,講義を再開した。
「……カランティって誰?」
ベリーが取り繕わず尋ねると,リリーナは持っていた杖を取り落としかける。
信じられないと言いたげに頭を抱えた後,屈み込んでベリーと視線を合わせた。
「カランティという方はですね。ベリーが幼い頃に行方がわからなくなった大魔法使いで,最後で最強の魔法創造師と言われています。グラッセリアの建国者であり____」
リリーナは,そこで少し逡巡するように言葉を切る。
興味津々という目で続きを待つベリーに,少し困ったように眉を下げて続けた。
「____ベリーのお祖母様ですよ」
最後までご覧頂きありがとうございます。
一言:ベリーの魔法談義継続。
つまらないリオンは終わるまで起きません。




