23.ベリーの魔法
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麗らかな晴天の下。
一行は珍しく草原の一部分に留まっていた。
ベリーは真剣そうな顔をしつつ,わくわくしているのが隠し切れていない。
シートの上で正座しながら,左右に小さく揺れている。
ゆめはその隣で首を傾げて,疑問符を浮かべていた。
リオンもそれに習って正座しているものの,早朝で眠気が取れていないのか,頭が揺れている。
その正面には,リリーナとキャサリンが立っていた。
何故こうなったのかというと。
「えー,それでは。第……何回ですかね。私の師匠式,魔法講座を始めまーす」
「わ〜」
ベリーとゆめが応えるようにパチパチと拍手する。
「ずっと前からベリーに教えようと思っていたこと,全部教えますからね」
リリーナの目が据わっていた。
戦闘で自分でもよくわからない魔法を連投していたベリーは,少し視線を逸らして苦笑いを浮かべる。
「本日は特別講師,キャサリンさんですー」
リリーナが棒読みで告げると,キャサリンはゆめに手を振ってから軽く腰を折った。
「雷専門のキャサリンです。ゆっちゃんの敵を粉微塵にするよ!」
愛用の杖を軽く振って,満面の笑みで続けた。
これに関しては,ベリーとリリーナも諦観の表情になる。
「というわけで。まず魔法についてなんですが」
一旦軽く咳払いをしてから,リリーナが話し始めた。
「四大魔法については前に話したので割愛するとして。今日はベリーの魔法について話します」
「よんだいまほう……」
ウェルフィマと戦っている時にそんな話をしていたかもしれない。
しっかり記憶から抜け落ちていたベリーは,少し目を泳がせる。
リリーナはそれに気付いたのか,呆れたような表情になりつつ「今回はあんまり必要ないので大丈夫」と付け加えた。
「それで,ベリーの魔法なんですが……実はどれも,魔法書には載っていません」
魔法書とは,魔法について書かれた本のことです。と続けてから,リリーナは手元に自分の杖を出す。
ただの太い木の棒に見える杖には,魔力の籠もった半透明の宝石飾りが無数に並んでいた。
「魔法というのは普通,魔法書に記された呪文を唱えて行使するものです。ただ,私達のように魔法を極めてこれば,扱いに慣れている魔法は無詠唱で使用できます」
そう言って,軽く杖を振る。
半透明の飾りが光で満たされ,その場に透明の障壁が現れた。
「これはベリーにも見覚えがあると思います。神官の最高位の防御魔法で,私がよく使うやつですね」
ベリーは何度か頷く。
確か,魔王の攻撃を防ぐような硬度を持っていた。
「……当たり前のように最高位魔法を使ってるって凄いことだからね」
一応,というようにキャサリンが補足する。
「それで,ベリーに質問です」
不意に視線が向けられ,ベリーはハッとしたように背筋を伸ばした。
「ベリーは今まで,殆どの魔法を無詠唱で行使しています。逆に,詠唱ありで使用した魔法はいくつ覚えていますか?」
そう言われて,ベリーは記憶の中を探る。
「えーと……“芳醇な光輪”でしょ? あと……“銀の三叉矛”だっけ?」
指を折りながら答えると,リリーナは軽く頷いた。
「そうですね。ですが,ベリーはそれ以外の魔法はすべて無詠唱でしょ? 何でだと思います?」
言われてみれば,最初のクッキーも,キャンディもドーナツも,ベリーは全て呪文を唱えていない。
「はい! ゆめわかった!」
「ゆっちゃんどうぞ!」
勢いよく手を上げたゆめに,キャサリンが反応する。
「ベリーは,まほーしょに載ってない魔法を使ってるんでしょ? なら,呪文があってもなくて良い……みたいな魔法なんじゃないかな!」
身振り手振りで表現しながら,ゆめがそう答えた。
今は人化しているが,まだ普段の癖が抜けていないらしい。
「……まぁ,殆ど正解です。ベリーが使う魔法は,全て魔法書に載っていない……つまり,呪文が定められていないんですね」
そう微笑んでから,リリーナは意味深な視線をベリーに向けた。
視線を受けたベリーは,何度か瞬いた後,ん? と固まる。
「……もしかして,もしかしてなんだけど」
ベリーは一見ほわほわしているが,かなり感が鋭い。
故に,リリーナの言わんとすることに気付いてしまう。
よくわかっていないゆめは首を傾げている。
ちなみにリオンは正座したまま,完全に夢の世界に飛んでいた。
口に出すのを恐れるような仕草を見せるベリーは非常に珍しい。
キャサリンとリリーナが回答を待つ中で,僅かに震える口を開く。
「……私,存在しない魔法を創り出してたり,する?」
半ば青褪めた表情で,ベリーはリリーナに視線を向けた。
それに対して,リリーナは何処か投げやりな,朗らかな笑みを浮かべる。
「正解です」
最後までご覧頂きありがとうございます。
一言:やっと魔法の話が来ました。ややこしい。
そういえば,タイトルに名前が入ってるのって魔王以来ですね。




