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死神美少女と童貞魔法遣いの俺  作者: ぢょほほん
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死者を呼び出せ! 明かされる真実と、引き裂かれた夫婦愛(3)

夏のコミケットに新作のノベルゲームをリリースしました。

ゲーム作りにリソースを裂きすぎて更新できずにいましたが、これから少しずつ連載を再開していきます。


毎日の更新は難しそうですが、気長に読んでいただけたら嬉しいです。


「……あー、しんど」




号泣するダニエルを墓場から引きずり、どうにか実家の肉屋まで送り、宿屋に帰ってきた。

細身の痩せ型であっても、大の男を移動させるのは頗る面倒な重労働であった。


二度とやりたくない。




限界だった。

疲れはててベッドに倒れ込む。

このまま朝まで、泥のように眠ってしまいたい。


俺のそばに腰掛けたローゼが耳元で囁く。



「ヴォルフさん、」


「なんや」


「今日はベッドで寝るんですか? わたしといっしょに?」


「……ああん?」




ベッドで寝るのはローゼ、俺の寝床はソファー、決めたのは俺だ。


だるくて仕方がないが嫌々起き上がりソファーへ向かう、




「待って」


「なんや」


「聞きたいことがあります ……なぜ、禁忌に触れましたか?」



瞳の色に怒気が混じる。

いい加減な回答は、間違いなく禍根を残す。


疲れているから明日にしろ、という返事は絶対に良くない。

とはいえ、今夜は……


……ならば、




「……一杯飲んでも、」


「いいですよ」




夜明けまであと何時間だろうか。


時計がないのでわからない。

もっとこの世界にいれば、月や星の位置からわかるようになるのかもしれないが今の俺には全くわからない。


すぐに夜が明けるのならば、今は飲まない方がいいに決まっているが飲まなければやっていられない。


さて、階下の酒場はとっくに閉店。

昼間こっそり手に入れた小瓶を取り出し、小さな器に琥珀色のブランデーを注ぐ。




「あれ?」


「……今度はなんや」


「わたしの分」


「え? 自分の? これ、ブランデーやで?」


「ブランデー? だから?」


「度数高いで? 飲めんやろ?」


「飲めます」


「え? ほんまか???」


「たぶん」


「多分かい……」




そもそもワインで簡単に酔いつぶれるローゼに、ブランデーを飲ませるつもりはない。


だから酒器も俺一人分しか用意していない。

ミルクピッチャーにすこし似ているがミルクピッチャーよりは大きく、ワイングラスよりは小ぶりな器。

もしかしたら本来酒器ではないのかもしれない。


ただ店頭で見かけたときに

「ブランデーを入れるのによさそうだ」

と感じて手に取ってしまった。


ブランデーならブランデーグラスがよい。

口のすぼまった手のひらほどグラスに少しのブランデーを注ぎ、グラスを転がしゆっくりと温めながら香りと味を楽しむのが正統派の飲み方だ。


(もっと言えば、現代のブランデーは薫り高いので手のひらで温めなくとも充分に愉しめる。

ブランデーを人肌で温めて香りを愉しむやり方は香りが貧しかった昔の飲み方なのだが、今俺がいるこの世界の醸造に関する技術を考えれば、昔の飲み方でいいはずだ。)


俺は死神様のお情けでこの世界に転生させていただいた身分であり、ここは自宅でもなんでもない安宿。

凝った酒器を複数そろえることはできぬ。


登山者が山頂から下界を見下ろしながらスキットルの(ふた)でウイスキーをちびりちびりとやるように、ローゼが寝静まったあと、一人でこっそり飲むための酒であり、秘密の器であるから、ローゼの分などない。




どうしたものか。

一考し、ブランデーを注いだミルクピッチャーのお化けはローゼに差し出した。


器のふちを舐めたローゼは、愛らしい大きな目をもっと大きくした。



「無理すんな」


「してません!」



ミルクピッチャーのお化けを差し出せば、俺がブランデーを口にする方法は瓶ごとラッパ飲みしかない。

こんな飲み方をする酒ではないのだがやむを得ない。



「さっきの話な」


「はい」


「禁忌、っちゅうんは、」


「魔法陣を飛び出したダニエルさんは、アメリーさんが望めば死者の国へ連れていけること、です」


「せやな」


「決してアメリーさんに言ってはならないことです」


「死者に教えてはいけない『禁忌だから』?」


「そうです、それに ……わざわざ言う必要がないでしょう? アメリーさんがダニエルさんを連れて行きたいと願ったら、ダニエルさんを失ってしまう、この世界での重要な協力者が減ってしまうということです。 失敗したら失うものばかり、だったら伝える必要ない、じゃないですか?」




ブランデーを口に含む。

思ったよりまろやかで、優しい。


ローゼが目を丸くしたのは、アルコールの度数に驚いたのではなく口当たりの良さが気に入ったからではなかろうか。


まろやかで優しい酒が、喉の奥を焼く。

口当たりはよくとも、度数は高い。


ブランデーらしくない飲み方で、喉が焼ける熱を感じることで、俺はまだ生きているんだと確信できる。



「アメリーは、ダニエルをあの世の道連れにするとは言わんよ、絶対に」


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