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死神美少女と童貞魔法遣いの俺  作者: ぢょほほん
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まるでダメなヲタクの俺、ついに魔法遣いになる!?(1)

そもそも、魔法遣いと魔女はどう違うんでしょうか? 考えたことのある方もない方も、一緒に考えていただけたら嬉しいです。



「俺は魔法遣いになりたかったんや。 多分、ずっと前から」


魔法遣い(Magus)になりたかったんですか?」


「せや」


「どういうことですか?」


「魔法遣いは悪魔より強いんや…… ええとな、」



そもそも。

なぜ日本人男性が童貞のまま三十歳を超えると魔法遣いになるなどという話になるのか。

持論の仮説を ……いや、読んだことのある本の受け売りに毛の生えたようなものだけれど、自分なりに多少は考察した結果を述べる。



魔法遣い(Magus)魔女(Hexe)はちゃうねん、魔法遣いは悪魔を『使う側』、魔女は悪魔に『使われる側』やねんな、力関係を数式にすれば……」


「きゃ! ……もうっ! いくらわたしがお嫁さんになったからって、いきなり胸を触らないでください!」


「アホかっ! セクハラちゃうわ!」



用があるのは薄いローゼの胸ではなく、胸にさしている万年筆。

王冠のようなキャップを抜いてメモ用紙に記す。



「ええか……?

魔法遣い(Magus) >>>(越えられない壁) 悪魔(Teufel)魔女(Hexe)

いうことや」


「ふうん…… この世界に来たばかりのヴォルフさんがよくご存知ですね、誰からの情報ですか?」


「澁澤龍彦」


「お知り合いですか?」


「なわけあらへん、作家さんや、そう書いてある澁澤の本を読んだんやけど、死神の自分ならわかるやろ? これで()うとるやんな?」


「びっくりするくらい正確です」


「魔法遣いは悪魔に命令を出す側やから、精神的に高い地位におらなあかんのや、しょうもない欲望とか、喜怒哀楽とかに振り回されん、強い心を持っとらなあかん、そのためにはしんどい修行が必要なんや……」



……そう、修行。


何度抜いても抜いても()ち上がってくる股間を持ちながら、女子学生のスカートの端っこを触ることすらできない十代のヤりたい盛りにも。


同棲したり結婚したりする同世代が、毎晩子作りに励んでいたり妊娠だけはしないように周到に避妊しながらも快楽に溺れ、愛し合っているという話を職場や酒場で見聞きしたあと、自宅に帰って枕に涙を流したり、

……抱き枕にアレをナニして良からぬものを垂れ流したりした二十代の男盛りにも。


俺はずっと我慢して、我慢して。

涙と我慢汁(・ ・ ・)を流してきたのだ。


男にとって、女を抱かず童貞を貫くことは、修行以外の何物でもないのである。

三十歳の童貞は修行に耐えた精神的強者なのだ、それなら魔法ぐらい使えたって不思議はない。


そういう結論に至った。



「えっ? ヴォルフさんって、何か修行されていたんですか?」



期待と羨望の混じった邪気のない視線と遠慮のない言葉の暴力が、俺の心をざっくりと(えぐ)る。

ジャブは(えぐ)るように打つべし。

そう、これはジャブだ、次のパンチが飛んでくる。



「どんな修行をされていたんですか?」


「…………………………………………………いろいろ」


「え? 具体的には?」


「ええやん、……ほっとけ」


「???」



精神的に高い地位に登ったはずの修行者の俺だったが、あっというまに撃沈した。

まだまだ修行が足りないようだ。



「とにかく、魔法遣いは悪魔に命令する側、悪魔より強くならんと悪魔に命令はできひん、そういう強い人間になりたかったんや」


「でも、ヴォルフさんは実際に魔法が使えるわけではないですよね?」


「せやな」


「さっきの、水に浮かぶコインは、魔法じゃないですよね?」


「自然科学やな」


「どうするんですか?」


「異世界の知識は魔法みたいなもんやろ?」


「それはそうですけど、……ヴォルフさん、『魔法』ってなんだと思います?」



ワインを一口飲む、ローゼも俺にあわせて一口飲む。

こくりと嚥下する小さな音が聞こえるほど近い。



「……ファイヤー言うて火を出したり、サンダー言うて雷を出したりするんは、伝統的な魔法ではないねん、現代の人間が創作上で勝手に思っとる魔法、やな」


「では、『伝統的な魔法』とはなんですの?」


「何かこの世のものではないものを呼び出すか、変身するかがメジャーやな」


「この世のものではないものとは?」


「死者か、悪魔」


「……呼び出せるんですか?」


「できるわけないやん?」


「変身は?」


「仮面ライダーともセーラームーンともちゃうねんで俺は?」


「つまりヴォルフさんは、魔法使えないんですよね? 魔法遣いなのに」


「……ほんまや、どないしよ?」



我ながら情けないことこの上なかった。

そう、俺は魔法遣いを名乗っておきながら、魔法遣いとは何かを正確に把握しておきながらも、本来の意味での魔法遣いではないのだ。


現代の知識を駆使すれば、ある程度困難な物事をごまかすことはできる、大きな武器であることは間違いない。

しかし、それはやっぱり『魔法とは違う何か』なのだ……


浅はかな思いつきで魔法遣いを名乗ったことを後悔し始めたそのとき、

悩む俺をローゼは大層うれしそうに笑った。



「にへへへへ」


「なんや? 俺のこと(わろ)とるんかい?」


「魔法遣いになれる方法があります ……にへへ、聞きたいですか?」

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