飲むぞ兄弟! 異世界酒場で、大盤振る舞いじゃ!(5)
実は手術をすることになり、その準備やら何やらで執筆も遅れ気味です。 少しずつでも書いていきますので、宜しくお願いします。
「ほんとかよ!? ……硬くて、軽くて、錆びない伝説の素材…… なんていったかなぁ? ええと、『ミスリル銀』?」
マルコのコメントに、酔客がどよめく。
ここから先はもう誰も、俺の話を酔っ払いの与太話だとは思わない。
最初にかますジャブとしては手応え十分。
とはいえ、これ以上過度な期待させるのはいいと思えない。
本当に軽くて丈夫なのは、チタン合金とかだろう。
「せやなあ、伝説言うほどのもんではないな」
「そうなのか? じゃあこれは一体なんなんだ?」
「俺にもようわからん」
「なんだって?」
「せやから、詳しいヤツに教えてもらおうと思うて旅しとるんや」
「ヴォルフの旅の目的は、この金属について調べることなのか?」
「俺は魔法遣いや、錬金術師ちゃうねん、調べなあかんことは ……ほかにもむちゃくちゃたくさんあんねんけどな」
「ほかにもあるのか?」
「悪魔との契約とか、死者を呼び出す方法とか、いろいろやな」
「そうなのか……?」
「で、金物屋のマルコのおっちゃん、どうや? おっちゃんの意見が聞きたいねん」
「うーむ、なんだろう? 見当もつかん」
「やっぱりそうかー、まあしゃあないなあ」
「……なあヴォルフ? これ、もらってもいいかな?」
「ええよ、おっちゃんと仲良うなった印や」
「おおお! ありがとうヴォルフ! 店に飾らせてもらうよ!」
金物屋のおっさんの目が、少年のように輝いた。
宝物を見つけた、という目だ。
この世界では純アルミニウムは稀少で高価なものだ、一円玉を持ってきてよかった。
「店に来る客とか取引先で、コイツに詳しそうなヤツがおったら紹介してほしいねん、頼むで」
「ああ、引き受けた」
「羨ましいなマルコ! ヴォルフ、俺にも一枚くれないか?!」
「すまんなぁロビンのおっちゃん、そんなたくさんはないねん」
「そうか、まあ、そうだよな……」
「今度手に入ったらおっちゃんにもやるから堪忍やで? ま、とりあえず今夜は飲もうや、こいつは俺のおごりや」
「おっ! ……いや、俺の方こそすまんねヴォルフ、気を悪くさせてしまったかな?」
「ええって、気にせんといてや。 お〜、そっちのおっちゃんも一緒にどうや? よっしゃよっしゃ! とりあえずみんなで乾杯や乾杯!」
「「「「乾杯!!」」」」
他のテーブルから様子を見に来たおっさん連中にも、どさくさに紛れてカイゼル髭の店員にもカエル印のワインを注ぎ、皆でグラスを傾けると、両手に抱えていたボトルはあっという間に空になった。
カイゼル髭の店員と肩を組み、メニューを掴んで、
「おっちゃん、次いこ次! なにがええ?」
「お客さん、ありがたいけどね、俺まで飲んじゃっていいのかい?」
「ええねんええねん! 店員が飲みながら仕事しとるの、京橋の立ち飲み屋やったら普通やで?」
「キョーバシ?!」
「まーええから! おすすめ教えてくれや」
「『聖母の乳』はどうだ?」
「おっぱいか! ええ名前やな!! おっぱいふたつ、いや二本!」
周りのおっさんたちがどっと笑う。
髭の店員は笑いながらバックヤードへ向かう。
渋面のローゼが視界に入るが、気にしない。
「ママのおっぱいか〜、どないな酒なんやろうなあ」
「どうしたヴォルフ、ママが恋しくなったのか?」
「アホか、ミルクは吸うより吸わせるんが好きやねん、俺は」
俺は俺の股間を指差しなるべく下品そうに笑うと、おっさんたちも盛大に笑った。
エロい話。
おっさんたちとがっちり仲良くなるにはこれしかない、男が集まれば猥談ぐらいするのが当然、とはいえ俺は童貞なので変なボロがでないように話さなくてはいけないが…… ここまでは順調だろう。
髭面の店員がワインを持ってくる、ボトルには幼子を抱えた貞淑そうな聖母の描かれたラベル。
露骨に授乳している絵ではない。
まあそりゃあそうか。
髭の店員が俺のグラスにワインを注ぎ、俺はボトルを受け取って髭のグラスに注ぎ返し、流れるように他のおっさんたちのグラスにも遠慮なく注ぐ。
「しかしまあ、……そうだよな、まだ出そうもないもんな、おっぱい」
「ああ、ありゃあ、まだまだ『ふくらみかけ』だな」
「んんん? なんの話やおっちゃん?」
「お前とお前の嫁の話さ、ヴォルフ」
「嫁???」
なぜおっさんたちが俺の嫁 ……フィギュアのことを知っているんだ?
この世界にあのアニメが放送されているとは思えないし、俺がアニメのフィギュアを嫁呼ばわりしていたことはおっさんたちは知らないはずだ。
そもそもこの世界にフィギュアがあるわけがない、すると寝ゲロで死ななければ結婚できたとかいう、リアル嫁のことか? いや、それこそ知っているわけがない。
ふーむ? 俺に嫁? このおっさんたちは、一体なんの話をしているんだ?
おっさんたちは俺とローゼを交互にチラチラと見る。
あ、ま、まさか……?
「なあおっちゃん? 嫁って、俺の嫁って、 ……もしかして、ローゼのことか??」




