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死神美少女と童貞魔法遣いの俺  作者: ぢょほほん
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飲むぞ兄弟! 異世界酒場で、大盤振る舞いじゃ!(4)

ここで金物屋のマルコの親父が、ふと口にした。




「ああ、そういえば、ヴォルフの生業(なりわい)は、なんだったっけ?」



待ってました。

その質問が来るのを。


俺はグラスを軽く揺らし、唇を黄金色のワインで少しだけ濡らし、たっぷり時間をかけて、もったいつけてグラスをテーブルに置いた。



魔法遣い(Magus)や」



一瞬、酒場中がしんとしてから、爆発的な大爆笑を誘った。

笑っていないのは、俺自身と事前に何も聞かされていないローゼだけ。



「うわはははははははっ! 魔法遣いだって?!」


「おいおいおいおい! ヴォルフお前、ほんっとに面白いやつだな!! 気に入ったぜ!!!」


「おっちゃんおおきにな、せやけど、これ見たらもっと気に入るで?」


「なんだそれ? コインか?」


「せや。 実は俺、錬金術もかじっとってな、」



すち子やしげぞうもかくやと思われるほどの大爆笑の嵐。

大爆笑の嵐を呼ぶ男とは俺のことだ。

この野郎、かかって来い、最初はダジャレだ。


文房具屋のロビンのおっさんに至っては、



「れんww きんwwww じゅつwwwww」



と、椅子から転げ落ち窒息死しそうなくらい笑い転げている。

完全に開いた口がふさがらないローゼを眺め、俺はにやにやしながら店員に声をかけた。



「髭のおっちゃん、たらいに水張ってくれんか?」


「それはいいけど…… なにをするんだい?」


「このコインは『水に浮く金属』なんや、見したるわ」


「ヴォルフ、いくらなんでもそれないだろう? 水に浮く金属なんて聞いたことがないぞ」



さすが金物屋のマルコ、金属に詳しい常識人だ。

しかし、それはこの世界の、この時代の常識だ。


俺は、黒鉄(くろがね)の軍艦が海に浮かぶことも、鋼鉄の飛行機が空を飛ぶことも知っている。

……細かいことを言えば、飛行機の素材はジュラルミンだったり炭素繊維だったりがふんだんに使われており、南部鉄器のような分厚い金属の塊ではないものの…… 微分積分を駆使して計算すれば、なぜ鉄製の軍艦が海に浮かび、鋼鉄の飛行機が空を飛べるのかも説明がつくことも知っている。


俺自身は物理も数学も苦手で、説明できないが。


一枚1グラムの重量で、直径2センチメートルの一円玉という円形のアルミニウムは、水に浮かぶことは、子供の頃に実験したことがあるので知っている。



半笑いのカイゼル髭の店員がたらいに水を張って持ってくる。

俺の与太話を小馬鹿にしている顔だ。


俺は表面を軽く削っただけの一円玉を、そっと水面に近づける。

水面に触れた瞬間、俺の指先と一円玉に表面張力で水が吸い付く。


ゆっくりゆっくり指を離すと、一円玉はぷるんと震え、水面に浮かんだ。



「うおおおおお!!」


「なんだこれ!!! すげえ!!!」



マルコとヨーナスの叫び声に、他のテーブルからも客が集まる。

床に笑い転げていたロビンも起き上がり、髭の店員と一緒にたらいの中を凝視する。



「わかったぞ、これ木製だろ!?」


「噛んでみたらどうや?」


「噛む?」


「木製やったら、ガリって割れるやろ」


「はは、確かにな!!」


「よおし、俺がやってやるよ」



髭の店員が水面の一円玉を掴み、犬歯のあたりで噛んだ。

がちがちと音がする、もちろん割れるわけはない。


アルミニウムは意外と硬い。

軽くて硬いから車のホイールにも使用される。



「硬いぞ?! なんだこれ!!」


「ちょっと俺にみせてくれ! ふーむ、これは…… 意外と硬いし、軽いな、こんな軽い金属があるのか?」


「しかも錆びひん金属やねん」


「ほんとかよ!? ……硬くて、軽くて、錆びない伝説の素材…… なんていったかなぁ? ええと、『ミスリル銀』?」



マルコのコメントに、酔客がどよめく。

ここから先はもう誰も、俺の話を酔っ払いの与太話だとは思わない。


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