飲むぞ兄弟! 異世界酒場で、大盤振る舞いじゃ!(3)
この物語はお酒を飲んでばっかりです。 そういうシーンが多いのです。 そういうのが好きな方には喜んでいただけていると思います。
俺はとっさに取り繕った。
「えーっと、ツレには、子供用の白ワイン、もらえるかな?」
「ああ、子供用ね」
「ちょっと、ヴォルフさん? 」
にやっと笑うカイゼル髭は、別のガラス瓶から黄金色の液体をグラスに注ぎ、ローゼの前に差し出した。
おそらく中身はぶどうジュース。
整った眉を吊り上げて怒るローゼ。
「なんてことおっしゃるのヴォルフさん! 子供扱いしないでください!」
おっさん三人組に加えて、カイゼル髭の店員まで大笑い。
俺は、顔はにやにやしたままローゼの頭を抱え、耳元に囁いた。
「きゃっ」
「こら! 何いうてんねや自分!」
「だ、だって、ヴォルフさんがわたしを子供扱いするから……」
「アホ! 『わたしは死神だから、こんな見た目だけど二十歳なんです〜』とか言うつもりか!?」
「えっ、そ、それは……」
「正体明かすわけにいかんやろ!?」
「でででで、でも!」
「飲みたい気持ちはわかる、でもアカン」
恨めしそうな上目遣いでじーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっと、俺の眼を睨みつけるローゼ。
少しも怖くない。
かわいい。
ローゼが実は酒が大好き(量は飲めないが、好きなことは好き)なのは、よく知っている。
仕方がない、妥協点を探ろう。
カイゼル髭にも聞こえないように、さらに小さな声で囁いた。
「ほな人前では飲めへんかわりに、あとで好きなだけ呑ましたる」
「ほんとですか?」
「ほんまや」
「ふ、二人っきりのときは…… お酒飲んでも、いいってことですよね?」
「おう」
「やくそく、ですよ?」
「約束したる、せやから、人前では飲むな? な?」
「……ひとりで呑むのは寂しいですよ?」
「わかったわかった、俺がとことん付き合う、それでどうや?」
「それなら……いまは、がまんします」
「ん、よっしゃ、ええ娘やな」
ふにゃふにゃの猫毛のような柔らかい頭髪をなでる。
えへへとローゼが笑う。
ノンアルコールのぶどうジュースを一口口に含んだだけなのに、真っ赤な顔になって、わたしどうなっちゃうんだろうとかなんとかつぶやく。
何を言っているんだ。
どうって、飲みすぎたら二日酔いだろう、常識的に考えて。
それ以外に何があるんだ。
ローゼの前にぶどうジュースを注いだグラスが置かれたと当時に、俺はカイゼル髭の店員が栓を抜いた二本の白ワインのボトルを両手に装備し、おっさん達の卓へと突撃した。
「乾杯!!」
「「「乾杯!!」」」
おっさん三人組は、言うだけのことはあり、あっという間にグラスを空にした。
杯を乾かすと書いて乾杯、やるじゃないか。
速攻で空いたグラスに『ひきがえるの……』なんとやら、を注ぐ。
ラベルのカエルの絵は認識できるが、それがアマガエルなのかヒキガエルなのかの認識は怪しい。
やぱい、酔いが回ってきたのかもしれない。
だがここで止まるわけにはいかない。
胸のエンジンに火をつけろ、俺はここだぜ一足お先に光の早さで……
ぱんぱんと己の頬を叩いて気合いを入れる。
「おおおおぉ〜〜! おっちゃんたち、えー飲みっぷりやなぁ!」
「わははは! ヴォルフ、お前さんもな!!」
「よおおおし! おっちゃんたちぃ〜、俺と勝負しぃひんか?」
「早飲みか? 望むところだぜぇ??」
「よっしゃ〜、ほないくで? せえええのおおお!」
「ぶっ、わははっははははは!!!!!! おいヴォルフ! その変顔は反則だろぉぉぉぉ!!!」
「勝負は非情やねん!」
「わはははっはははっは! お前面白いなヴォルフ!!」
「面白さでは負けへんでぇ! 本場で鍛えたお笑いの底力見せたるで!」
「ドコだよ本場って!」
「なんばグランドかg…… ま、まあ、えらい東のほうや! ほら乾杯!」
カウンターで、ぶどうジュースを舐めるようにチビチビと飲みながら退屈に耐えるローゼを横目に、俺はおっさん達と飲み勝負を始めた。
このおっさんたち、は飲める。
酒量では勝ち目がなさそうだと本能的に感じ取り、最初からお笑いに走った。
もともと酒量で勝ことが目的ではないから、これでいい。
俺の作戦は、ここまでは大成功に思えた。
ここで金物屋のマルコの親父が、ふと口にした。
「ああ、そういえば、ヴォルフの生業は、なんだったっけ?」




