飲むぞ兄弟! 異世界酒場で、大盤振る舞いじゃ!(2)
俺は確信を持って、髭の店員に告げた。
「髭のおっちゃん、二杯目や、二杯目は、酒、酒をくれんか」
「酒ね、酒はメニューから選んでくれよ」
カイゼル髭はメニューを指差す。
「あれっ、ビールはお酒じゃないんですか?」
ローゼの疑問に、おっさんたちがまた嗤う。
カイゼル髭はただにっこりと笑うだけ。
「なあローゼ、メニュー見てみ? まず大項目が『ビール』ってあるやろ?」
「ええと、そうですね…… ドルトムンダーとかヴァイツェンって、銘柄が書いてありますけど」
「それは銘柄いうか種類やな、産地とか材料に由来しとるんやないかな? 土地によって材料と作り方がちゃうからやと思うけど ……たぶん。 まあ細かいことはええねん、その次の大項目はなんて書いてある?」
「『お酒』、そしてそのあとに、ワインとか…… あっ!」
「そういうこっちゃ、ビールは酒のカテゴリに入ってないんや」
「えっ、でも、どうしてでしょうね??」
あのおっさんたちが俺をからかおうとした理由は簡単、ビールはアルコール度数が少ないから『ビールなんか酒じゃないぞ』とイキがっているのだ。
しかし、メニューのカテゴリでわざわざビールが酒と切り分けられている理由までは知っているわけがない。
俺の知りたかったことを、カイゼル髭の店員がローゼに教える。
「税金が違うのさ」
「税金?」
「ビールはワインや他の強い酒よりも税金が安くなっている、だからメニューでも区別されているのさ。 この辺じゃ『ビールは力、ワインは文化』って言ってね、ビールは夏の暑い時、農作業の合間に飲むことも許されているんだ、ビールは力を出すために仕事に必要なものなのさ」
「ビール飲んで、お仕事になるんですか?」
「わははは! ビールなんかで酔っ払うダセェ男はこの街にゃいねえんだよ、お嬢ちゃん!!」
向こうのテーブルのおっさんが大声で嗤う。
そういうことなのだろう。
過酷な農作業の合間にはビールでも飲まなければやっていられないのかもしれない。
もっとも、あのおっさんはどう見ても農家には見えないが……
というか三人とも知っている顔だ、知ってたけどね、最初から。
……そろそろ、始める頃か。
「おー! おっちゃんよう見たら文房具屋のおっちゃんやないかいっ!!」
「そういう兄ちゃんはうちに冷やかしにきた兄ちゃんだな?」
「ツレがカワイイ文房具みたい言うんで店に入ったんや、すまんなー」
「ロビンだ、よろしくな」
「ロビンのおっちゃん、よろしくな、俺はヴォルフいうねん、次はラブレターかなんか買うから堪忍やで」
「ああ、頼むよ」
「兄ちゃん、うちにも冷やかしに来たよな?」
「そっちは画材屋のおっちゃんやんけ! ヨーナスさんやったっけ? ほんまにごめんなー」
「なんだ? 買ってくれたのはうちだけか?」
「マルコのおっちゃーん! それ言うたらあかん奴やないか〜?」
「次はスキットルを買うんだよな?」
「まけてくれるんやろな?」
「また値切るのかい?」
「当たり前やないかい! って、飲むもんないな! 髭のおっちゃん! 酒頼むわ! 二杯目は酒な! このおっちゃんたちと一緒に飲めるやつ!!」
おっさん三人組がおおっと感嘆する
金物屋のマルコ、文房具屋のロビン、画材屋のヨーナス、途中で立ち寄った商店のおっさんたちだった。
立ち寄った店の店主がたまたま同じ酒場に来たのは幸運だ。
今日はおごって、仲良くなるきっかけをつかもう。
「酒は何にするんだい? メニューから選んでくれよ」
「えーっと、せやな…… なにがええ?」
「白ワインなら、『ひきがえるの泉』はどうだい? 飲みやすいよ」
「よし、それ二本」
「あいよ」
カイゼル髭の店員は慣れた手つきでコルクを開けながら、
「そっちの可愛らしいお嬢さんは?」
「あっ、私も同じものを……」
「えっ?」
怪訝な顔をされる。
当然だ、傍目にはどう見ても十代前半にしか見えない。
この世界の法律はよく知らないが、飲酒していい年頃とは思えない。
ローゼの実年齢は二十歳だそうだが、死神は歳をとる速度が遅いからこんな見た目だなんて言えるわけがない。
俺はとっさに取り繕った。
「えーっと、ツレには、子供用の白ワイン、もらえるかな?」




