衝撃! 知らぬ間に妻帯者になっていた俺、しかも嫁は死神?!(1)
おっさんたちは俺とローゼを交互にチラチラと見る。
あ、ま、まさか……?
「なあおっちゃん? 嫁って、俺の嫁って、 ……もしかして、ローゼのことか??」
おっさんたち大爆笑、意味のわからない俺。
ここまでいい感じに酔っ払いを演じつつ…… 実際、だいぶ酔っていたつもりだったが、すっかり酔いが覚めてしまった。
「え? いやいやいやいやいや! あんなちびっこと、結婚? ありえへんやろ? 犯罪ちゃうん?」
「ハタチなんだってな? わはは、ずいぶん若いハタチだよなあ、おい!」
「あいつが二十歳? おっちゃん、ローゼがそう言うてたんか?」
「おいおい? お前が、そう言わせてるんだろう?」
「はああ?! なんでやねん! あんなん、どうみても二十歳には見えへんやろ? おかしいと思わへん?」
不意にマルコが俺の肩を力強く抱く、目が据わっている。
酔っている、だが酔っているかいないか以前に、マルコはマジだ、本気の目だ。
「言えよ、理由アリなんだろう?」
「なんの話や?」
「なあヴォルフ、俺たちはお前の味方だ」
「……?」
「ローゼちゃんとは何度か話した、あの娘はいい子だ、お前のことは悪く言わない、お前はあの娘のことを、大事にしている」
「まあ、そりゃ、」
転生させてくれた恩人だから、とは言えないが。
「あのしゃべり方、もともとはどこか貴族か何かのお嬢様なんじゃあないか? いけ好かない金持ちと無理やり結婚させられそうになって、それでお前と駆け落ちしたとか…… そんなところじゃあないのか?」
うーむ。
「愛し合っているんだろう? 応援するぜ俺たちは!」
……う、うーーーむ。
熱い、とても熱いが…… かなり誤解がありそうだ。
マルコの手を払って、欽ちゃん走りでカウンターに駆け寄り、退屈そうにぶどうジュースを舐める黒づくめの、自称二十歳、実年齢も二十歳だが見た目は義務教育中にしか見えない小さな肩を抱いた。
「きゃっ!」
「ロ〜〜〜〜ォゼ!! ちょーっと聞きたいことがあんねんけどな?!」
「も、もうっ☆ だめですよ? みなさんが見ていらしてよ、あ・な・たっ♪」
「アホっ、そんな演技はええねん! それより、いつの間に俺たちは夫婦になったんや?!」
「『前から』ですよ?」
「なんでやねん! このあいだ知り合ったばっかりやろ!?」
「だから、そういう設定で……」
「その設定は、いつ思いついたんや?!」
「…………その、宿でお部屋を借りるとき、わたしとヴォルフさんはどういう関係かって聞かれたから…… 夫婦ですって答えたんです」
「もうちょっとうまいウソつかんかい……」
「たとえば?」
「兄妹とかでええやろ」
「ええ? わたしとヴォルフさんはぜんっっぜん似てませんよ? 兄妹の設定は無理がありますわ」
「お前みたいなむちゃくちゃ可愛い幼い女の子を嫁にもらう方が無理があるやろ?」
「……にへへ☆」
「なんや急に笑うて??」
「わたしのこと、かわいいって思ってるんですね?」
「い、いらんこといわんでええねん!」
「かわいいお嫁さんをもらうことに、不満ががあるんですの?」
「お前の見た目が幼すぎて嫁の設定に無理がある言うてんねや! 下手すりゃ犯罪者やぞ!」
この世界に青少年健全育成条例があるなら、すでに宿には何泊かしている様子なので、未成年への淫行で確実に処罰される。
見た目が小学生な死神にあれこれした罪で冤罪になるやつ、俺が世界初だろうな。
しかも童貞なのに。
異世界の刑法ってどうなってるんだろう? やっぱり犯罪者には厳しいのだろうか、即死刑とかありそうで怖い。
縛り首とか、男根もぎりの刑とか。
「おいどうしたヴォルフぅ? 夫婦喧嘩か?!」
おっさんたちが笑いに笑う。
俺は無理やり笑って手を振り、自称嫁に言う。
「……あとで打ち合わせや、ちゃんと設定決めとかんとボロが出るで」
「いまじゃダメなんですか?」
「おっさんたちと仲良くなって情報収集するんが先や」
「ふーん? かわいいお嫁さんほったらかして、おじさんたちのところへ行っちゃうんですね?」
「あのなあ……」
「冗談です」
ローゼは桜色の唇を俺の耳もとに寄せ、そっと、
「約束、忘れないでください」
「約束?」
「あとで好きなだけ、飲ませてくれるって」
「あー、」
「そのとき、ゆっくりお話ししましょう? ……あ・な・た」
おっさんたちとの酒宴はまだまだ続き、その後は自称嫁との酒席が待っている。
どうやら今夜は、簡単には眠らせてもらえそうもない。




