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伊予天正の陣戦記  作者: 赤城康彦


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戦記 十九

「毛利の大将はどこじゃ! 金子元宅であるぞ!」

「なに!」

 侍大将はその叫びを耳にしてはしゃぎ、大急ぎで叫び声の方へと向かえば。槍を振り回して毛利の将兵を薙ぎ倒す者が、

「わしは金子元宅だぞ!」

 と叫びまくっていた。

 その首もらった! と馬上から槍を繰り出す侍大将だったが、元春はさっとかわしざまに柄をひっつかんで「えい」と力いっぱい引けば。侍大将はたまらず引かれて、落馬してしまった。

 柄をつかまれたときに咄嗟に手放せばよかったのだ。体中に衝撃が走る一瞬の間にそれに気づいたが、遅かった。

 目前に槍の穂先が迫り。そのまま眉間に突き刺さった。

「ぐわッ!」

 侍大将は断末魔の叫びをあげ白目をむいて、どおっと倒れ。その様を見て将兵らは動揺をきたした。

「奴らを追い返せ!」

 兄を名乗って侍大将をおびき寄せるのがうまくいって、元春の興奮は頂点に達していた。それに触発されるように領民の反撃も勢いを増して、毛利軍はまたたく間に崩れてゆく。

 そもそもが抜け駆けの功名に目がくらんだ者たちであった。あっけないものだった。

「ふはは、はっははははは!」

 ざまを見よ! と元春は大喝し。

 くるりと回れ右すると、金子城へと駆け戻ってゆく。

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