↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/7

CHAPTER1『日常』 第二話

「……なあ、アルト。何で俺と同じ服装なんだ?」

「えっ、爽兄リスペクトだけど?」


 ふと、アルトの服装が気になった俺は、それについて言及した。

 アルトの着ているのは、明らかに合成繊維でできているジャージだ。

 それも黒地で、鮮やかなオレンジのラインの入ったもの。ご丁寧にブランドまで同じNEKI(ナイキではない)だし。

 まあ、流石にそれでもサイズは異なっている。俺は全国平均の身長だったのに対し、アルトは背が低い。

 それも、ちょっと低いどころか、同い年の連中と比べると一回りも二回りも低い。

 その、童顔と合わさり合って、こいつが本当に中学二年生になろうとしているのか、本当に怪しく思えてくる今日この頃だ。


 なぜかよく分からないが、幼い頃からアルトは俺を慕っている。

 兄弟がいなくて、しょっちゅう一緒に遊んでいたから今では本当の兄弟みたいなのだが、時々こいつは怖い。

 こういう風に出かける機会では、必ず俺と同じ服を用意してくる。

 部活での背番号は、その昔俺が使っていた番号をそっくりそのままだ。

 今ので察せた通り、服装だけでなくそういうのもアルトは、明らかに俺を模倣するようにしている。


「なあ、こんな下らないことに能力使うの止めようぜ」

「下らなくないよ、僕にとっては一大事なんだから」


 アルトの能力は“未来予知<ヴィジョンスキャン>”だ。

 名前の通り、自分の欲するタイミングで、最も知りたい未来の情景を見ることができる。

 網膜に直接映し出されるような感じらしく、アルト以外の者が見ることは叶わないのだが。


 要するに、それで今日の俺の服装を先読みしたのだろう。

 このジャージはやはり一緒に出かけた時に買ったもので、その時にアルトもサイズ違いのものを買ったのだ。

 成長期の大体終わった俺と違い、アルトの場合はもうすぐきつくなると思うが、まだまだ大丈夫らしい。


 一旦口を閉じて靴を完全に履いた俺は、二人を待たせないためにも急いで立ち上がる。

 空を見上げてみると、雲はちらほら浮かんでいるが、間違いなく晴天だった。

 日差しに起こされたのだから、天気が良いのは当然なのだが、ここまで良い天気だとは思ってもいなかった。


「今日はどこに行くんだったっけ?」

「そうだな……街でも行くか」

「兄さんの意見で良いか、アルト?」

「良いよ、二人ともそう言うなら」


 無計画に朝早くから集まった三人が、今日どこに行くかまだ決めてないので、アルトがその話題を斬りだしてくれた。

 兄さんは少し目を閉じて考えた後に、思いついたように街にしないかと提案した。


 そこで俺は、ふと思い出したのだ。

 今日、デパートの改修後久々の開店なので、ちょっとしたイベントを催しているのを。

 とりあえず俺が兄さんに賛成すると、反対する訳もないアルトが賛成する。


 それに、あいつもそこにいるかもしれない。


「そう言えば渡くん、爽兄は好きな人って居るの?」

「ん? 同じクラスに居るってのは聞いたけど」

「じゃあ爽兄、今日は結構良い日になるかもね」


 ニヤニヤと嫌らしく笑いながら、アルトが俺の方を見てきた。

 どうにも色恋沙汰に首を突っ込みたいおっさんと、同じような雰囲気を出している。

 うるせえよと、軽く小突きながら俺はアルトに言い返したが、逆効果のようで、むしろその言葉を舞っていたかのようにケラケラと笑いだした。


 諦めた俺は、反論を止めにして玄関を閉めた。兄さんが鍵を取りだして施錠する。

 完全に出発の準備が整った俺たちは、街に向けて歩きだした。

 移動系の能力は、当然のごとく誰も持っていないから、手段は徒歩とバスだ。

 まあ、あっさり着いてしまうよりも談笑しながら向かった方が楽しいから、俺は気にしない。




――――――別に能力なんて、いらないから。




 いつも、そう思っているし、それは確実に本音なのだが、どうしてだろうか。

 そのフレーズが並ぶと、俺の心に棘が刺さる。

 能力が不要だとは、思ってはいけないと、怒られてるみたいな、そんな感じ。


「街に着いたらとりあえずデパート行こうよ、何かやってるみたいだしさ」

「ああ、それがあるから俺は街だと言ったんだが」

「兄さん同様に、俺も知ってるから賛成したんだけど」


 「そっか」と頷いて、鼻歌交じりにアルトは前を向き直した。

 ふと思い出したが、そろそろ、ていうか明日に学校もクラス替えなんだな。

 アルトがちょっと浮かれてるのはその辺りだろうか。

 今年から中学校二年生で、後輩が出来る。その前に色々と揃えたいものもあるのだろう。







 郊外の住宅地の中の一軒である自宅から、バス停まで徒歩十分、そのままバスに揺られること三十分。

 そうして街に到着する。


 降りる時に金を払うのだが、そこで格差が生じるのだ。

 まず俺の場合は、防犯用の能力無効化時計、キャンセラーをを提示することでバス代が無料になる。

 しかし、能力者であるアルトや兄さんの場合は、二百円程度の金を取られる。

 人智を超越した能力者であるならば、バスなんて使わなくても良いだろうとか、お偉いさんが言ったからこんなシステムになった。

 自力で何とかなるのに、楽をしようと言うのならば金を払えとのことで、自力でなんともならないノーマルは無料で乗れる。


 正直、アルトや兄さんは移動には一切役に立たない能力なのに、この格差は絶対におかしい。

 それなのに、上に立つ人達は、能力者を嫌悪する。能力者には参政権が無い。

 だから、この悪夢のような時代には中々終止符が打てない。

 前述の通り、能力を無効化する装置がある以上、反乱を起こしても確実に止められてしまう。


 だから、誰にも反抗をする権利が無い。一般人が騒ぎ立てると、憐れむような目で皆が見るのだ。

 別に生活に支障は出ない。能力者に毒されてしまったと思われるだけだ。

 そうなると、能力者であり、近親者である兄さんや両親に迷惑がかかる。それは、絶対に嫌だった。


 バスを降りた目の前には、改装が終了した大型店舗が見えた。

 食料品から、娯楽用品、果てには防犯グッズまで数多く取り揃えたこの店には、年中色んな客が来る。

 より一層利用しやすいように改装を始めたのが、一週間前の話。

 十階以上もの高層、なおかつ平面としての面積も広く、圧倒的に巨大な建物なのにすぐに工事が終わった理由は能力者だ。

 資材一つ運ぶのも、空間干渉能力者や、瞬間移動能力者が居たら一瞬だ。

 設計も天才演算能力者が居たらスーパーコンピューターも不要。

 材料不足でも、錬金能力者が居たら即座に作れる。それに、組み立ても容易だ。

 設計図を理解した設計者と、組み立てる大工の思考を、違う能力者が繋ぎ合わせたらどこに何を置いたら良いかすぐに分かり、屈強な力で配置できる。

 疲労を取る能力者もいるので睡眠も必要ない。

 唯一の問題点は、能力者に支給される賃金が、労働の割に少ない事だ。


「着いたねー、爽兄。まずはどこ行く?」

「そうだな……兄さんどうする?」

「結局俺が決めんのかよ。屋上のステージで何かやってるらしいから、そっちに行こうか」


 いつも通り、アルトに訊かれた俺が兄さんに訊くという流れで初めに向かう場所が決定する。

 屋上には、平成にはそんじょそこらには無かった、いわゆる東京ドーム級のステージがある。

 今の時代、東京ドームはそれほど大きくは無いのだが。


 ステージプログラムと銘打った看板がすぐそこにあったので俺たちはそこに注目した。

 今は大体八時半を少し回った頃、ステージの会場は九時で、トップバッターのグループは“シャイン”という名前の、男女混合のバンド。

 二年ぐらい前からメディアで見かけるようになり、最近では一番人気のグループだと思われる。

 学校のクラスメイト達にも、彼らのファンは中々多く、恭子もファンの一人だった筈。


 もしかしたらあいつも居るかもしれないなと考えていると、見つけた。

 茶色い髪の毛を方の下ぐらいにまで伸ばしている、一人の女子。

 身長は、まあ並の女子高生よりも少し高く、腰の位置も高い。そのため、運動も出来る。

 顔は、可愛いというよりも、整っていて、格好良いと言った方が正しいだろう。

 どうやら非能力者である姉と、遊びに来たらしい。


「おう、爽じゃんか。アンタも見に来たのか、シャイン」

「……正直着いてから誰が出るか知ったからそういう訳では……」

「だぁから恭子、もうちょい女らしくしなさいよ」


 こっちを振り向いた恭子と目があってしまい、無視もできなくなった俺は軽く会釈する。

 だが、向こうからこっちに一々歩み寄ってきて、アルトや兄さんもいるのに、二人が居ないかのように話しかけてきた。

 言葉遣いから分かる通り、かなり男勝りな性格で、思った事ははっきりと言う。

 そのせいで、年長者から怒りを買うことがしばしばあるが、本人は気にしていない。

 ただし、姉からはもう少し御淑やかにしろといつも言われているらしい。


「ま、良いや。いっそ五人で一緒に行こうぜ」

「相も変わらず強引だな……」

「アタシは人数多くて騒がしい方が好きなんだよ」


 そうして、アルトも兄さんも、恭子に引きずられるようにして連れて行かれた。勿論、俺も。



下にちょっとしたキャラクター紹介を……



桐谷(きりや) 渡(わたる) 十九歳 男


爽の兄であり、兄弟愛が強く、仲が良い。血は繋がっていないが、アルトも兄弟のようなものだと思っている。

大学に入っているので、基本的に服装は私服。白や黒など、無彩色を好む。

本編(CHAPTER2以降)では、白いシャツに茶色いジャケット、そしてジーンズ。

能力のモチーフは、中国の故事成語の『矛盾』より。

一人称:俺 二人称:お前 三人称:あいつ

能力:全てを貫く大槍



昼子或人(ひるこ あると) 十三歳 男


桐谷家のお向いさんの一人息子。小さい頃から爽達と遊んでいたために、仲が良い。

桐谷兄弟(特に爽)に甘える性格で、いつも爽にかまってもらっている。

祖父がイギリス人なので金髪、そしてかなりの童顔で小五ぐらいに見える。ついでに背も低い。

友達はかなり少なく、学校に親友が一人だけいる。

能力のモチーフとなったのは『リボーン』に出てくるユニ。

一人称:僕 二人称:君 三人称:彼or彼女

能力:未来予知



渋谷恭子(しぶたに きょうこ) 十六歳 女


かなり気が強い性格で、相手が誰であろうと思った事ははっきりと言う。

反感を買うことも多々あるが、味方もかなり多い。茶色の髪を肩より少し下まで下ろしている。

本編では制服を着ている。

能力のモチーフとなったのは『NARUTO』のイノ。

一人称:アタシ 二人称:アンタ 三人称:あいつ

能力:精神入れ替え



桐谷爽(きりや そう) 十六歳 男


主人公(なのに一番下)。

心優しく正義感が強い。基本的にジャージを好んで着るため、クローゼットには替えのジャージが何着かある。

本編での服装はCHAPTER1と一緒。兄弟愛が強く、兄の渡を慕っている。

どうやら渡曰くクラスメイトの誰かが好きなご様子で……。

一人称:俺 二人称:アンタ 三人称:あいつ

能力:持っていない。一番下に書かれた理由は能力が書けないから(笑)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。