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公爵位を捨てた元三ツ星シェフ、辺境村で『ネット通販』無双〜昼はヒロインたちに絶品飯を振る舞い、夜は現代兵器で暗殺稼業〜  作者: 月神世一


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EP 6

平和な朝食から数時間後。

ポポロ村が誇る特産品、『月見大根』の畑にて、その「厄災」は唐突に降り注いだ。

(ピカァァァァァァンッ!!)

突如として畑の中心に魔法陣が展開され、眩い光と共にポンッ!と一人の少女が吐き出されたのだ。

透き通るような金糸の髪に、長く尖った耳。

世界樹の森の次期女王候補、ルナ・シンフォニアである。

「あわわ……また迷子になっちゃいました……。キャルルちゃんたちのお家に行こうとしただけなのにぃ」

涙目でへたり込むルナを見て、畑仕事をしていたキャルルがウサギ耳をピンと立てて駆け寄った。

「ル、ルナちゃん!? なんでこんな所に! 転移魔法の座標、またズレたんですか!?」

「あっ、キャルルちゃん! ごめんなさい、私ったらまた……あっ!」

ルナは青ざめた。

彼女が尻餅をついた場所の下敷きになり、収穫間近だった月見大根が一本、無惨に折れていたのだ。

「ご、ごめんなさい! 大切な大根さんを! すぐにお詫びしますからっ!」

ルナが慌てて世界樹の杖を振るう。

彼女は全属性魔法を極めた天才だが、絶望的に常識が欠如している。

「大地の恵みよ、黄金の輝きとなりて還元なさいっ! えいっ!」

(カァァァァァンッ!!)

次の瞬間、折れた月見大根の横にあった巨大な岩石が、眩い光を放ち始めた。

そして光が収まった後、そこには——。

鈍く、しかし圧倒的な質量と輝きを放つ、推定100キログラムの『純金の塊』が鎮座していた。

「……え?」

キャルルのウサギ耳が、ピタリと硬直した。

「ほ、ほわぁ……おっきな金塊ですぅ……! これさえあれば、ルナミスパーラー(パチンコ)の羽根モノでVゾーンに全ツッパしてもお釣りが来ますぅぅ!」

どこからともなく現れたリーザが、純金に頬擦りをして涎を垂らしている。

俺は無言でリーザの頭に手刀を落とし、キャルルを見た。

「……ひっ! は、はわわわわわ!!」

キャルルは、元近衛騎士候補としての『為政者の顔』になり、顔面を蒼白にさせていた。

「だ、ダメです! こんな質量の純金が市場に出回ったら、ルナミス帝国との為替レートが崩壊してポポロ村がハイパーインフレを起こしますぅぅ!! リアンさん! 早くこれ、私の家の地下室に塩漬けにして隠して——」

「——ほう。これはこれは、素晴らしい光景ですな」

キャルルの悲鳴を遮るように、下劣に歪んだ声が響いた。

畑の入り口に立っていたのは、ルナミス帝国の軍服を着た恰幅の良い男と、十数人の重武装の私兵たち。

胸のバッジは、帝国の『特別徴税官』であることを示している。

「我が帝国の緩衝地帯で、これほどの『無申告の隠し財産』があるとは……。悪質な脱税ですな、ポポロ村の皆さん?」

「ち、違います! これは今、ルナちゃんが——」

「言い訳は結構!」

徴税官は、脂ぎった目で金塊と、そしてキャルルたち三人の美少女をねっとりと舐め回した。

「極上の月兎族に、人魚姫。それに世界樹のエルフ……! クククッ、脱税の咎で、金塊ごと貴様らも帝国に接収してやろう! 夜のベッドでたっぷりと『税の再計算』をしてやる!」

私兵たちが、下品な笑いを浮かべながら武器を構える。

キャルルが歯を食いしばり、リーザが俺の背中に隠れた。ルナはオロオロしている。

——その時だった。

「お待ちを。ルナミス帝国関税法・第4条第2項に基づく『未確定資産の一時保留特例』を無視するおつもりですか?」

凛とした声と共に、一人の女性が進み出た。

タイトスカートのスーツに身を包み、手には分厚い六法全書(のような魔導書)を持った女性。

日本政府・首席国際法務官にして、現在ポポロ村で俺の協力者となっている、桜田リベラだ。

「な、なんだ貴様は!」

「村の顧問弁護士です」

リベラは眼鏡を押し上げ、冷たい目で徴税官を見据えた。

「この金塊は発生から一時間未満であり、資産としての『確定申告義務』は生じていません。また、令状なき不当な接収は、帝国法務省への重大な越権行為として即時提訴の対象となります。……お持ち帰りになりたいなら、正式な書面と最高裁判所の許可証をお持ちなさい」

「な、小賢しい女が……っ!」

徴税官は顔を真っ赤にして激昂したが、リベラの堂々とした態度と、隙のない法的見解に攻めあぐねた。

ここで強行すれば、ルナミス帝国の法治国家としてのメンツに関わる。

「……チィッ! いいだろう、今日は退いてやる。だが、あの金塊は必ず没収する! 村の周りを包囲しろ! ネズミ一匹逃がすなよ!」

徴税官は吐き捨てるように言うと、私兵たちを畑の周囲に展開させ、村を事実上封鎖してしまった。

「ふぅ……」

リベラが息を吐き、俺の方を振り返る。

「リアン君。法律(表)で引き伸ばせるのは、もって今夜までよ」

「十分だ。ありがとう、リベラ」

俺は、村の周囲を包囲し、下卑た笑い声を上げている私兵たちを冷めた目で見やった。

どうやら、昨夜の傭兵たちと同じで、学習能力のないバカがまた来たらしい。

「——力武を呼んでくれ。あいつらの『裏帳簿(クズの証拠)』を洗い出す」

夜が来れば、俺のターンだ。

今夜は少し、派手な花火(現代兵器)を打ち上げる必要がありそうだ。

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