表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
李牧(りぼく)転生する  作者: ヴァンドール


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/48

26話(清須城陥落)

 尾張随一の水で守られた要塞。

 清須城の夜、は不気味なほど静まり返っていた。


 城門の上では兵士があくびをしていた。


「静かな夜だな」


「聞いたか?  那古野(なごや)の『うつけ』は、今日も川で泳いでいたそうだぜ」


「家督を継いでこれだ。 信友(のぶとも)様が動くまでもねえな」


 そう言いながら、兵士が笑っている。


 その時だった。後ろから、足音がした。


「誰だ?」


 振り向いた瞬間。シュッ。刃が、喉を切り裂いた。


 兵士は声を出す間もなく倒れた。

 闇の中から現れた男が言った。


「いよいよだ」


 彼の目は鋭かった。

 織田 信光(のぶみつ)。彼は信長の叔父にして、この惨劇の要である。


 本来であれば、この清須城主、信友の重鎮の一人。しかし、彼は甥である信長の『天下』という言葉に、自らの野心を抱いたのだ。


 信光の手勢により、城内の兵たちは、すでに制圧されていた。

 

「城門を開けろ」


 信光のその声に逆らう者など一人もいない。兵たちが一斉に動く。


 巨大な門が、ゆっくりと開いていく。

 清須はもう守りの城ではない。主君を裏切る、敵の武器になっていた。


 ギィィーと音を立てて夜の闇の中、城門が開いた。


 その時だった。無数の影が一斉に動いた。

 それは尾張の軍勢だった。

 先頭には馬に乗った若者。


 彼の名は織田信長。その隣には、二人の男がいた。李牧と韓信。


 韓信は門を見て笑った。


「本当に開いたな」


 李牧も頷く。


「見事です、信光殿」


 信長が愛馬の腹を蹴る。


「突撃ィッ! 清須を、俺の庭に変えろ!」


 鋭い声だった。


 次の瞬間。


 ドドドド! 兵たちが一斉に城内へ雪崩れ込む。清須城は完全に不意を突かれていた。


「敵襲!!」


 城内で鐘が鳴り、兵たちが慌てて飛び出す。

 しかし、もう全てが遅かった。


 韓信が笑う。


「かなり混乱してるな」


 李牧は周囲を見渡していた。彼は冷静だった。


「中央は信長様に任せましょう」


「俺たちはどうする?」


 李牧は武器庫を指した。韓信が笑う。


「なるほど。慌てて武器を取りに来ても遅いということか」


 その時だった。


 城の奥から武将たちが現れた。


「貴様、織田信長か!」


 信長は馬上で笑っている。


「そうだ」


 そして刀を抜いた。


「尾張は俺がもらう」


 兵たちがぶつかりあう。刃が交わり、火花が散る。


 清須城の夜は、一瞬で戦場になった。


 その少し離れた場所。

 城壁の影で、一人の女性が馬に跨っていた。


 そこには濃姫がいた。彼女は戦場を見渡していた。


『ふふ。やっぱりね。これではまるで(うつけ)の遊び場も同然』


 信長が兵を率いて突き進んでいるのが見える。


 その後ろでは李牧が軍を従え、韓信が奇襲を繰り返していた。


 濃姫は笑いながら呟く。


『これでもう、清須は殿の手中。誰が仕組んだのかしらね? 戦う前から、清須の(盾)を(矛)へと変えていた者は』


 遠くでは、城の鐘が鳴り続けている。


 その音はまるで、新たな主の到来を告げるように響いていた。


 この夜。清須城は陥落した。


 そして、若き城主、織田信長の名が、尾張中に広がることになる。


 それは後に、天下へ続く最初の一歩だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ