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李牧(りぼく)転生する  作者: ヴァンドール


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22/51

22話(幕間)

 李牧と韓信。 

 二人の魂は、新たな使命を背負い、光と共に次の世界へと向かっていた。


 その光を、少し離れた場所から見つめている女性がいた。


 彼女の名は楊端和。


「まったく……」


 彼女は腕を組み、どこか呆れたように、それでも少し楽しそうに笑っていた。


 李牧のまっすぐすぎる忠義も、韓信の危ういほどの才能も、どちらもよく知っている。

 ずっと上から見ていたからな。

 だから、あの二人だけで乱世に放り込めば、どうなるかなど想像に難くない。


「また無茶をするに決まってる」


 ぽつりと呟くと、楊端和は神の方へ振り向いた。


 そして、いつもの調子で神に尋ねた。


「ちょっと神よ。今度の世界にあたしの魂が宿れる器はあるのかい?」


「んーないこともないのですが」


 神は少し困ったように笑った。


「ただ、その器はですね、少々やっかいな立場にあります」


 楊端和は腕を組み、ふんと鼻を鳴らした。


「やっかい?」


「ええ。次の世界で、あの二人が仕えることになる王の妻です」


 楊端和の眉がぴくりと動いた。


「ほう。で?」


「その王は強い心と、埋もれた才能を見出す天才です。しかし、その歩みがあまりに早すぎる。ゆえに周囲は彼を恐れ、常に戦がつきまとうのです」


「戦がつきまとう? 望むところだ。退屈しなくていいじゃないか」


 楊端和は口元をゆるめた。


 神はそんな楊端和に少しだけ苦笑した。


「ただし一つ、問題があります」


「まだあるのかい?」


「その器はすでに役目を背負っています」


 神は真剣に言った。


「父と夫、二つの大きな勢力の狭間に立たされながら、夫を天下人へと導く役目です」


 楊端和の目が、わずかに鋭くなる。


「天下人ね」


「彼女は嫁ぐ際、父が『どうしようもない男ならこの刃で刺し殺せ』と言ったのに対し『もしかすると、この刃は父上を刺すことになるかもしれません』と返すほど強い女性です。かなりの覚悟が必要になるでしょう」


 しばし沈黙が落ちた。

 しかし次の瞬間、楊端和は豪快に笑った。


「はっ、なんだ。そんなことかい」


 そして肩をすくめた。


「黄河の女王と呼ばれていたあたしが今さら覚悟を問われるとはね」


 今度は神がにこやかに彼女を見つめた。


「本当に良いのですか?」


「面白そうじゃないか」


 そう言って、楊端和もにやりと笑った。


 そして彼女は、既に下界に向かった光の先を見つめた。


 そこには、次の世界へ向かった二つの魂、李牧と韓信の光の残像があった。


「あの二人を放っておくと、ろくなことにならないからね」


「やはり行かれるのですね」


「当たり前だろう」


 楊端和は言った。


「李牧殿、また無茶をするに決まってる」


 そして、ふっと優しく笑った。


「今度も少しだけ手を貸してやるさ。もっとも奴との勝負はまだ終わってないけどさ」


「それならば早速、あなたの魂をその器へ導きましょう」


 神は静かに告げた。


「その器の持ち主、彼女の名は」


 光が大きく揺らいだ。


帰蝶(きちょう)。後に、濃姫と呼ばれる女性です」


 楊端和は一瞬だけ目を細めた。


「帰蝶か。いい名じゃないか。濃姫は柄じゃないけどな」


 そして、次の瞬間、彼女は光の残像へと導かれていった。


「戦国の世へ、いってらっしゃい。楊端和殿」


 そして、光が消えた。


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