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神の園辺  作者: 夏生由貴
Ⅱ冬~エーベルハルト・クラウヴェル
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寄宿舎の裏手へ急ぐと、オイゲンの言ったとおり、糸杉の下にシャルがいた

 

 寄宿舎の裏手へ急ぐと、オイゲンの言ったとおり、糸杉の下にシャルがいた。

「シャル!」

「エーベル?! なんだって、こんなところに」

 中庭でぶつかったときとまったく同じ科白を口にするシャルが、たまらなく愛しくて、今度こそ、ぼくは思いきり抱きついてしまっていた。

 すぐに離れはしたけれど、自分でも呆れるほどの浮かれようだった。



「オイゲンが偶然、気づいてね。一体いつから、いたんだい。風邪をひいたら大変だ。部屋まで来ればよかったのに」

「うん……でも、宿舎の階が違うってだけで、なんか入りづらくてさ。部屋の窓に石でも投げつけようかと思ってたところ」

「きみらしいな。実践前で、よかったよ」

 狙った窓に当たるという保証も、その窓が割れないという根拠もないのに、さらりと言ってのけるきみ。

 そんなシャルの変わらずの奔放さが、ぼくを惹きつけてやまなかった。



 シャルはひと呼吸置くと、手にしていた物を差しだした。ぼくのノートだった。

「今朝落としたとき、僕の持ち物に紛れたんだと思う。すぐに気づけなくて、ごめん。授業、困らなかった?」

「ああ、それは――全然。気にするなよ。ぼくの不注意でもあったんだから。届けてくれてありがとう。それよりシャル、昼はこれからだよね。久しぶりにオイゲンと3人で食べないかい」

 シャルは目をそらして押し黙った。

「……シャル?」

「ノートを返したかっただけだから」

 断られるとは思ってなかった。

「そう……急な話だし、きみの予定もあるものね。じゃあ、明日の昼はどう?」

「明日の昼も、無理。たぶん、その先も」



「シャル……ぼくは、きみの気に障るようなことでも」

「だって、おかしいだろう。学年が違うのに会うなんてさ。僕らはもう、上級生と下級生なんだ。接触する理由が、ないじゃないか」

「なに言ってるんだよ。学年なんて、ただの枠組みじゃないか。ぼくたちが親友であることには変わりない。親友だからこそ、どんな立場になっても気兼ねなく」

「そういうエーベルはどうなのさ。はなから10学年までのつき合いしか考えてなかったんだろ。来年の1月に神学校へ移るだなんて話、僕は全然知らなかった」



 胸が張りつめた。心が冷えていく。さきほどの高揚感が嘘みたいだった。

 手の力が抜け、ノートが落ちる。喉がつまって声がかすれた。

「誰が、それを……」

 

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