表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アネモネが華やかに舞いましょう  作者: komado(六種銘菓BOOKS)
アネモネが軽やかに舞いましょう
43/60

・【白いご飯に合わせるものは?】

 それはまだロアがこの店にやってくる前のお話。

 白いご飯とお味噌汁。そんな朝ごはんの組み合わせは、この喫茶店でもよく見かけられるものでした。用意したのはマスターです。それはお客様に出すメニューの模索でもありました。コックがまだいないこの店では、マスターが出してくれる簡単なメニューが全てだったのです。

「モーニングをやるとなると、それなりに大変ですからね。出来るとして、せいぜいこのぐらい」

「これぞ朝ごはん、って感じで私は良いと思うの。トーストとゆで卵とコーヒーの朝ごはんも好きだけど、温かいお味噌汁って落ち着くじゃない? そういうひとときが大事なのよね」

「そう言いながら、アネモネ」

 マスターが物を言いたげにしている様子に、アネモネは口を動かしながらもなんだろうと首を傾けます。

「たくあんだけ食べ続けるのは行儀が悪いですよ」

「あら。だって美味しいのだもの……」

 マスターが指さした先、カウンター席に腰掛ける二人の間には、漬物皿が用意されていました。その上にあった、黄色のたくあん。白いご飯にもよく合います。ですが二人で食べるはずのものを、アネモネは全部食べてしまったのでした。最後の一枚をパリパリと音を立てながら味わっていました。彼女がお箸を器用に使えるのは、マスターから習った成果です。

「あまーくて、好きよ」

「なら、らっきょうや千枚漬けも好きでしょうね」

「好きだわ! ……きっと」

「きっと、ですか」

「どちらも食べたこと無いの」

 若干ではありますが唖然としているマスターは、アネモネの方を見ることができませんでした。ですが彼女は臆することもなく、じっとマスターの目を見ています。マスターは一口、白いご飯を口に運び、飲み込んでから言いました。

「私が買ってこないからですね? せめて常識として知っておいてほしい」

「じゃあ今度買ってきて頂戴! らっきょうならカレーと一緒に食べてみたいのよ」

「貴女とカレーを食べようと思うと全部甘口になるので、ちょっとばかり抵抗があるんです。ルーの仕入れ自体が手間なのもありますが……」

「じゃあらっきょうだけでも大丈夫だから! ねっ、こうして朝ごはんのお供にすればいいのよ」

「仕方ないですね、今度ですよ今度」

「ええ、楽しみにしているわ!」

 微笑んでからアネモネは、ゆっくりとお味噌汁をすすりました。こんな風に二人のやり取りが穏やかに進むのは、とてもめずらしい出来事なのです。この日のアネモネは上機嫌で後片付けができたようです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ