◯朝ごはんは両手を合わせて
いつも通り、お留守番の喫茶店のカウンター。アネモネの小さな身体を見ながら、ロアはふとした疑問を投げかけます。
「思えば、人形の身体でも飲み食いによるエネルギーは要るものか」
「そりゃそうよ、当たり前だわ。動くためにはきちんと食べないといけないでしょう?」
それはすこしばかり怒ったような返事でした。「悪い」と一言なだめるようにロアは返します。アネモネは胸を張って言います。
「この身体はマスターからの借り物。大事にしなきゃいけないのよ」
「借り物、か」
ロアはレモネードを口にしながら考えます。アネモネの精神を入れ込んでいる人形の身体は、今二人に留守番を託している、この店のマスターが用意したものです。経緯や正体など、ロアにはまだ知らないことも沢山あります。
「いつか返す時が来るのか?」
アネモネに尋ねますが、レモネードのストローを咥えたままの彼女はぽかんとしていました。
「それは、考えたことなかったわ。……けど、まだ返すには早いわね。やりたいこともできていないのだし」
にやりと口角を上げます。
「やりたいこと、か。今は何がしたい?」
「そうね。今なら……あのね、大きな図書館に行きたいの。たくさん勉強しないと夢は叶わないでしょ? 興味のある本はたくさんあるのよ! ロアには、なにかレシピ本を借りてきてあげるわ。そしたらまた色んな美味しいもの、皆で食べれるでしょう?」
「そうだな。なら楽しみにしておこう」
「ふふ、今日のご飯は何がでてくるかしら。私はそっちも楽しみなのよ!」
これは、アネモネやロアの口にしたものの、ちょっとした備忘録です。




