↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕は茶道部部長に弄ばれる  作者: 夜狩仁志
第二章 夏、雨と潮と花火の香り

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/229

第68話 茶道クイズ

遠野先輩の補習2日目の日

「だいぶ、出来るようになったね」

「ありがとうございます」


 2日目の午前。二人だけの和室。

 外からの夏の日差しが障子の薄い紙を通り抜け、畳を明るく照らし出す。

 そんな中、一通りお点前をした後、秋芳(あきよし)部長からお褒めのお言葉を頂戴した。


「基本的なことは出来てるから、あとは忘れないように。あとは、途中で止まったりしないで、流れるように奇麗に出来るようにだね」

「はい、そうですね」


 正直、嬉しかった。ちょっと前までは何にも知らない素人の僕が、人前でお茶を点てられるくらいまで成長したことが。

 また部長に認められたことも、純粋に嬉しい。

 こんだけ教えてもらっておいて、何一つ上達しなかったら、非常に申し訳ないところだ。


「キリがいいから、ちょっと休憩する?」

「そうですね」


 そろそろお昼時だ。お腹もちょうど空いてきたころだ。


「もう少ししたら、遠野さんもやってくると思うし」

「ええ」


「じゃあ……」


 じゃあ……って、なに?


「待ってる間にクイズ、出してみようか?」

「クイズ、ですか?」


 また変なこと言いだしてきたよ、部長が。


「そう。茶道クイズ」


 今までの復習かな?

 まあ、遠野先輩も今頃勉強しているだろうし。

 僕も一度おさらいとして、確認しておくのもわるくはない。


「春山くんもクイズで赤点だったら補習だよ」

「補習?」


「うん。夏休み中、私の家でお勉強会」


 うわっ、それは嫌だ。なんとか回避しなくては!


「準備できた?」

「え? もうですか? あー はい、大丈夫です」


「では第一問。茶道で代表的な流派が三つあります。三千家といわれてるけど、その三つはなんていうでしょう?」

「え? 流派?」


 いきなり難問じゃないの? 前に教わったような気もするけど……


 ……というか、意外と真面目な問題だった。


「私たちがお稽古してるのは、何千家かな?」

「え―― 裏千家(うらせんけ)、でしたっけ?」


「うん。裏千家。あと二つ」

「一つは、表千家(おもてせんけ)ですよね。あとは―― 武者小路(むしゃのこうじ)……」


「むしゃの? こうじ?」

「武者小路実篤(むしゃのこうじさねあつ)!」


「さねあつ??」

「あー ちがった。それ、小説家の人だ」


「正解は……」

「あー 待ってください」


 焦らせないで、焦らせないでよ――


「武者小路千家(むしゃこうじせんけ)でした!」

「あ―――」


「はい、残念。春山くん、補習決定」

「ち、ちょっと待ってくださいよ。まだ一問じゃないですか」


「えー どうしようかなー」

「何問か出してからにしてくださいよ」

「そう? じゃあ、続ける?」

「……続けますけど、難しいのはやめてくださいよ」

「うん。そしたら次は……」


 頼みますよ。まだ初心者なんですから、そんな難しいのはやめてください。


「日常生活でも茶道でも、おじぎは大切です。では、茶道でおじぎの仕方、大きく三つあります。なんでしょう?」

「え? ええ?」


 そんなの習ったっけ? いや、教わったような。

 え? え―――?


「……一つも分からないの?」

「ちょっと待ってください。思い出すんで……」


 まずいぞこれは。意外としっかりとした問題だけに、答えられないのは恥ずかしい。


「……えーっと、会釈?」

「ちがうよ」


「敬礼!」

「ちがーう」


「土下座!」

「ぶ―――」


「……ヒント……ください」

「ヒント。それぞれ漢字一文字」


「あっ、『真(しん)』」

「正解。一番深いおじぎだね。残り二つ」


「え―――っと、『草(そう)』でしたっけ?」

「正解。会釈のことだね。残り一つ」


「えーっと、ん―――」

「はい、時間切れ」


「待ってください、部長ー」

「答えは『行(ぎょう)』でしたー」


 ちょっとまってよー


「じゃあ、春山くん、補習だね」

「ちょっと待ってください。いきなりテストは分からないですって。ちゃんと勉強してきますんで、今回は……」


 無理無理、学校でも抜き打ちテストなんてやられたら、全然答えられないよ。


「ん~ じゃあ、すっごく簡単な、春山くんでも分かる問題にするから、それに答えられたら補習は無しね」

「分かりました」


「じゃあ、第1問」

「はい」


「春山くんの好きな食べ物は?」

「僕の……好きな食べ物……………」


 好きな食べ物は……


「……って部長! なんですかこの質問は!?」

「なにが好き? お肉、お魚、お野菜」

「これ、いったい茶道と何の……」

「どれが好きかな?」


 もう、なんなんだよ、急に不真面目になって。


「……別になんでも食べますよ」

「好き嫌い、ないんだ」

「そうですね」

「どちらかというと? お夕飯選ぶとしたら?」


「……肉、ですかね」

「そっかー お肉好きなんだ」

「あの、部長?」

「お肉のどんな料理が好き?」

「え?」

「すき焼きとか、好き?」


 そんな好き好きって言葉、連呼しないでもらいたい。

 こんな二人っきりの和室で……

 質問の内容もおかしいし、お見合いでもしてるのかい、ってなるし……


「ねー なにが好きなの?」

「……生姜焼きとか、野菜炒めとか……」


「生姜焼きに、肉野菜炒めっと……」


 いきなりメモ取りはじめた。

 なんでそんなこと、メモしてるんだろう……?


「あの、これ、いったい何の話です?」

「じゃあ、次、私の好きな物はなんでしょう?」


 聞いてないし……


「…………なんでも好きなんじゃないですか」

「そうだねー なんでも食べるかなー」

「甘いものや、お茶も好きですよね」

「うん!」


 まあ、甘いのとお茶が苦手なら、この部活にはいないよね。


「あっ、でも苦手なものも、あるかも」

「苦手なもの?」


 部長にも苦手な食べ物があるんだ。

 知りたい、ような……知りたくないような……


「さて、私の苦手な食べ物は何でしょう? 三択です」

「はぁ」


「その1、納豆」


 あ、もうこれ納豆なんじゃない?


「その2、鯖」


 さ、さば? いきなりサバが出てきた。でもアレルギーとかあるし。


「その3、椎茸」


 あー いるよね、きのこダメな人。


「さあ、どれでしょうか?」


 え―― 全然分からないよ、そんなの。


「えぇっと、しいたけ、ですか?」


「ブ~ 残念。正解は納豆でした」


 そんなの、分からないってば!


「部長、納豆ダメなんですか?」

「食べれなくはないよ。美味しいよね」

「じゃあ……」

「あのネバネバが……ねぇ……」


 可愛い顔が台無しになるくらい、顔をしかめる部長。


「ネバネバ、ダメなんですか?」

「うん……ネバネバが……」

「なめことか、オクラとかは?」

「大丈夫だよ。でも、納豆のネバネバが……」


 そうなんですね。納豆ネバネバ、ダメなんですね。


「だから、私のそばで、納豆食べて話しかけないでね」

「きっと一生そんな状況には、ならないと思いますよ」

「もう、納豆食べた後でキスとかしないでね! 絶対、嫌だからね!」

「いや、キスなんてしないですし、そんなシチュエーション起きないですから、心配しないでください」


 ……あれ? なんの話、してたんだっけ?


「納豆ふりかけは、美味しいのになー」

「部長、真面目にやってくださいよ」

「えっ?」


 こんな問題に答えられなくて、部長宅で補習なんてヤダよ。

 っていうか、その補習だって、こんなことズーっとやらされるかもしれないし。


「じゃあ、次の問題」

「ちゃんとしてくださいね」


「春山くんが夏祭りに行きました……」

「ちょっと! 部長!」


「そこで金魚すくいをしました……」

「も――」


「春山くんは何匹の金魚を逃がして、何匹の金魚をすくいましたか?」

「これ……なんなんですか?」


 いったいこの質問になんの意味があるというのだ。

 最初の茶道の話は、どこ行っちゃったんだよ。


「ねぇねぇ、何匹すくって、何匹逃げられちゃったの?」

「そんなこと、聞かれましても……」


 金魚すくいって、難しいんだよなー

 成功したこと一回もないよ。

 そうだな……3,4匹逃げられて、紙が破けちゃうよね。

 でも、1匹は捕まえたいなー


「ねぇねぇ、何匹?」

「あ―― 3匹逃げられて、1匹捕まえられた、かな」

「そっかー そうなんだー」


 僕の回答を聞いた部長は、上機嫌で口を両手で隠しながらニヤニヤしてる。


 気持ち悪いなー


「なんですか? なんなんですか!?」


「これは、心理クイズでした」

「ええ」


「逃がした金魚の数は、春山くんのことが好きな人の数です」

「……はあ?」


「で、すくった金魚の数は、春山くんが好きな人の数です!」

「な、なに言ってるんですか!」


「そっかー 春山くんのことが好きな人3人いるんだー」

「こんな質問で、そんなこと、分かるはずないじゃないですか!!」

「じゃあ、好きな人は? 1人いるの?」

「……いませんよ、そんな人」


「ねえ本当に? いないの? 1人も?」


 なんでそんなに詰め寄って……問い詰めてくるんだ。

 くっそ、納豆持ってくればよかった。


「でも、3人も春山くんのこと好きな人いるみたいだよ?」

「そんなの……単なる遊びの心理クイズで、なにが分かるって言うんですか?」


「春山くんが感じてるかどうかだよ。近くにいて気がつかないの? 春山くんのこと、好きそうな人?」

「あー も――― 知らないですってば!」


 こんな僕のことを好きになってくれる人なんて、いるわけないじゃないか。

 こんな平凡で、何の取り柄もない僕なんかが。


「でも、春山くん……」

「……なんですか?」


「好きな食べ物って、飽きないよね?」

「……まあ、そうですけど」


「じゃあ、好きな人って、一緒にいても飽きない人のことかな?」

「……」


 そんなこと聞かれても……


 奇麗な顔をこっちに向けながら、


 一緒にいても飽きない人とか、いきなり言われても……


 僕は、なんだか理由も分からず恥ずかしくなって、


 しばらく無言で座っていることしかできなかった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


作中の心理クイズ、どこかのサイトの参考にしましたが、どこからだったか、失念してしまいました……

まぁ、こんなクイズで人の心なんて、そう簡単に分からないですけどね。

ましてや秋芳部長の考えなんて、よく分からないですよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。