7話 3日目にして最強装備
第7話です。小説家になろうデビュー初の星評価頂きました。(ノクターンは別で) オッさん嬉しい。
夜が明けた。
山裾から溢れ出した光によって、世界が彩られて行く中、チームイチローの出撃準備が進む。
寝起きにミリアさんが掛けてくれた「リフレッシュ」
の魔法のお陰で昨晩殆ど寝ていないにも関わらず、きっちり8時間寝た後の様な身体のキレだった。
大事な戦いの前に夜更かしなんてけしからん話以外の何物でも無いのだが…… 実は夕食後に再び姫達が訪ねて来てくれてそのまま夜のトレーニングと相なったのだった。
姫達はジョブに目覚めて強力な力を得たとは言え、その後の実戦が魔物の大軍勢相手に人類の命運を分ける大一番なのだ。うら若き乙女……(いやもう乙女じゃないか。)には俺も居るにしても余りにもデカいプレッシャーと恐怖だったのだろう。
強力な力を持っていても明日の戦いで命を落とすかもしれない。俺自身もそんな不安もあった中で訪ねて来てくれた姫達に
「皆さんも王都も俺が護ります。大丈夫です。心配いりませんよ。」
と軽口を叩いた。何の根拠も無い虚勢だが、姫達は少し気持ちが落ち着いた様で…… そしてその後、朝まで絆を深めあったのだった。
1人残された部屋で俺自身も出陣の準備を進める。召喚直後だった事もあり、ワイシャツにジーンズと言うコンビニへ買い物に行く様なスタイルで戦闘していたが、流石に防御力が無さ過ぎた。
なのでマジックポーチ内にあった魔物素材で作られた黒いシャツとカーゴパンツ風のズボンに着替えた。この黒い上下装備、薄くて動きやすい作りでありながら、防御魔法の効果があり金属の鎧よりも防御力が高いらしい。
服を着替え終わり、コレまた黒っぽいブーツを履いた。
当然このブーツもだだのブーツでは無い。俊敏さアップの効能の付いたマジックアイテムだ。
続いて短剣付きのマジックポーチのベルトを装備し、新たに金属製の装甲の付いたベストを着込む。マジックポーチは言わずもながらベストの方も魔法防御、物理防御の付いたマジックアイテムだ。しかも何の素材を使っているのか分からないがとんでも無く軽かった。そして非常に動きやすい。
戦闘スタイルが「野球」と言うふざけた仕様の俺にとっては動き易さが最重要ファクターになるが、身につけた装備はどれもこれ以上無いレベルのレアアイテム群だった。
どうやらこのマジックポーチの持ち主だった魔族はかなりの上官だった様で、侵攻して討ち滅ぼした国々の国宝や王家に伝わる逸品を収集していた様なのだ。
姫達の各ジョブに適した装備も俺の新装備も「敏腕マネージャー」さんが練りに練ってチョイスしてくれたアイテム群なのだが…… この世界が平穏無事だったならば絶対に揃う事の無いアセンで構成されている。人の反抗力を削ぐ為に各国から接収した超レア武具、防具が1箇所に集めてあったが為、皮肉な事に我らチームイチローの最強装備群となってしまったのだった。
仕上げにコレまた黒く薄手のグローブを装備した。当然ながらこのグローブも腕力強化、防御力強化の付いた超レア物だ。ピッチングモードだと邪魔になるがグローブ、硬球召喚を行ったら自動的に何処かへと消え、召喚を解除したら何事も無かった様に手に装備されていた。実に至れり尽せりである。
『イチロー様、良くお似合いです。何より防御力が初期状態の10000倍になっております…この防御力なら私も多少、安心出来そうです。』
「敏腕マネージャー」さんから新コスチュームにコメントを頂きました。まあ確かに防御力ほぼゼロのあの格好では…… 御心配お掛け致しました。
さあ、ぼちぼち出発の時間が近い。俺は姫達と合理するべく部屋を出た。
遺跡神殿の部屋から外へ出て、ドーラのいる馬房へと向かう。既にドーラは外へと出ており、俺の姿を見つけると
ブンブンと尻尾を振っていた。近づいて声を掛けて頭を撫でると頭の中にドーラの声が聞こえる。
「おはよう!ドーラ、今日はよろしく頼むぞ。」
『任せといてイチロー!!』
ドーラとスキンシップしているとマリナ姫、エルメラさん、ミリアさんがやって来た。
「皆さんおはようございます。」
「イチローさん、お待たせ致しました。まあ!新しい衣装、良くお似合いですね。」
「おお、イチロー殿、新装備、似合っておられる。しかもかなりの防御力だな。」
「イチロー様、カッコいいです。素敵」
3人の美女から新装備を褒められた。悪役ばりに黒尽くめだが、見た目多少は勇者ぽくなったのだろうか。
姫達がドーラに挨拶している。俺との絆を通してドーラと念話が出来る様になったみたいだ。ドーラも仲良くなったのか三人から頭を撫でられている。
『イチロー様、そろそろ出発の時間です』
「敏腕マネージャー」さんから出発時間になったと告げられた。
「マリナ姫、エルメラさん、ミリアさん…… 行きましょう。王都を救いに!」
「「「 はい!」」」
俺達チームイチローは勇者召喚部隊の皆さんの声援を背に、ドーラに乗って王都グランレイアへ向かって飛び立った。
レイリア王国 王都グランレイアを守る城壁の上、国王
ゼラルク リム レイリアは彼方より迫り来る悪夢の軍勢を見つめていた。かつては勇猛で鳴らした武闘王らしくその体は40代半ばながら鍛え上げられている。
「陛下、ここは危険です。王宮へお戻り下さい。」
「ここを抜かれれば王都は終わりだ。王宮に居ようが何処に居ようが同じ事よ。王都の民達はもはや逃げる事もできぬ。それに王たる我が民の後ろに隠れて何とする。ここで敵を迎え撃ち、討ち破るまでよ。」
避難を進言して来た第一王子に対してゼラルクは強気でそう返したが……
実際には絶望的な状況だ。永きに渡り小競り合いを繰り返して来たロンギア帝国と連合し、半年前、中央平原で魔王軍とぶつかった。帝国、王国共に多大な犠牲者を払って何とか魔王軍を退けたあの日の闘いより、眼前に迫り来る魔王軍は数が多い。
籠城戦になるだろう。騎士や兵士達の手間、強気な発言をしては見た物の……ゼラルク自身、勝てる戦では無いと分かっている。城壁を抜かれて内へ敵が雪崩れ込めば最後、王都内の民は蹂躙される。
この数週間で王都グランレイアは包囲されていた。日に日に増える魔王の軍勢の目撃情報。先の大戦で疲弊した王国はその段階でも撃退するだけの力は無く、逃げ道さえも失って籠の鳥の様にこの王都へと閉じ込められていた。
これまでに攻め滅ぼされた国の様子を聞いた。魔王軍は敵国の民を捕虜や奴隷とせず、皆殺しにしていた。
人の行う戦とは違う。奴等の望みは人と言う種の殲滅。そして敗れ続けた我々は最早抗うだけの力も無い。
ゼラルクは第一王女マリナールの事を考えた。神の啓示を受け勇者召喚の遺跡神殿へと向かった我が娘。この世を救える救世主が現れてくれるならばと一縷の望みを託したが……
恐らくは上手く行かなかったのだろう。だが不幸中の幸いなのか…… 包囲されて逃げ出す事も叶わないこの王都から離れているならば生き延びる可能性もあるだろう。
願わくばもう一度会いたかったが……
蠢く魔獣の群れから雄叫びが上がり始めた。どうやらいよいよ始まる様だ。
王自らら最前線に立ち指揮を取る。ここに止まれば城壁が堕ちる時には命を落とす事になるだろう。だが、一匹でも多く倒し、少しでも長く守れば…… 我が民もあの世で許してくれるだろうか?
勝てぬと分かっていても戦うしかないのだ。配下の将軍達に兵士達に激を飛ばそうとしたその時、爆音と共に空を切り裂いてそれは現れた……
突如現れた蒼き飛竜は王都の上で旋回し速度を落としていく。そして……ゼラルク以下全ての人の頭の中に声が響いた。
『皆様に対戦相手の変更をお知らせ致します。レイリア王国防衛軍に代わりまして「4番 ピッチャー 勇者」
「4番 ピッチャー 勇者」』
ゼラルクは目を、耳を疑った。 舞い降りてくる蒼き飛竜には人が乗っている。そして先程頭の中に聞こえた声は
…… 4番 ピッチャーとは何か分からないが……勇者だと言っていた。
ゼラルクは思わず呟いた。
「我々を…… 救ってくれるのか?」
超音速本気飛行から減速し、王都上空で前回するドーラ。見渡せは黒く蠢く軍勢が王都に向かって来ている。予定時刻にはまだ早い筈だが…… どうやらギリギリ間に合った様だ。
『イチロー様、レイリア王国側からの攻撃を防ぐ為、スキル「ウグイス嬢のアナウンス」の使用許可をお願い致します。』
「敏腕マネージャー」さんのコメントに、そういえばそんなスキルあったなぁ……と思いつつ許可を出した。すると……
『皆様に対戦相手の変更をお知らせ致します。レイリア王国防衛軍に、代わりまして「4番 ピッチャー 勇者」
「4番 ピッチャー 勇者」』
野球の試合さながらウグイス嬢のアナウンスが入った。「敏腕マネージャー」さんから提案されたとはいえ、自ら名乗った「4番 ピッチャー 勇者」の肩書きが、正直悶絶する程恥ずかしい。だがアナウンスを放った直後、迫って来る魔王の軍勢の進撃が止まった。
『「通訳無用」を併用して魔王軍にもアナウンスを行いました。知性ある魔物や魔族には多少なりとも混乱を誘えるでしょう。
あ、進軍が止まりましたね。チャンスです。先制攻撃で敵を減らしましょう。イチロー様、攻撃の御許可を。』
流石、我らが軍師「敏腕マネージャー」さん。やる事に抜かりが無い。俺はすぐさま指示を出した。
「よし、先制攻撃で行きましょう。」
『了解致しました。ではドーラさん、開幕の狼煙になる派手な一撃をお願いします。』
『はーい!そんじゃ敏腕さんに教わったアレ、行っちゃうよ〜!」
『どうぞ、全力でやっちゃって下さい。」
え?「敏腕マネージャー」さんから教わった? ドーラの潜在能力も未知数だが…… マネージャーから何を教えられたのか、どう考えても悪い予感しかしないのだが?
『いくよー! 「プロトン・ブレイザー」!!』
ホバリングしたドーラが口を開くと赤い粒子が収束していく。そしてドーラが首を振ると口から放たれた赤いビームが魔王軍を薙ぎ払い、一呼吸おいて帯状に大爆発を起こした。
俺も姫達もその光景に唖然となっていた。ああっ、コレは……
ナ○シカやん……
『イチロー様の世界の記憶の中にあった「強力な攻撃」のイメージから魔力豊富なドーラさん仕様にアレンジ致しました。』
姿は見えないが、実体があったら凄いドヤ顔してるんだろうな〜と思わせる声のトーンでマネージャーさんが俺の脳内ツッコミに応えてくれた。
「これ、私達も必要ないのでは……、?」
少し遠い目をしたミリアさんがそう呟いた。姫とエルメラさんも無言で頷く。確かに。
昨日の姫達何の訓練を見ていて、俺要らないんじゃね?とそう思ったが……ドーラの放った開幕の一撃はそれ以上のインパクトだった。
『いえ、ここからが本当の戦いです。大型魔獣の戦闘師団と巨人系魔物の攻城戦部隊が出て来ます。マリナ姫、エルメラ殿、ミリア嬢で対処を。』
「俺は?」
『それなりに敵を殲滅すれば、敵軍の司令官、魔王軍四天王 豪将軍 ゲパルト ザム バルバロイが出て来ると予想されます。四天王は邪神の加護持ちですので、召喚者のイチロー様にしか倒せません。最終決戦まで力の温存を。』
なるほど、段階を踏んだ役割分担な訳か。それにしても敵軍の的確な情報はどうやって収集したのだろうか?
ふとそう思うとマネージャーから回答があった。
『こちらの世界を管理する女神にコンタクトを取りました。かなり困っていた様子で魔王軍の的確な内情など、重要情報の提供を受けております。
後、イチロー様宛てに「宜しく頼みます。」とのメッセージを賜っております。』
チート…… 余りにもチートな情報提供者の名前に俺は苦笑いを浮かべるのだった。
今回も読んで頂きありがとうございます。面白い、読んだ事無い様なストーリーをと頑張って書いております。
面白かった、先が気になる、と思って頂けたら、ブクマ、星評価、感想お願いいたします。おっさんの励みになりますので。
次回予告!!
2度目のタイトル回収、ドーラの必殺技に続き、戦場に舞い降りたチームイチローの戦女神達。主人公出番無しのまま、人類の未来を賭けた戦いが始まる。
次回 第8話 「チームイチロー 少数精鋭のススメ」
で宜しくどうぞ。




