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「4番、ピッチャー、勇者」  作者: イベリコ・ザ・ブッチャー


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第6話 戦略兵器と化す勇者パーティ

驚愕する姫達三人に「敏腕マネージャー」さんからナビが入る。マネージャーさんの会話は当然ながら俺にも聞こえている。


『早速ですが、貴女方の得た力を確認したいと思います。

私が発した言葉を復唱してください。』


 三人が頷く。


『それでは…… 「ステータスオープン」』


「「「ステータスオープン」」」


 美女三人の声がハモった。そして更なる驚愕の表情に変わる。


「ひ、姫様❕ な、何か出ました!!」


「わ、私も出た…… な、何だコレは?」


「私も出ましたわ…… コレは一体?」


『それが貴女方の様々な能力を数値や文字化した「ステータス」と呼ばれる情報です。』


ふ〜ん、姫達のステータスは数値で出てるんだ。俺の身体能力ステータスは◎とか◯だったけどな……


 そんな事を思い出したら野球の神を一発殴ってやりたい気持ちで一杯になったが……まあ今更であり、初戦を乗り切れた事もあって感謝しているっちゃあ感謝してる訳で。


『名前の後に新たなジョブがあるはずです。マリナール姫、何と書かれていますか?』


『はい精霊様、私.「大魔導士」のジョブを授かりました。」


 「敏腕マネージャー」さんの問いにマリナ姫が答えた。おおおっ、姫は大魔導士か。凄い魔法とか使えちゃうんだろうな〜。 


『では、エルメラ殿は?』


「はっ、私めは「剣聖」を授かりましてございます。精霊様。」


 エルメラさんは剣聖か、近衛騎士だし、ピッタリのジョブだな。


『続いて、ミリアリア嬢は何を授かりましたか?』


「はい。私は大賢者を頂きました。」


 ミリアさんは大賢者か。回復魔法で癒してくれたりしちゃうんでしょうか?ワクワクです。そんな事を考えていると「敏腕マネージャー」から解説が入る。


『貴女方が得たジョブはどれもイチロー様の勇者パーティに所属するに相応しい超レアジョブです。ですがまだジョブを得ただけに過ぎません。

 

 貴女方にはこの後、実戦可能レベルまで一気に成長して頂きます。』


三人は突然の提案に困惑顔だ。もう一つ付け加えるなら俺も困惑している。勇者パーティ!?初耳なんですが?そんな俺の思いなど関係なく「敏腕マネージャー」さんの言葉は続く。


『急を要する理由を今から説明致します。イチロー様、先程の命令書を。』


 え、あっ、このタイミングで出すんですね。マネージャーさんからの突然の指示にあたふたしながらマジックポーチから魔族軍の命令書を取り出してマリナ姫に見せた。


「こ、これは!?魔族軍の作戦司令書!? イチローさん、何処でこんな重要機密を?」


 マリナ姫に問われ、ドーラに乗せて貰って昨日倒した魔族の指揮官の遺体を調査して来た事を告げる。


「なるほど、流石、勇者様です。」


 エルメラさんから褒められた。その横でミリアさんがうんうんと頷いている。だがマリナ姫は手にした作戦司令書を凝視したまま小刻みに震えている。


「そんな…… 王都が…… 魔族の大軍勢に攻め込まれようとしているなんて…… 」


 今にも泣き出しそうな顔の姫。エルメラさんもミリアさんも悲痛な表情をしていた。俺は何か異変を感じて姫に問いかける。


「マリナ姫、そこに書かれている日付は今日より何日後なのですか?」


 司令書は読んだが異世界転移二日目、延べ滞在時間にしてまだ35時間程度の俺にはこの世界のカレンダーなんて全く持って理解出来ていない。


 俺の問いにマリナ姫は涙を流し絶望した顔で答えてくれた。


「明日の正午です……」


 俺はその答えに絶句した。


「そんな……イチローさんの協力を得て、私達も戦う力を授かったというのに…… 敵の総攻撃に間に合わないなんて……」


 マリナ姫は打ちひしがれた様に顔を伏せている。王都への帰還を準備をしていた騎士さんに聞いた話では、今いる遺跡神殿からレイリア王国、王都グランレイアまで馬車で4日、早馬でも2日かかる距離があるのだ。


「今のレイリア王国軍では……」


エルメラさんはそこまで言って口籠る。


「姫様……」


 ミリアさんは姫の傍で寄り添っている。魔族軍の総攻撃で王都はどうなるかミリアさんも分かっているのだろう。

マリナ姫へ掛ける言葉が見つからない様だ。


 ファンタジー世界にはよく転移魔法なんて都合のいい物は無いらしい。だが、この野球の勇者タナカ イチローにはまだ策がある。しかし…それを提案するとなると、俺は魔族の大軍勢と戦う事になる……


 やれるのか……?俺は……?


「父上、母上……兄上……」


泣きながら家族を心配する姫を見て俺は……

 

 覚悟が決まった。





「マリナ姫、諦めるのはまだ早いです。開戦する迄に王都へ辿り着く方法は有ります。俺が行きますよ。」


『イチロー様の仰る通りです。まだ諦める必要は有りません。ですが到着後の戦闘での勝利の為にはイチロー様だけでなく貴女方の力が不可欠です。』


「イチローさん…精霊様。それは、それはどんな方法なのでしょうか!? 私の力が必要ならば私は何でも致しまします。」


 涙を拭い、立ち上がって俺を見つめる姫の瞳には強い決意が浮かんでいた。


『良いでしょう。まずは王都迄の移動手段から説明致します。その後、出発時刻から逆算した時間の中で、貴女方のジョブのトレーニングを行い、即戦力として成長して頂きましょう。』


「敏腕マネージャー」さんの言葉にマリナ姫、エルメラさん、ミリアさんが力強く頷く。


 そして作戦会議が始まった。



『王都への移動はドーラさんの本気飛行を使います。 

ドーラさん、聞こえますか?』


『 ん?あっ。敏腕さん?どしたの?』


「ド、ドーラさんって、あの飛竜の……?」


『そうだよ〜 この声は…… 姫様でしょ?」


「あっ、はい、そうです。宜しくお願いします。」


 マリナ姫は頭の中に聞こえるドーラの声に話しかけていた。


『ドーラさん、地形のイメージを送ります。このバツ印から王都迄、イチロー様と女性三人を乗せて、本気で飛んだらどれくらいの時間が掛かりますか?』


俺の頭の中にも何だかゲーム風のマップが思い浮かぶ。

成程、ここと王都の位置関係はこんな感じなのか。しかしいつの間にこの世界の地図を?


『スキル設定時に野球の神より異世界攻略の基本データとして提供されております。』


「敏腕マネージャー」さんが俺の思考を読んで答えてくれた。


『う〜ん…… 大体、2刻ぐらいかな?』


 ドーラから答えが返ってきた。2刻…… 地球時間でどれぐらいなのだろう?


『分かりました。ドーラさんありがとうございます。明日、本気飛行をお願いする事になります。体調管理、宜しくお願いします。』


『は〜い! 任せて!!』


『先程の件、ドーラさんの本気飛行なら2刻、イチロー様の地球単位で80分程で王都へ到達できます。開戦前に王都へ乗り込んでチームイチロー4名とドーラさんで魔族軍を撃破します。』


 「敏腕マネージャー」の撃破の言葉に姫たち3名が動揺していた。


「精霊様、イチロー殿はともかく、我々では足手纏いにしか……」


 エルメラさんが悔しそうな顔で言う。


『確かに今のままではそうでしょう。ですからこの後、私がレクチャーを行い。一気に超戦力へと成長して頂きますので心配は無用です。』


「敏腕マネージャー」さんの言葉に3人が頷く。


 この時、「敏腕マネージャー」さんの言う「超戦力」が、どれ程のレベルなのか?全く分かっていなかった事を……俺はこの後思い知らされる。




 


 姫たちと軽く昼食を取ってからドーラに乗る練習も兼ねて遺跡神殿から少し離れた場所へとやって来ていた。

ドーラの首輪に魔族用の二人乗り用の鞍も収納されておりそれを使って4人でドーラに騎乗しての移動だった。

 魔族用の二人乗りの鞍に2名ずつの搭乗は全くもって余裕だったが誰が俺と乗るかで姫達が揉めたが、行きはミリアさん、帰りはエルメラさん。明日の本番はマリナ姫と決まった。


 余談ではあるが…… 手綱を握る俺の背中にミリアさんが抱きつく形の騎乗姿勢によって、俺の背中は実に幸せな時間だったとだけ言っておこう。




 ドーラに乗せてもらい到着した場所は荒地ではあったが、広く平らな地面の広がる場所だった。


『時間がありませんので、早速始めさせて頂きます。

まずは的を用意しましょう。


 ミリア嬢、地属性魔法で壁をお願いします。』


「は、はいっ! でもやり方が……」


『今より貴女に壁魔法のイメージを送信しますので、それを再現するイメージで魔法名を唱えれば壁魔法が発動します。』


「分かりました!お願い致します!」


 ミリアさんは目を閉じて、集中している。いやこの人、本当可愛いな。改めてそう思うには理由がある。全員出発前に「敏腕マネージャー」さんがチョイスしたマジックポーチ内アイテム群に装備を変更していたからだ。


 ミリアさんの得たジョブは大賢者、彼女に合わせて選ばれた装備はミニスカートのキャミソールワンピースに薄い水色のローブ。手には長めの杖を持っていた。


 ミリアさんのルックス、スタイルの良さと相まって某国民的人気RPGから抜け出して来たかの様なビジュアルになっている。ただ、胸元の露出が凄すぎて、正直エロい。

エロ過ぎる。


 ミリアさんだけでなくマリナ姫、エルメラさんの衣装も一新されている。マリナ姫は紫のタイトなロングスカートワンピースに黒のロープ。ウエストをベルトで絞っているが腰までガッツリとスリットが入っていた。杖は持っておらず両腕に着けた魔力を増幅する金の腕輪を装備していた。


 エルメラさんはいわゆるビキニアーマーと言うやつだ。

ツヤのある赤にゴールドの縁取りの入ったメタルの胸のカップと肩アーマー、腰回りにプレートの付いたビキニパンツという刺激の強いスタイルになっていた。手にする剣は「真滅魔剣 エグゾーラ」 真っ先に壊滅させられたゴルドナ王国の国宝だった魔剣だ。


 因みににエルメラさん、防御力大丈夫?と思ったらビキニアーマーの特殊効果で素肌露出している部分もちゃんと防御出来るらしかった。


 後、マリナ姫のタイトワンピースの腰まで入ったスリットだが、どう見ても履いて無い様にしが見えないのでまさかと思っていたのだが……

 俺の視線に気付いたのか、顔を赤らめたマリナ姫はわざわざスカートを捲り上げて


「ち、ちゃんとはいてますからね。」


と、インナーの白い超ハイレグレオタードを見せてくれたのだが…… 食い込んだレオタードはエッチ過ぎて眼福だった。 マリナ姫はお淑やかそうに見えるが、結構大胆な性格の様である。


 と、ミリアさんへのイメージ伝達が終わった様だ。目を閉じて精神統一するとくわっ!と目を開き杖を掲げて叫ぶ

 

「行きます!! 城壁魔法、アースウォール!!」


 掲げた杖で地面を突いた。すると地面を魔力の光が迸り(ほとばしり)前方に厚さ10m程の壁となって迫り上がって行く。厚みもおかしいレベルだがそれ以上に横幅がメチャクチャだった。今居る場所辺りを中心に両側の端が見えないのだ。見た感じ全長一キロほどあるんじゃないだろうか?


 それがグングンと迫り上がっていく。出現した土の壁は高さ20m程で成長を停止した。


『ミリアリア嬢、お見事です。「城壁魔法アースウォール」発動レベルEX 魔力消費量15% 既に実戦投入可能と言えるでしょう。』


「は、ははっ、わ、私が?こ、コレを?」


 「敏腕マネージャー」さんの冷静な分析と裏腹に、魔法を放ったミリアさんが出現した土の壁を見て軽く放心している。いやミリアさんだけでなく、姫もエルメラさんも、そして俺も唖然としていた。


 大賢者のレアジョブを得ているとはゆえ……こんな簡単に極大レベルの魔法を使えるモノなのか?


『この世界の魔法は如何に結果をイメージ出来るかが鍵となります。ですのでこちらで創ったイメージ画像を見ながら魔法を発動させればレアジョブの補正もあって、極大魔法レベルでも発動するのです。』


 俺の思考を読んだマネージャーさんが疑問に答えてくれた。俺の視界の中にウインドウがポップアップし戦隊特撮風の音楽に乗ってミリアさんがアースウォールで巨大な壁を作り出す映像が流れていた。派手なエフェクトと効果音まで付いている。


 なる程……ここ迄映像化されると確かにイメージしやすい。そう思った俺は何となく…… いや無理やりだが納得した事にする。


 四人で歩いて壁から離れた。それにしてもミリアさんの創った壁は余りにもデカい。


『的が出来た事ですし時間が無いので、マリナール姫、エルメラ殿、イメージを送信致しますのであの壁に向かってそのイメージを放って下さい。』


 「「はい!!」」


 暫く目を閉じて集中していた二人だったが行けると感じたのかクワっと目を見開き、マリナ姫は魔法をエルメラさんは剣技を繰り出した。


「地獄の業火よ、我が敵を焼き払え!!

 インフェルノナパーム!!」


「我が剣に切れぬ物無し!!

 剣聖奥義!! 斬バスター!!」



 かなり厨二な呪文詠唱は置いといて、マリナ姫は腰溜めの両手から強烈な爆裂魔法を、エルメラさんは上段に構えた魔剣を振り下ろして真空斬撃を放った。


 爆裂魔法は土の壁50m程を木っ端微塵に吹き飛ばし、真空斬撃は10mの厚みの土の壁に1mほどの貫通した切れ目を入れていた。


「で、出来た……」


「やった。やりました!!」


エルメラさんとマリナ姫は感極まった声が出ていた。


 凄い、凄過ぎる。訓練始まって僅かでコレなら今日の訓練終わったらどんな超戦士が誕生するのか?と言うか、

コレはかなりのチートじゃね?もう俺要らないんでは?


 一瞬そんな風に思った俺の思考に「敏腕マネージャー」さんがすかさずツッコむ。


『確かに相当チートですが、許容範囲内かと。それにチート具合で比べるならばイチロー様の方が圧倒的にチートと言えます。貴方がいなければ彼女達はこんな力を得る事は無かったのですから。』


 そんな風に言われたら返す言葉も無い。彼女達の強化の原因は……まあ確かに俺に有るのだし。


「でも出番なんて.ないんじゃないの?」


『有ります。必ずイチロー様で無いと駄目な場面が。』


 「敏腕マネージャー」さんに断言されてしまった。そこまで言われると……


「そんじゃ、俺も負けられないからトレーニングしますかね。」


 先ずはグローブと硬球を召喚し、姫たちから少し離れるとブルペンでの投球練習宜しく壁に向かってフルパワーて投げ込みを開始する。


 ボールが指先を離れる瞬間に、ドゴンと音が鳴り衝撃波となって土の壁が吹き飛ぶ。マリナ姫の魔法より広範囲が抉り取ったかの様に消失していた。


 それを見ていた姫達から感嘆の声が上がる。


「す、凄い……流石勇者殿。」


「イチローさん、凄過ぎです。」


「イチロー様、素敵♡」


 日本男児、田中一郎、女の子には負けていられませんから。



 その後、何度も土の壁を御代わりし日没まで特訓は続いた。様々な魔法や技を習得し、最後に姫達との三体一の模擬戦を行ったが……


『蘇生、回復魔法もありますので、姫様チームはイチロー様を倒すつもりで模擬戦を行う様に。イチロー様は手加減お願い致します』


 なんて「敏腕マネージャー」さんが言うから、手加減どころか、何度か死にそうになった俺なのであった……











 今回も読んで頂きありがとうございます。面白い、読んだ事無い様なストーリーをと頑張って書いております。


 面白かった、先が気になる、と思って頂けたら、ブクマ、星評価、感想お願いいたします。おっさんの励みになりますので。


次回予告!!


装備を一新し、圧倒的な力を手に入れた姫達を率いてチームイチローが出陣する。そして悪夢の大軍勢が押し寄せる中、王都にアナウンスが響き渡る!?


次回 第7話  「3日目にして最強装備」

で宜しくどうぞ。

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