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「4番、ピッチャー、勇者」  作者: イベリコ・ザ・ブッチャー


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3/14

第3話 ファンタジーVS野球

予定通り本日投稿3話目です。明日から一日1話で投稿します。

 女騎士さんに姫を任せて部屋から出た。カッコ付けて出て来たものの、外へのルートが分からずに迷子になったらどうしよう?と内心、思ってたのだが通路は一本道で突き当たりに明かりが見えていた。


 明かりに向かって少し進むと倒れている兵士の集団を発見した。オークジェネラルにやられた警備兵の人達だろうか?結構無惨なやられ方だったが……「平常心」のお陰なのだろう。俺はパニックになる事も無く手を合わせて一礼し、「ありがとう。仇は討った。安らかに眠ってくれ。」

 そう祈り、出口へと向かう。



 出口に近づくと金属同士が打ち合う音が聞こえて来る。

外へ飛び出すと護衛の騎士や兵士が魔物の軍勢と戦いを繰り広げていた。


 目の前で正に止めを振り下ろさんとするオークに走り寄り、バッティングをぶち込む。「パワーヒッター」が発動し、吹き飛んだオークが他のオークを巻き込んで地面に転がるが、乱戦状態なのだ。敵の生死を確認する暇が無い。


「ブッ飛ばしたが、まだ生きてるかもしれない。止めを頼みます。」


「わ、分かった!!」


 危機一髪だった兵士にそう告げて俺は次のターゲットへと向かう。



 3度のバッティングで10体程のオークを倒した時、背後に強い殺気を感じ振り返ると、全てがスローになった世界の中でもそれなりのスピードで弓矢が迫って来ていた。

 矢の来た先を見るとオークアーチャが居る。


 何故だろうか?何となくだが出来ると感じた。流れる様な打撃フォームで矢に向かってバッティングを放つ。


『「ピッチャー返し」発動!!』


「敏腕マネージャー」のアナウンスが入り、打ち返した矢はオークアーチャーの眉間に突き刺さっていた。


 危なかった。殺気で気付いたから良かったが……


『選手力レベルアップ!!レベル19からレベル20へ

 「牽制球感知」獲得、パッシブ発動中!』


「牽制球感知?」


『イチロー様に殺意を持って飛来する物体を、全方位、早い段階で感知、感知と同時に「選球眼」「盗塁王」が発動、危機回避状態を展開します。』




 「敏腕マネージャー」さんから内容説明のナビが入った。なるほど……いかにも 野球用語っぽいが、中身はバリバリに有用なスキルだ。ついさっき飛び道具による狙撃を心配した途端に問題が解決された。


「至れり尽くせりだな。」


俺はニヤリと笑うと次の敵に向かう。




 俺が参戦した途端、勝敗の天秤は人間側へと急激に傾き始めた様だ。


 前線のオークは数が減り、兵士や騎士が一体のオークにニ、三人で相手取る展開になっていた。


 と、その時、「牽制球感知」に反応が出た。召喚された遺跡?の石畳よりかなり離れた場所に反応がある。そこには蒼い大きな飛竜に跨った豪華な黒いローブ姿の男と魔導士と思しきローブにワンドを持った6人の人影があった。

 そしてそれぞれ6人の前に赤い魔法陣が展開されて行く。


 あっ!?ヤバい? 魔法来るんじゃね?


 そう感じた次の瞬間、6つの魔法陣からバスケットボールぐらいの火球が次々と打ち出された。


 「ピッチャー返し」で打ち返せるか? そう考えた所でナビが入る


「対象の火球は衝撃を与えると爆散する可能性があり「ピッチャー返し」は非推奨。「素振り」「フルスイング」の相乗効果での対応を推奨します。』


なるほど…… と言うか、「敏腕マネージャー」さんさ?今俺の思考読んで対応してくれたよね?」


「………… 」


いやいやいや、怒ってない、怒ってないからね?、

本当助かってますから、今後とも宜しくお願いしますよ?


「試合(戦闘)モード中はイチロー様の安全性を高める為、スキルクリエイターより思念伝達の許可を頂いておりますので…… ご了承下さい。」


 スキルクリエイター…… ああ、神のおっさんの事か。

神さまから許可されてたら文句言えないし、俺の安全を考えてくれての事なんだろな。


『仰る通りだと推測します。時にイチロー様、そろそろ火球の対処をお願いします。」


 おっと、そうだ。「選球眼」「盗塁王」の作るスローモーション空間とはいえ時間が止まって居る訳じゃ無いのだ。「敏腕マネージャー」さんとの会話の間に敵の火球魔法が結構迫って来ていた。


 俺はバットを構えると、2度程軽く素振りしてからキッチリと構え「フルスイング」で「素振り」を放った。

 超高速で振られたバットから暴風の様な風圧と目に見えない何かが出た様で飛んでくる火球魔法が壁に叩きつけられた様に爆散した。


 どうやら向こうにいる魔族の魔導士には想定外だったらしく焦っている様子が見て取れたが……飛竜に乗る指揮官らしき豪華なローブの男の指示で再び魔法の詠唱を始める。


 くっ、参ったな。ここから距離を詰めたんじゃ、魔法の発射に間に合わない。黄色い魔法陣からどうやら今度は雷魔法の様だ。懐に入れば、まとめて仕留められそうだが、後ろで戦う兵士の皆さんが魔法に晒されてしまう。


『「ピッチング」への切り替えを推奨します。』


 なるほど! 投球による遠距離攻撃か!「敏腕マネージャー」さんの提案に従い、バットを収納し、グローブと硬式野球のボールを召喚した。


 右手に硬式球、左手にグラブ。こんな感じかと大きく振りかぶった。するとコレまた体が勝手に動く。左脚が大きく前へと踏み出し滑らかに体重が移動する。体のバネが弓の様にしなった右手のボールに向かって収束し、最高のフォームで敵の魔導士に向かって投げ込んだ。


 放たれたボールは……6人並んだ敵魔導士の右から二人目の胸に直撃し、両サイド二人を巻き込んで吹き飛ばした。


 まさかの出来事に詠唱が止まる残り3人。その直後、残る3人も何が起こったか分からぬままに吹き飛んだ。


 飛竜に乗る指揮官はどうやら俺から攻撃された事に気付いた様だ。手にした手綱を引き飛竜を飛び上がらせた。

 バサバサと音を立て上昇する飛竜。向かって来るのかと思いきや、そのまま逃走し始める。


 あれ?逃げるのかよ?と言う事は俺たちの勝利?後ろを見ると残ったオークも兵士の皆さんによって全て倒されていた。


 まあコレで一安心……かと思ったら、出口から出てきた近衛の女騎士さんが飛び去る飛竜を見て叫ぶ。


「しまった!指揮官に逃げられた。コレでは勇者様の存在が魔族に知られてしまう。くそっ!」


 あ〜なるほど、そりゃマズイ……のかな? まあ今後の自分に大きく関係しそうな案件なんで、やるだけやって見るか?


 そう考えて既に遠く離れた飛竜を睨み、投球フォームに入る。


『出来れば上の指揮官だけ倒して下さい。』


 「敏腕マネージャー」さんから難易度二段階アップのお願いが入った。 


「無茶言な!!」


『「豪腕」「コントロール抜群」が発動。』


そう叫びながらも指揮官だけをイメージし、ワインドアップからフルパワーで空へ向かって投げ込んだ。


 指さきから離れた瞬間、ドゴン!とデカい音がして

正面の地面が捲れ上がった。おおっ?今の衝撃波は?

もしかして音速超えた?そして直後に……


 小さくなった飛竜の背中から、何かが落ちるのが見えた。


 いやいや、人間やって見るもんだね。「敏腕マネージャー」さんの期待に応えられた様だ。と、飛んで行く飛竜がくるりと宙返りして、此方へと戻ってくる。え?飼い主がやられたから御礼参りか?


 段々と近付いて来る蒼い飛竜に俺は警戒していたがなんだか殺気を感じ無い。真上まで戻って来た飛竜は上空で旋回すると…… 俺の目の前へと舞い降りてきた。


 どうやら敵意はない様で巨体をペタリと地面に付けて伏せの姿勢をとっている。


『「球団マスコットと仲良し」発動。ティム可能状態です。名前を付ければティムが完了致します。』


 おおおっ、ティムって従魔だよね!?この蒼い飛竜が俺の従魔にっ?付ける、名前付けるぅ!!


 改めて蒼い飛竜を見てみると物凄く綺麗なドラゴンさんだった。そっと頭を撫でると目を閉じてぐるぐると鳴いている。

 どうやらあの指揮官に隷属魔法で強制的に使役されていたらしい。解放してくれてありがとう。貴方の力になりたいと、気持ちが伝わってきた。


 蒼い飛竜、球団マスコット、そう考えてたら、アイツの名前しか浮かんで来ない。キモい動きのコアラみたいなアイツだ。ダメだ、イメージが強すぎる。もうド○ラで良いかと思った瞬間、「敏腕マネージャー」さんから『それはアウトです。』とのツッコミが入った。えええっ!!


「お前の名前は……「ドーラ」だ。」宜しく頼むぞ、ドーラ!!」


 ギリギリ一文字とばして名付けた瞬間、ドーラとの間に絆の様な感覚が芽生えた。ドーラも同じだったのだろう。立ち上がり、頭を擦り付けてくる。オッホオ、動物大好きな俺的には堪らない。よーしよしよしよーし!!ドーラの首から頭から撫でまくる。


 すると今度は背後から声が掛けられた。


 振り向くと姫が立っており、その後ろに近衛騎士さん、侍女さん、魔導士、騎士、兵士、今日の闘いで生き残った皆さんがしゃがみ込み、片膝を着いて頭を下げている。


 皆を代表して姫が口を開いた。


「勇者様、此度の戦いお見事でございました。今、この国、いえ、この世界は魔王の軍勢によって人が滅ぼされようとしております……


レイリア王国第一王女、マリナール リム レイリアの名に於いて願い申し奉ります。どうかその神の如きお力にて世界を……人の世をお救い下さい。」


 そう述べるとマリナール姫も静かに膝を付きうやうやしく頭(こうべ)を垂れた。


 ちょ、えっ、えええーっ ど、どうしたら良いんだこれ? マネージャーさん、どうすれば……


『イチロー様にこの世界を救う御心つもりが御座いましたら、御自身の御言葉でそれをお伝えすれば宜しいかと。」


なるほど…… 野球の神も言っていた。この世界は魔王の軍勢によって陥落寸前だと。ステータスは野球の育成ゲームみたいなふざけたステータスだが どうやらチート満載の様だし。そこは野球の神に感謝だな。


 やるしか無いのだろう。覚悟を決めよう。野球の神には悪いが、この世界に野球を広める気は無いが、この世界を救おう。やれるだけやってみよう。


「皆さん、顔を上げて下さい。俺はその……向こうの世界で偶然選ばれで、神様から貰った力もちょっと変わってて。それに、この力が何処まで通用するか分からないんですが…… 平和な世界を取り戻す為に皆さんと一緒に戦います。」


 跪いて(ひざまず)俺を見つめる皆さんから歓声が上がった。


 なんだか上手く言えなかった様な気もするが……どうやら俺の決意は伝わった様だ。


 マリナール姫が手で皆の歓声を制し、口上を述べる。


「我等一同、神の名に於いて貴方様の為、共に戦い、尽くす事を誓います。


 つきましては、偉大なる勇者様の御名《みな》を御教え下さいませんか?」


 ああ、そうか、召喚即戦闘だったから、名乗ってもいなかったのか。そう気付いたとき「敏腕マネージャー」が名乗りを提案して来た。その内容に少し戸惑ったが…… 野球の神様に敬意を表してマネージャーさんの案で行く事にしだ。


 ドーラが頭を擦り寄せて来たので左手で撫でながら名乗る。


「俺は田中一郎!! 4番ピッチャー 勇者です。」


 これが後に魔族軍を震撼させる事になる……

「野球の勇者」誕生の瞬間であった。





 



 

















 

 今回も読んで頂きありがとうございます。面白い、読んだ事無い様なストーリーをと頑張って書いております。


 面白かった、先が気になる、と思って頂けたら、ブクマ、星評価、感想お願いいたします。おっさんの励みになりますので。


次回予告!!


 早くもタイトル回収した田中一郎。異文化コミュニケーション、そして明かされるこの世界の人類の惨状。

 勝利の宴が終わる時、姫達の熱い視線が田中一郎に注がれる。


次回第4話 「ナイトゲーム 夜も勇者」

で宜しくどうぞ。

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