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「4番、ピッチャー、勇者」  作者: イベリコ・ザ・ブッチャー


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第2話 規格外大型新人勇者、衝撃のデビュー戦

 フワッと浮いた感覚の後、俺の体はキラキラと光の流れる空間を飛んでいた。いや、キラキラのトンネルの向こう側にある蒼い光へと向かっている様だ。その光に引っ張られているのだろう、少しずつ蒼い光が大きくなって行く。


 どうやらまだ時間はありそうなんで、ステータスを確認しておく事にする。


「ステータス!」


 おっ、やった。なんか出た。早速チェックする俺。


選手名 イチロー タナカ


選手力 レベル15


スタミナ ◎ ◎ 「超回復」


センス  ◎ 「天才肌」


バッティング ◎◎◎ 「パワーヒッター」 「ジャストミート」「選球眼」


ピッチング ◎◎◎ 「豪腕」「変幻自在」「コントロール抜群」


守備 ◎ 「壁際の魔術師」


走力 ◎◎ 「盗塁王」


スタミナ◎◎◎ 「超回復」


保有スキル 


「二刀流」「即戦力」 「パワーヒッター」「ジャストミート」 「敏腕マネージャー」「通訳無用」「魅力的」

「三冠王『夜)」 「魅惑のバットコントロール(夜)」

「スーパースター(夜)」


召喚スキル


「バット召喚(合金)」「グローブ召喚」「硬式球無限召喚」



 くっ……何だかファンタジーぽく無い用語だと思ったらやっぱりか! 野球の神ぃぃ!何やってくれんだあの野郎!? コレじゃ野球の育成ゲームじゃねーか!!


 しかも「魅惑のバットコントロール(夜)」って!?

(夜)のスキル3つもあるんだが!? 使う事あんのかコレ!?


 感情に任せてブチギレていたら、キラキラ空間一杯に蒼い星が迫って来ている。そして俺の体が再び白い光に包まれ始めていた。


「クソったれ!! こんなステータスでやれんのか!やるしかねえのか!?チクショーー!!!!」


キラキラ空間に罵詈雑言を撒き散らして俺の体は光と共に消えた。




「神よ、我らに力をお貸し下さい。この世界を救える勇者様よ我が召喚にお応え下さい。」


 決死の覚悟で召喚の儀式を行う。もう魔石も私の魔力もこれで最後だ。魔王の軍勢はこの召喚の遺跡神殿の中迄入って来ている。この召喚に失敗したらこの国は……この世界は……終わってしまう。だから……


 召喚の魔法陣の間の外が騒がしい。どうやらそこまで魔物の軍勢が来ている様だ。


「ああっ、レイリア王国第一王女、マリナール リム レイリアの名に於いて誓います。私の身も心も全て捧げます。ですから救世主様!!この世界を救って……」


最後の魂の底からの懇願は、涙声で言葉にならなかった。だが…… 祈りが天にどどいたのか!?魔法陣が眩い(まばゆ)光を放ち、その中心に男性の姿が現れた。


「ああっ、神よ、ありがとうございます。」


 神への感謝を述べた。土壇場で勇者召喚に成功したが、問題がある。まだ彼は育っていない。果たして彼を連れてこの魔王軍の包囲から逃げ延びる事が出来るのか?


 光が収まった。現れた人物の元へ駆け寄り話掛けた。黒髪に黒い瞳、召喚された男性は背はそれなりに高いがおよそ戦える様な体格では無かった。


「勇者様っ、ここは危険です。すぐに脱出致しましましょう! 」


 話掛けたが、彼は困った顔をしている。そうか言葉が通じないのね。そう気付いた瞬間、召喚の間の厳重なドアが吹き飛んで魔物が入って来たのだった。




 キラキラ空間から再び白い光に包まれて…… 転移した先は石作りの建物の中にある魔法陣の中心だった。どうやらここがユグドラシアか?辺りを見回すと金属の鎧に身を固めた騎士がいる。コレは……いわゆるオーソドックスなファンタジー世界ぽい。


 正直な所この俺、田中 一郎は野球には疎いが異世界転生、転移には詳しい。なろう系小説を読み漁り、幾多の勇者の冒険譚を知る男なのだ。


 と、誰か駆け寄って来た。銀色の長い髪、白い肌に蒼く美しい瞳と顔立ち。目の前に立っている為身長差で白いドレスの胸元が上から見えている。そこにはグランドキャニオンばりの深い谷間があった。


 オッさん(野球の神ですが?)の言葉を思い出す。俺を召喚する姫は美人でボインだと言っていた。この娘だといいなぁ…… そんな事を考えていたら、目の前の美少女は必死な感じで話掛けて来た。


「♪*=°€〆\ ○+→☆#h >*:〒-[¥×° 」


 んんっ? 何言ってるか判らない。あ、そうか、異世界言語だからか?うわっ、困ったな。そう思った瞬間、


『「通訳無用」が発動、以後私、「敏腕マネージャー」がナビゲートを行います。』


 おおっ!? 「通訳無用」って文字通りなのか?異世界言語判っちゃうのか? 「敏腕マネージャー」さん!?よろしくお願いします。


目の前の美少女に話掛けようとした時、ドカンと大きな音がして、頑丈そうなドアが吹き飛んでいた。そして……

解放された出入り口から入って来たのは、2mは在ろうかと言う猪の頭を持った、かの有名なオークであった。


 だだ……普通のオークだったら良かったのだが……突然の出来事に俺にしがみついた美少女の口から出た、


「そんな…… オークジェネラル!?」


 と言う呟きが絶望感を演出してくれた。




 入って来たオークジェネラルはギロリとと辺りを見回すと俺の存在に気付いた。


「むうっ、貴様、異世界からの召喚勇者か!?ゲパルド様の命に従ってここ迄来て見たが、まさか本当に勇者召喚に成功していたとは!!


 だが、運が良い。、育つ前の勇者など恐るるに足りん。」


うわ、何、「通訳無用」魔物の言葉も通訳しちゃう訳?

と言うかオークジェネラル、俺を殺る気満々なんですけど?


 姫?の護衛の騎士を弾き飛ばし、立ちはだかった黒い鎧に身を包んだ近衛っぽい騎士も盾への強烈な一撃でダウンさせ、俺と姫?に迫ってくる。


 いやいやいや、怖い。怖すぎるが、戦わないとここで終わる!!やるしか無い!そう考えた途端、ナビゲートが入った。


『戦う意志により、「即戦力」、格上の敵、危機的状況により「逆転王」が発動。総合効果により打撃力(バッティング)が4倍、「平常心」を展開中。』


「敏腕マネージャー」のナビが入った。すると、さっき迄あんなに恐ろしかったオークジェネラルが今はそれ程怖く感じない。「平常心」の効果抜群である。


 ジェネラルが目の前迄迫り、俺と姫?をまとめて始末するべく、デカい斧が振り上げられた。


「死ねい、召喚勇者!!」


 振り下ろされる斧より早くナビが入った。


『「選球眼」「盗塁王」が発動。』


途端に振り下ろされる斧がスローになった。俺はしがみ付く彼女をお姫様抱っこしてジェネラルから距離を取る。 余談だが、抱き上げた姫?は軽く柔らかく、凄く良い匂いがした。


 ガキンと大きな音を立て、斧が地面を撃つ。


「何っ!?」


「えっ?」


 ジェネラルと姫の驚愕の声が重なる中、俺はゆっくりと姫?を床に立たせた。そして驚いた顔のままの姫?が余りに可愛いらしかったので、思わず彼女の頭をポンポンしてしまう。


「もう大丈夫だから。」


 姫?にそう声を掛けてジェネラルに向き直ると「敏腕マネージャー」からナビが入った。


『「バット召喚」を推奨します』


 そうだな、4倍の打撃力を活かすにはバットが要るよな。声に出して「バット召喚」と唱えると右手に金属バットが握られた。重過ぎず、軽すぎず、絶妙に手に馴染むバットだった。


 振り返り、俺を見つけたジェネラルは再び斧を振り上げるが…… 動きが再びスローモーションになっていた。難なくジェネラルの横を通り過ぎ、後ろを取った俺はバットを構える。


 体が勝手に動く。超一流選手の様な流れる動きで構えた俺は…… オークジェネラルのガラ空きの背中へと、フルスイングを放った。


『「ジャストミート」発動!!打撃力4倍から8倍へ。』


 なす術無く「ジャストミート」の一撃が入ったジェネラルは宙を舞い、石造りの壁へ叩きつけられてから地面に落ち動かなくなった。


 俺の電光石火の一撃に部屋の中に居た護衛の騎士、従者、魔道士、そして姫?、全員が息を呑んでいた。


『オークジェネラルを撃破! 選手力レベルアップ。レベル15からレベル18へ。「格上キラー」「炎の千本ノック」

「ウグイス嬢のアナウンス」を獲得しました。』


 強敵を倒しただけあって、その恩恵も大きかった様だ。

これなら充分行けそうだと少し安心していたら、新たな敵が部屋へ入ってきた。


『「選球眼」発動、敵はオークソルジャー三体。オークジェネラルより格下の魔物です,』


 「選球眼」は鑑定も出来る様だ。すげー便利!!「敏腕マネージャー」のナビを聞いて自信を持った。ジェネラルを倒したのだ。より格下の敵に負ける筈が無い。


 見れば1番先頭のソルジャーがダウンした近衛騎士に迫り、手にしたナタを振りかぶっていた。直ぐ様走り寄り、スローで振り下ろされるナタより早くバッティングを叩き込む。


『「パワーヒッター」発動、打球が巻き込んだ相手に大ダメージ。』


 打球って……打ったから打球か?「パワーヒッター」で吹き飛んだソルジャーが、侍女らしき女性を襲おうとしていた残り二体のオークソルジャーを巻き込んで壁際へと叩き付けられる。


 三体とも動かなくなった事を確認してから、オークソルジャーに襲われて、座り込んだままの侍女?さんにしゃがみ込んで声を掛ける。


「大丈夫!? 怪我して無い?」


「は、はい、ありがとうございます。勇者様っ」


 余程怖かったのだろう。ぐしゃぐしゃに泣きながら、お礼を言ってくれた。これまた思わず頭を撫でてしまう俺。

 薄いブラウンのサラサラの髪にクリクリとした茶色の瞳、この娘もメチャクチャ可愛いらしかった。そして……大っきい……


「勇者殿。」


後ろから掛けられた声に振り向くと、近衛騎士?さんが立っていた。俺は侍女?さんに手を差し伸べて一緒に立ち上がった。


 立ち上がった侍女?さんは暫し俺の顔を見ていたが、ハッ!となって周りを見回すと「姫様!!」と叫んで銀髪美少女の元へと駆け寄った。

 あ、やっぱりあの子が姫だったのか。姫と侍女?さんが抱き合って泣いている。うむ、尊い。


「勇者殿、先程はマリナール姫を御守りくださりありがとうございました、それ所か不甲斐なき私まで助けて下さって……」


 そう言いながら、ヘルムを脱いだ騎士さん。声で女性だと判っていたが、ヘルムの中から出て来たのは金髪、薄い褐色肌の切れ長の瞳の美人さんだった。


 姫の護衛の近衛騎士?だけあって背が高い。178センチある俺ほどでは無いが、中々の体格だ。鎧に包まれて判らないが恐らく相当鍛え込まれた体をしているのだろう。


「怪我はありませんか?」


「オークジェネラルの一撃で左腕が痺れているが……大丈夫だ。まだ戦える。」


 俺の問い掛けに真剣な表情で近衛騎士?さんは答えてくれた。姫の護衛に付くほどだ。恐らくこの世界では相当強いのだろう。


「此処を、姫と彼女の護衛を任せても? 俺は外の敵を打ちます。」


「そんな、一人では…… いやオークジェネラルを一瞬で倒した御仁ならオークの軍勢など敵では無いか……」


 途中から和かな笑顔になった騎士さん。どうにもメチャクチャ魅力的だった。


「任せて欲しい。この命に換えても姫と皆を護り抜いて見せる。」


 破壊力抜群の笑顔からキリリとしたクールビューティーに戻った彼女は任せてくれと答えてくれた。


「では此処はお任せします。」


この騎士さんなら大丈夫だろう。そう思った時、ナビゲートが入った。


『「守備陣への信頼」を獲得、発動開始。守備陣のダメージ回復、能力値が一時的に50%増加、」


「なっ、ゆ、勇者殿、何かサポートの魔法を使われましたか!? 腕の痺れが無くなって……体の奧から力が湧き出る……」


「えっ、いや…… まあ、秘密って事で。」


 苦し紛れにそう答えて、俺は召喚の間を後にした。



 

 















 

 今回も読んで頂きありがとうございます。面白い、読んだ事無い様なストーリーをと頑張って書いております。


 面白かった、先が気になる、と思って頂けたら、ブクマ、星評価、感想お願いいたします。おっさんの励みになりますので。


次回予告!!


 召喚されたら即ピンチを切り抜けた一郎。だがまだ戦闘はは終わっていない。


 襲い来る魔族軍!! 果たして一郎は勇者の力を示せるか!?

そして……第3話で早くもタイトル回収!?


次回 第3話「ファンタジーVS野球」

で宜しくどうぞ。





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