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「4番、ピッチャー、勇者」  作者: イベリコ・ザ・ブッチャー


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第12話 女神、新たなインフラを用意する

 柔らかく良い匂いがする。どうやら眠っていた様だ。ゆっくりと目を開けると大きな二つの山脈があり、その谷間から俺の顔を覗き込む、知らない金髪超絶美女の顔があった。


「目覚められたのですね、良かった。もう、W勇者認定だからって無茶しすぎです。」


美人さんからお叱りを受けた。だが彼女は怒っている訳では無くむしろ申し訳無い感じの憂いた顔をしていた。まだ頭が回っていないのか状況が良く理解出来ないが…… どうやら俺はこの美女に膝枕されて横たわっている様だ。


 柔らかな日差しと時折優しく頬を撫でる風。青空に雲が流れゆくのを木陰で美女に膝枕されているのだが、ここは……何処なのか?


「ここはユグドラシア側の神界になります。私は精霊魔導世界ユグドラシアを統べる女神メルセナと申します。ゴルドナ王国、グランレイア防衛戦での活躍、心から御礼申し上げます。あのままグランレイアが陥落していたら…… この精霊魔導世界ユグドラシアの人類は全滅していたでしょう。」


 何と、こちらの世界の女神様より御挨拶いただいた。 ん?ああ、そうだ。俺は最終局面で敵の豪将軍と戦って…… あれ?最後記憶がないぞ?俺は……勝ったのか?

この美人さんから御礼を言われてるって事は……


 ああそうだ、何とか5体満足でゲパルトを倒したんだった。けど……死んじまったのか?


「大丈夫、貴方は死んでなどいませんよ。限界突破で戦って、無茶し過ぎて…… 魂にダメージまで受けて。

 その修復の為に貴方の魂だけここへお連れしました。」


 なるほど?てか、喋って無いのに考えた事に女神メルセナ様は答えてくれた。少しずつクリアになって来た俺の頭が、メルセナ様に対して何だか分からない懐かしさを感じていた。


 その途端、メルセナ様の瞳から、大粒の涙が溢れて、俺の頬を濡らした。えっ、な、何だ?俺、何かやっちゃいましたか? 膝枕から起き上がり、正座してメルセナ様の顔をみる。


「嬉しい。長き時間を超えて、姿形が変わっても……ほんの僅かでもそう思ってくれる事が嬉しいのです。

 それに……困っていた私を助けに来てくれた。それがもっと嬉しい。」


 そう言うとメルセナ様は二つの山脈で俺の頭を抱きしめた。ファっ、巨大山脈、柔けえ〜!!いや、いかん!相手女神様ぞ!? 邪な感情は不敬…… でもめっちゃいい匂いするぅ〜!! 


「相変わらずスケベなくせに変な所で真面目なんだから。

良いんですよ、私の甘やかしが貴方の魂を修復してくれますから、たっぷり癒されて下さいね。」


 何故だか分からないが……女神様は俺の事をご存知の様なのだ。 どう言う事が御説明頂きたい所なのだが……


 山脈に頬を挟まれたまま上目使いでメルセナ様の顔を見ると、またしても俺の思考を読んだのか……


「それは、秘密♡」


 そう答えて優しく微笑まれた。そしてその後……


 メルセナ様にあんな事、こんな事、たっぷり、どっぷりと甘やかされてから、俺の魂は解放されたのだった。





 ゆっくりと目を開けると…… そこは本当に知らない天井だった。


「あっ!! イチロー!!イチローが目を覚ましたよー!」


 俺の顔を覗き込む、蒼いロングヘアにクリクリとした瞳、少し幼さを残す美少女顔にミリアさんに匹敵するビックパイ。ああ、この子は……


「よお、ドーラ、随分可愛いらしくなったな。ドラゴンの姿もカッコ良かったが、その姿も凄く良いぞ。」


 寝起きの回らない頭で思った事を口にする。


「もう、もう…… スッゴイ心配してたんだからね!!でもよかった。目を覚ましてくれて……ううっ、うわぁぁん」


 ドーラが大粒の涙を流して泣き出した。俺はベッドから体を起こして彼女の頭を撫でる。


「すまん。心配掛けちゃったな。ありがとう。もう大丈夫だ。」


「うん、うん、本当に良かったよぉ〜ー!」


「イチローさん……」


「イチロー殿……」


「イチロー様……」


 呼び掛けられた声に顔を向けると、そこにはマリナ姫、エルメラさん、ミリアさんが涙腺崩壊寸前の顔で立ち尽くしていた。


「マリナ姫…… エルメラさん……ミリアさん…… 御心配お掛けしました。」


 俺が申し訳無い感じで声を掛けると


「「「うわーあぁぁぁぁぁんーー!!イチロー(さん)(殿)(様)〜〜!!」


 俺は駆け寄って来た三人とドーラに抱き締められて揉みくちゃにされた。





 ベッドの上で号泣する四人の美女を、俺は頭撫で撫でし続けた。暫くするとみんな落ち着いたのか泣き止んで笑顔が戻ってきた。


 マリナ姫、エルメラさん、ミリアさんとは何と言うか……大人な関係でもあるわけで…… 何だか視線が熱っぽい様な?ドーラは甘えんぼさんなのか俺の腕に抱き付いている。


 そんな中、俺には非常に気になる事があった。ベッドから少し離れた所に濃紺のスーツ姿の女性が立っており、俺をじっと見つめているのだ。


 アップにしたの黒髪に黒い瞳の美女、どう見ても日本人だ。。細身のパンツスーツとパンプスが相まってスタイル抜群、仕事出来るキャリアウーマンって感じである。ご丁寧に首から社員証らしきも掛けていた。


 このバリバリファンタジーな精霊魔導世界ユグドラシアに於いて明らかに場違いなこの人物。心当たりは大いにあった。十中八九、いや確率120%であの人だ。俺は意を決して呼び掛けた。


「マネージャーさん?」


 俺にそう呼び掛けられた女性は少し恥ずかしそうに微笑むと俺の方へと向き直る。大人っぽい美女のはにかみ顔、

良いっ!凄く良いっ!!


「はい。私、「敏腕マネージャー」でございます。イチロー様が豪将軍戦に勝利した事で大幅なレベルアップにより、スキルが進化して実体化出来る様になりました。」


 何と!? ドーラに続き『敏腕マネージャー』さんもリアル美女化!! 俺の周りがどんどんと華やかになっていくなあ…… これがハーレムってヤツなのか…… 俺みたいな一般ピーポーがこんな幸せでいいのかな?


「良いんですよ。イチロー様、貴方は魔族の大軍勢を退けた偉大な勇者なのですよ? そもそも何故そんなにも自己評価が低いのか理解に苦しみます。」


 マネージャーはベッドサイド迄来ると膝を折り、俺の手を取った。両の瞳からすうっと涙が頬を伝う。


「良かった……貴方が生き延びてくれて。私は…… 豪将軍に対し無策で無力で…… 申し訳ありません……」


 いやいやいやいやいや?


「何を言ってんですか?貴方が居なかったら、姫達も力を得られず、今回の魔族軍の侵攻に反撃さえ出来なかったんですよ? それにこっちの女神様から俺の勇者認定まで取り付けてくれて。

 マネージャーが用意してくれたサムライジャバンのスキルが無ければ、ゲパルトには勝てなかった。自己評価が低く過ぎるのは、貴方の方ですよ?」


「そんな…… 私は……」


 敏腕マネージャーさんは俺の言葉に俯いて嗚咽する。ああ、もうしょうがないなぁ…… 俺はマネージャーをそっと抱きしめて耳元で囁く。


「頼りにしてますから。今後もよろしくお願いしますよ?」


 マネージャーは暫くすると落ちついたのか小さな声で

「はい。」と返事してくれた……





 目覚めた俺は皆から気を失った後の事を教えて貰った。

 

 俺はあの直後から5日間意識不明だった。敏腕マネージャーはこちらの世界の女神メルセナ様から、傷ついた俺の魂を修復する為にユグドラシアの神界へ暫し連れて行くと聞かされてはいた。そして必ず目覚めるとも言われたモノの、いつまでとは聞かされていなかった様だ。


 その情報を伝える為、実体化して俺を心配する姫達の前に現れたらしい。


 神界での治(・)療(・)はどんな風でしたか?と姫達に問われたが、どうにも思い出す事が出来なかった。


 神界の穏やかな風景とメルセナ様の声、姿は思い出せるのだが…… 治療部分の記憶だけが思い出せない。 


 ただ、物凄く幸せだった感だけが残っていた。その感情にマネージャーは気付いた様で、ジト目で睨まれたが姫達には内緒にしてくれた。だがその代わりにと一つお願いをされた。それは「自分にも名前を付けて欲しい」と言うお願いだった。


 今迄は脳内でのユニークスキルの認識だったので、「マネージャー」呼びでも違和感無かったが、実体化してコレまた超美人お姉さんになってからは「敏腕マネージャー」と呼ぶのもなぁ…… と思っていた所だった。 


 丁度、本人からそうお願いされたので考えていた名前を提案した。


「敏腕」から一文字とって「敏子(としこ)さん」ってのはどうでしょう? あ、苗字も要りますか?


「敏子、としこ、トシコ…… 非常にオーソドックスですが…… 悪く無いですね。苗字も考えて頂いたのですか?

聞かせて頂いて決めさせて貰っても?」


 彼女は、俺のネーミングセンスの無さをドーラの一件で知っている。だから一生懸命に考えた結果思い付いた名前だったのだが、名(・)前(・)は(・)思いの外気に入って頂けた様だ。


「二階堂、二階堂 敏子でどうでしょう?」


「二階堂…… 二階堂 敏子……では私(わたくし)、今後は「二階堂 敏子」と名乗らせて頂きます。改めてよろしくお願い致します。イチロー様」


「こちらこそ、よろしくお願いします。二階堂マネージャー。」


そう返して彼女と握手する。

 

 その後、命名した事で二階堂マネージャーと新たな絆が発生したとの報告と.、自分に対しての敬語は止めてください。との申し出を受けた。敬語はねぇ…… 大人な美人さん相手だと思わず敬語になっちゃうんだよね、俺。




 あの戦いから5日経っている訳なんだが、二階堂マネージャーから現状の説明を受けた。


 俺の一本足打法から放たれた超新星《スーパーノヴァ》によって見渡す限り真っ平になってしまった王都周辺。その平地の終わる辺りにミリアさんの城壁魔法アースウォールで新たな超巨大城壁が築かれていた。


 王都の城壁を起点として扇状、まるでスタジアムの様に築かれた城壁は維持にミリアさんの魔力を必要とせず、この地に染み付いた「魔素」によって維持されている。

 魔族の大軍勢を全滅させた事によってに超大量の邪神の魔力と俺の膨大な出力の勇者粒子?が反応して「魔素」と言う新たな要素が発生していた。それを早くも有効利用した形だ。


 光と闇の両極端な特性を持つ「魔素」は人にも魔族にも毒にも薬にもなる存在らしく特に魔法系技術は新たな革新を迎える可能性が高いらしい。


 二階堂マネージャーから説明を受けていると、頭の中に電子音?が響く。と同時に視界の右上に黒いワイプで


『着信中 ユグドラシア統括 女神メルセナ』


 と出ていた。ご丁寧に通話ボタンまで表示されている。

俺はマネージャーや皆ににちょっと待ってもらう様に伝えて通信ボタンを意識した。


『あ、もしもし〜?イチローちゃん? メルセナお姉ちゃんだよ〜!』


 まあ誰から通信が入ったのかはわかっていたが

…… その陽気なテンションに着いて行けない俺。


「あ、これはどうも。先日はお世話になりました。」


『え〜イチローちゃん、固い、固いよ? お姉ちゃん女神だけどその辺フランクな感じだから!」


 ええ…… この人も距離感が……ちょっと……


「はあ…… では、「メルセナお姉ちゃん」、どうかされましたか?」


『¥%+〆☆!!………… はあ、はあ、や、やるわねイチローちゃん。いきなり女神を「お姉ちゃん」呼びとは……』


 いや、貴方がフランクでいいって言ったんですけど?


『えっとね?何か魔素の話してるみたいだったんで、お姉ちゃん業務連絡しとこうと思って。

 実はね、イチローちゃんが真っ平にした場所なんだけどね? あまりに魔素濃度が高過ぎて、放置しとくと何かとんでもなく強力な存在が発生しちゃいそうなの』


 ええ…… 面倒くせぇ…… そんな第三勢力イラねぇ……


『そ、そうだよね、大丈夫! お姉ちゃんちゃんと分かってるから。

と言う訳で…… バンバカバーン!! その魔素を利用して、な、な、何と!


 【ダンジョン】作っちゃいました!!』


 いやいや、パンパカバーンって…… ちょっとメルセナ様のノリに着いて行けなくなった俺だが、ダンジョンを作った? うん?何言ってんですか?


『えっとね? このユグドラシアなんだけどね。人口が減り過ぎちゃって生産インフラが壊滅状態なの。このままだとグランレイアの人々も食糧不足で餓死しちゃう可能性が高くて。


 かと言って、管理者の私が直接支援するのはルール違反になっちゃうから……そこでお姉ちゃん考えました!!

 魔素を吸収するコアを設置して地下迷宮、つまり……

【ダンジョン】を展開したの。ダンジョン内に魔素を変換して作られた穀物、野菜、果実とか色々と採取出来る様にしておきました。コレであの周辺の魔素濃度も下がるし、

グランレイアの皆さんも食糧不足もズバッと解決!!

ついでに強力な存在の発生もコントロールできちゃいます。』


 最初は何を言い出したのかと思ったが、ダンジョンとはメルセナお姉ちゃんからの間(・)接(・)的(・)支援の様だ。


 詳細を聞くと、地下へと広がる階層型で地下三階迄は安全なフィールド階層だそうだ。一階では穀物や野菜、二階では森林から果実、キノコや薬草が。三階では草原に食肉をドロップする魔物が出現するそうだ。


 地下4階以降は本格的な地下迷宮となり、人類を鍛える場所となっている。。そして四階へと踏み入る事により【ジョブ】が与えられる。


 壊滅している食糧生産インフラに変わる食糧調達場であり、人類にジョブを与え、ダンジョン内で訓練する事により魔族軍と戦える人材を増やす場所。


 メルセナお姉ちゃんの作ったダンジョンは、彼女のちょっとアレなキャラクターからは想像出来ないちゃんとしたシステムだった、


『ちょっとアレなキャラクターって!酷くない?』


 いやいや、流石はお姉ちゃん、完璧です。


『分かればよろしい。あ、運用ルールールとかは二階堂マネージャーにデータ送っとくから彼女に運用してもらえばいいと思うな。それじゃ、イチローちゃん、またね!!』


 そう言い残して通話が切れた。


「あ、あのっ……イチローさん?だ、大丈夫ですか?」


マリナ姫からそう呼び掛けられてメルセナ様との通話モードから我に帰ると、マリナ姫、エルメラさん、ミリアさん、ドーラがベッドサイドから俺の顔を覗き込んでいた。


 近い近い、美女四人の顔が近い。俺はドギマギしながら状況を説明する。


「こちらの世界の女神メルセナ様から連絡がありまして…… 俺が吹き飛ばした跡地に【ダンジョン】が出来るそうです。」


 そう告げると四人は驚いた顔をしてからハテナマーク顔になっていた。あ〜コレは良く分かって無いな。」


「二階堂マネージャー?」


「はい、先程メルセナ様より【ダンジョン】の詳細データを受領致しました。これは…… 凄まじいですね。」


「メルセナ様から二階堂マネージャーに運用してもらえとの話でしたが、行けそうですか?」


「お任せください。勇者イチローの名に恥じない運用をお見せ致します。」


 かくしてユグドラシアの残り少ない人類は新たなインフラシステム、【ダンジョン】を手に入れたのだった。









 

 






 













 今回も読んで頂きありがとうございます。面白い、読んだ事無い様なストーリーをと頑張って書いております。


 面白かった、先が気になる、と思って頂けたら、ブクマ、星評価、感想お願いいたします。おっさんの励みになりますので。


次回予告!!


戦い終わって目覚めたイチロー、だが魔族より人間の貴族の方がめんどくさい!? 生き残り貴族を相手にイチロー渾身のドヤ顔が炸裂する!?


次回第13話 「成り上がって、娶って……ついでに世界も救っとく。」

で、宜しくどうぞ。

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