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「4番、ピッチャー、勇者」  作者: イベリコ・ザ・ブッチャー


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第10話 俺は君達の為にホームランを打つよ!

本日2話目投稿、第10話です。

 睨み合いの後、闘いが始まった。


「行くぞ、簡単に死んでくれるなよ?」


「かかって来いや!! 返り討ちにしてやらぁ!」


 お互いに駆け出して間合いが詰まるとゲパルトは大剣を横薙ぎに、俺もバットを片手で振りかぶって大剣に合わせる。バキーンと大質量がぶつかる重く甲高い音が鳴り響き、お互いの武器(エモノ)が弾かれ合う。


 ゲパルトの武器は大剣。刃渡り1,8m、幅15cmほどの大物だか、研ぎ澄まされたその刃(やいば)は匠の手による技物なのだろう、それを軽々と振り回している。


 対する俺の武器は召喚された金属バット。今の一撃を難無く弾き返す辺り、コイツもかなりな技物である。手に持った重量からムクの金属塊では無く中空構造だと思うが、有り得ない強度をしている。材質にオリハルコンでも使ってんのだろうか?


 二度三度と打ち合う大剣と金属バット。ゲパルトはその体格から繰り出される重い斬撃を、難無く弾く金属の棍棒に驚きを隠せない様だ。


「クカカ、何たる武具よ。我の魔剣の斬撃に余裕で耐えるとは!」


 間合いを取ったゲパルトが嬉しそうな顔で言う。


 今までの敵はその斬撃で剣ごとへし折って倒して来たのだろう。だが俺の召喚するバットは形こそバットだが、人が作った物じゃない。メイドインゴッド製(多分)だからな。


 そこまで考えてふと気付いた。


 あれ?これ普通の勇者だったら剣ごとぶった切られて、終わってたパターン? そんな事を考えていたら再びゲパルトの斬撃が迫る。しかもさっきより速い。


 スキル「選球眼」は使うが「盗塁王」は使わない。「盗塁王」はこちらの世界で言う所の「超加速」と同等のスキルだ。恐らくゲパルトも「超加速」を持っているだろう。


 俺の「盗塁王」も「超加速」も超スピードで動けるスキルだが、制限時間ががあるのだ。その為先に超高速に入っても、同じスキルで対応された場合、先にタイムアップで無防備を晒す危険があった。


 そしてこれだけの強敵、その隙は致命傷だ。ゲパルトも俺のスキルの持続時間が計り切れないからこそ「超加速」を使って来ない。逆に「超加速」のタイムアップでそんな隙を見せたなら、俺は容赦無くスキル満載、攻撃力倍率ドン!更に倍!のバッティングで仕留めに掛かるだろう。


 迫り来る横薙ぎの斬撃をバットに手を添えて受ける。どうやらさっきより本気出して来てるのか、トラックに衝突されたかと思う程の衝撃だった。


 まあ俺はこっち来る時死んで無いんで、トラック衝突は未経験なんだが。


 そんな重くて速い斬撃の連打を金属バットで受け流し、隙あらば反撃を試みているのだが…… まあ隙が無い。

 横薙ぎの一撃を体を低くして躱し、懐に入ろうとすると強烈な蹴りが来る。


「ゴフゥッ!!」


 ヤツの蹴りをバットと腕でガードしたつもりだったが、ガードごと蹴り込まれてふっ飛ばされて地面に転がる。


 痛えええー!! 地面に転がったまま体のダメージをチェックする俺。骨格に異常無し。ミリアさんの防御結界が無ければ大ダメージが入っていたかもしれない。


 転がったまま、やられたらフ(・)リ(・)をして休憩しながら考える。いやいや予想以上に強敵だわ。はてさてどうしたモンか…… もうちょい油断させて一瞬でも隙を作らなければ勝機が無いな。


「ふん、そんな程度でくたばるタマではなかろう?それとも寝転んだまま切り刻まれるのが望みか?」


 ゲパルトはやられたフリをする俺にそう言うと、大剣を振るって斬撃を飛ばしてくる。


「うおっ、危ねえ!!」


 飛び起きて斬撃を躱し、ゲパルトに向かってバットを八相に構えた。野球と「サムライマスター」の融合したスキル、「サムライジャパン」の能力を最大限に活かせる構えだ。


 さっきまでの剣戟で自分の身体能力が大体掴分かった。こっちの女神様から勇者認定を受けて上乗せされたパワーがどの程度なのか探りながら戦っていたが、何となく掴めた感じがしている。


「そんじゃ、今度は俺から行かせて貰おうか。」


「ほお…… 面白い。受けて立とう。」


 そんじゃぁ…… 八相の構えのままぐっど腰を落とし、一気に間合いを詰める。「盗塁王」は使っていないがかなりのスピードが出ている。


 間合いが半分になった所で八相の構えから左足を踏み込んで、スキル「素振り」からの衝撃波を放つ。


 放たれた衝撃波はかなりの広範囲攻撃だ。避けるのは難しい筈。予想通り魔剣を盾にして衝撃波を受けるゲパルト。ダメージは無いに等しいが目眩しには充分だ。


 その隙に俺はゲパルトの背後へと回り込みバットで袈裟懸けで振り下ろす。ガキン!と金属音が響きバットが魔剣に防がれた。


「中々素早いが……小賢しい。」


 更に追撃の斬撃を転がって躱すと俺は再び「素振り」からの衝撃波を放ち再び奴の背後へ回り込む。そして当然の様に死角からの攻撃を躱し反撃して来るゲパルト。


 三度、四度、同じ攻撃を繰り返す。四度目の時には掴んだ地面の土を投げつけ目潰しを狙った。だがそれもあっさりと回避され、カウンターの斬撃が飛んでくる。


「召喚勇者とは思えぬ卑怯者め。もう良い。これ以上は楽しめぬ。死ぬがいい。」


間合いを外して五度目の衝撃波を放つ為「素振り」のモーションを取った。その瞬間を狙ってゲパルトが間合いを詰め上段から今までとは桁違いの剣撃を放ってくる。


「衝撃波を撃つ為にはそのモーションが必要なのだろう?

どれ程かと見逃していたが隙だらけだ。下らん。」


 先程迄の高揚は何処へやら。奴は面白く無さそうな顔でそう言った。


 上段から振り下ろされる魔剣。確かに今までの攻撃より速く鋭いが…… 裂帛の気合いを感じない。敢えて何度も同じ攻撃を見せたら奴が引っかかった!!


 待ってたぜェ! こんな気の抜けた攻撃を。油断し過ぎだぁ!俺は八相の構えから左手だけでグリップを握り右手をバットに添えた構えにシフトした。そして正に俺を切り裂こうと振り下ろされた魔剣にバットを合わせる。


『セーフティバント(パリィ)発動!』


 ここ迄無言だった「敏腕マネージャーからナビが入り、特殊エフェクトとともに金属バットが斬撃の魔剣を爆発的に弾き飛ばす。


「ぬおっ!?」


 ゲパルトの口から驚愕の表情と共に声が漏れた。既に奴の魔剣は頭上へと弾かれ体は泳いでしまっている。


「貰ったぁ!!!!」


 俺は叫びながらセーフティバントの構えからバッティングフォームへ。

バスターだ。(厳密には違うが。)


『「盗塁王」「逆転王」「ジャストミート」「パワーヒッター」発動!!攻撃力256倍!!更にに現地女神の「勇者認定」が発動!倍率ドン!更に倍!」


 「敏腕マネージャー」が発動スキルをナビゲート。盗塁王で加速された俺の渾身のバッティングがゲパルトの胴体を捉えた。


 鎧が吹き飛び放物線を描き宙を舞うゲパルト。だが……地面に叩き付けられる寸前でくるりと一回転し、立膝で着地する。


「ちっ……躱しやがったかあのヤロウ。」


これ以上無いタイミングで作った隙に「盗塁王」で超加速して放った渾身のスキルガン盛りバッティング。


 ヤツの鎧をインパクトで打ち砕き、ダメージが肉体に伝わる寸前でスキル「超加速」で直撃を回避したのだろう。


 よもやあの一撃を凌ぐとは…… もはや敵ながら見事としか言い様が無い。ゲパルトを見るとゆっくりと立ち上がった所だった。


「油断……いや違うな。余りにも退屈でつまらぬ戦続きで慢心しておった様だ。正しく目の覚める一撃、喝を入れてくれた事、感謝する。」


 多少なりともダメージを受けたのだろう。肩で息をしながら魔剣を構え、ヤツは俺にそう告げた。


「だが、もう油断せぬ。全力で貴様を倒し、卑怯で薄汚れた召喚勇者の魂を我らが神へと献上しよう。」


 ゆらりと一歩踏み出したゲパルト。先程までとは訳が違う。奢り、慢心の無い殺気に溢れている。


 マズいな。さっきの一撃で倒せなかったのが痛すぎる。

スキルガン盛りのバッティングが入れば如何に防御力が高くても絶対に耐えられない、一撃必殺だと思っていた。それをまさか強引に直撃を回避して来るなんて予想外だ。


 ゲパルトがグッと腰を落とした。その瞬間ヤツの姿が消える。 と同時に頭の中に鳴り響く「牽制球感知」の危険アラート。左だ!!


 ガキンと甲高い金属の打ち合う音と共にガードごと吹き飛ばされる。マズい、浮かされた! 


 「牽制球感知」の発動によって自動的に「盗塁王」も発動している。ゲパルトも斬撃を放つ瞬間から「超加速」を発動している様だ。浮かされた俺に超加速空間でスローになったヤツが迫り、止めの斬撃が首元へと放たれる。


 右手に持つバットを首と斬撃の間へ差し込もうとするが俺の動きも超スローだ。イカン!間に合わん!


『召喚を!!新スキル「防具召喚 左打席用ヘルメット」を!!」


「!?、了解!!左打席用ヘルメット召喚!!」


 「敏腕マネージャー」の緊急ナビゲートでヘルメットを召喚すると、頭に左側に耳から顎までガードのついた黒い野球用ヘルメットが装備された。そして駄目元でバット召喚を解除して、迫り来る奴の魔剣と首の間の空間への召喚を試みる。


 手にしたバットが消失した感覚、その後に来た大砲で撃たれたかと思うほどの衝撃。宙を舞う感覚が数秒続き、地面に叩き付けられて転がる俺。


 お、おい…… コレ…… まさか…… 首だけで転がってるって事は……


『イチロー様!!御安心を!大ダメージですが首から下も一緒に転がってます!!」


 良かった!!けど、マネージャー!言い方ァ!! 


 何回転か転がって、ヤ○チャみたいな格好で地面に倒れた俺。遅れてやって来た痛覚にのたうち周りたいが痛すぎで逆に動けない。だが…… 全身痛いって事は生きてるって事で手足の先迄神経が繋がってるって事だよな?


 かなりサイコパスな感じの状況確認から気合いで身体を起こしてゲパルトを見ると奴も魔剣を支えに片膝を付き息を荒げていた。


 どうやら先程のバッティングの一撃は鎧を砕いただけでは無く、仕留めるには至らないまでも大ダメージを与えていた様だ。それが原因で「超加速」の身体負荷に耐えられなかったのだろう。


 とは言え俺も大ダメージで動けない。「敏腕マネージャー」から「超回復」が発動中とのナビが入るがまだ全く動けない。 


 先に動ける様になった方の勝ちの状況だ。ゲパルトから目を離す事無く警戒しているとヤツの身体から湯気が上がり始めた。どうやらヤツも「超回復」持ちの様だ。


 マズい。このままではヤツの方が先に……


 そう思った時、俺の体を温かい波動が包んだ。


 それは俺の心を鼓舞する様な、身体の奧から力が湧き出す様な感覚。コレは……?


 何となくその波動の来る方向を感じ目を向ける。それは王都城壁の前、ミリアさんが作ったお立ち台の上からだった。


 「選球眼」を発動し、超ズームで見るとそこにはチアガール姿で俺を応援してくれるマリナ姫達の姿があった。


「「「「フレー!フレー!イチロー!」」」」


「「「「頑張れ!頑張れ!イチロー!」」」」


 ヘソ出しミニスカートの青と白のチア衣装。胸には「チーム イチロー」のカッコよくデザインされたロゴまで入っている。そんなチアガール4人が横一列でメタリックのポンポンを振り、スニーカー生足を蹴り上げて俺に向かってチアリーディングで応援をしてくれていた。


 って!?四人!? い、いや、左端の髪の青い爆乳美少女は誰!?


『彼女はドーラさんです。先程の先制攻撃で大量の経験値を獲得した為、蒼龍から神蒼龍へと種族進化し「人化」のスキルを獲得しております。」

 

 マネージャーが俺の思考を読んで答えてくれた。えええ!ドーラなの!?マジですか!? めっちゃ可愛いですやん。 マジで○アラなんて名前付けなくて良かった

……


『「イチローガールズ」の皆さんからメッセージを頂いております。

「この戦い、必ず勝って下さい。勝ってくれたら今夜の慰労会、ドーラさんと四人でチアガール服でお邪魔しますから。」との事です。』


 その言葉を聞いた瞬間、身体の奧から湧いていた彼女達の応援パワーが火山の若く大噴火した。


『こ、これは!?発動条件「あの娘(達)との約束」をクリア!!


裏モード 煩悩スキル「君の為にホームランを打つよ!」が発動!!』


 何やら裏モードとやらが発動したらしい。猛烈な勢いで回復していく体の熱さを感じながら俺はゆっくりと立ち上がった。
























 今回も読んで頂きありがとうございます。面白い、読んだ事無い様なストーリーをと頑張って書いております。


 面白かった、先が気になる、と思って頂けたら、ブクマ、星評価、感想お願いいたします。おっさんの励みになりますので。


次回予告!!

姫達の声援によって裏スキルが発動するイチロー!お互い限界突破の戦いに決着の瞬間が訪れる。


時間第11話 「野球凶の歌」

で宜しくどうぞ。


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