特別な理由
ニライカナイ編は、伏線回収や謎だった小さな点の解消等をしていくところになると思うので、回想とかが多くなる可能性があります。
そこが苦手な方は本当に申し訳ないです。
転生概念豆知識31
主たちには各々役割が与えられており、理の範囲内でのみ概念を扱うことが可能。
「こ、ここは......」
「オボツカグラの最果てだ」
ハデスの後を着いてくると、そこには極楽浄土の如き様相をした土地。オボツカグラという死の果てに、これほどに美しい土地があるのかとカラ達は教学する。
「ここは死の向こう。あの世だ」
「あの世...」
「ここでお前にファイキュリアを教える」
シフィは辺りを見渡した後、おずおずと手を挙げる。
〝あ、あの...質問いいですか...?〟
そんなシフィを見て、ハデスは無言で頷く。教える立場である以上、教え子の疑問には答えるべきだと判断した為だ。
〝どうしてここに来たのですか...?〟
「...ここには生命エネルギーが溢れていてな。回復魔法の神聖化には都合の良い場所という訳だ」
「うん。確かに理にかなってる理論だ」
ハデスの言葉にソロモンは納得の様子を見せる。すると、何かが気になったカラがソロモンに質問をする。
「回復魔法に生命エネルギーが必要なの?」
その質問にソロモンは喜んで解説し始める。
「そうだよ。まず回復魔法は対象者の治癒量に依存する魔法でね。例えば対象者が瀕死の状態であれば、さほど回復はしないという原理になる。しかしこの復元魔法には周囲の生命エネルギーが必要とされる。だからこういった生命が溢れんばかりにある場所で教わるのは理にかなっているんだ」
〝そうなんだ...。魔粒子以外にも必要な...。それほど難しいから回復魔法の適正者が少なかったりするんですか?〟
シフィはそう質問すると、ソロモンは顎に指を添え、うーんと唸り声を出す。
「少し違うかなぁ...。回復魔法という魔法の使用者が光魔法、闇魔法に次いで少ないのはボクが原因だよ」
と、ソロモンはハデスとシフィが修行しているのを見つめながら、回復魔法が生まれ、そしてなぜ希少性がここまであるのかを語り始める。
「あれはどのくらい前なんだろうか...。もう忘れてしまったけど、ボクがまだ魔法を研究してそこまで時間が経っていないくらいだった気がする────」
────アルカディアが建国してから1500年が経ったある日。ソロモンは王としての仕事をしつつ、合間があれば魔導研究をしていた時期。ソロモンはとあることを疑問に持つ。
(そういえば、神聖化にする必要がないと思って後回しにしていたが...。回復魔導って神聖化したらどうなるんだ...?)
ソロモンは1度不思議に思うと、それを解決せずにはいられない体質であり、更に思い立ったが吉日をモットーにしているため、行動は早かった。そしてソロモンはこの時期より前には複数個の神聖化に成功させているため、回復魔法もそう時間はかからなかった。
「よし...。成功した...」
しかし、問題はその効果であった。本来、生命にとって死は必然であり、蘇るという現象はあってはならないのだが、進化した回復魔法がどれほどのものかと生物に実験をしていた際、ソロモンは蘇生を見てしまった。
──人の手で...生命の蘇生......だと?
「これ、マズイでしょ...。禁忌の部類に入って無いのに生命を蘇生させるなんて...。回復魔導を知らずに獲得し、神聖化してしまったら...」
──ありとあらゆるところで死者が蘇る。それこそ理の崩壊が発生する。
体内にいるソレも警告を促すと、ソロモンは大慌てで上へ上へと飛んでいく。
そして目的地であるエリュシオンについたソロモンは第一声。
「主はいる!?1柱だけで良い!緊急会議を行わさせてほしい!」
と、大勢の天使たちが見ている中、真剣なトーンかつ大声でそう叫ぶ。
その後、天使たちに抑えられるがソロモンは挫けず、主の所在を何度も聞く。すると、その願いのおかげかオリンポスの中からユピテルが現れる。
「何事?こっちは昼寝の邪魔されて少し苛立...って。アンタは確か...人類初の......。何でアンタがエリュシオンに?」
「魔導について研究したらかなりマズイことが分かったの...。一旦話を聞いてくれない?」
「...その表情。只事じゃないわね...。良いわ。アタシに話してみなさい?」
そうしてユピテルの許しを得、天使たちからの捕縛も解けたソロモンは、回復魔法を神聖化させて起きた事やリスクを事細かに説明する。
「...その魔法、誰か死んだ人間に試した?」
「いやどういう効果を持つのか、実験として動物に試したらそういう力だと把握してすぐさまエリュシオンに来たって感じ」
「さすが最初の国王。中に入って。すぐに他の主を呼ぶわ」
そう言うと、ユピテルはオリンポスへと入った後、自身の力を解放し、辺り一帯の空気を振動させる。空は一瞬で暗くなり、ユピテルの瞳には紫の稲妻が走っている。
「...前にも思ったがお前達の通信方法それしかないの......?」
そんな主達の通信の仕方に呆れるソロモン。すると、すぐさま他の主たちがユピテルの元へやってくる。
「なんの用じゃ?ユピテルよ。ここにワシらを呼んできて」
「そうだよ。オレら別に暇ってわけじゃねぇぞ?」
そう文句を言う主たちを無視し、ユピテルはソロモンが言ったことを全て話す。
「なるほど...。確かにマズいのぅ」
「...ゼウス。1番マズいのは今だぞ」
ゼウスの隣にいるウッコはゼウスに注意する。その言葉でやっと気づいたのか、ゼウスはハデスを宥めようとするがもう遅かった。
「此奴か...。此奴がワシの領域を勝手に踏み荒らしたのは!!何故生死の理を侮辱する物など産んだ!!」
そのハデスの激昂さ加減を見て、主たちは首を横に振る。
「...ボクがこの世界で最初の魔導師だ。この世界に魔導を組み込んだ責任がある。魔導が行き着く先は調べておかないとマズいだろう?」
「そんなもの...計算による予測で分かることだ!!」
「計算予測じゃ発生する影響を確定させられないし、前例が存在しないから研究して実際に起きることをこの目で見るしかない。それに魔導の種類によって起こる作用は全く違うものとなる。これは既存の物理学で当てはめることができるのかまだ確定していないからね。つまり回復魔導の神聖化は必要な研究なの、そこを理解して欲しい」
ハデスの理不尽な怒りを受け、ソロモンは冷静にハデスの目を真正面から見て答える。
「そうじゃ兄者よ。こうしてこの人間が研究してくれなければ、回復魔導が神聖化した時の弊害が知ることもなかったじゃろう?」
「......それでもだ。それでも此奴はワシの領域を踏みにじりよった...!!」
ハデスの放つオーラは死そのものの概念をその身に宿らせている。常人が触れれば死。近づけば死。見れば死。しかしソロモンには何も影響が無かった。
「っ...!!」
ソロモンの睨むような目つきに触発されたのか、怒りに身を任せ、ソロモンの首を絞める。
「殺すのか?ボクを...。ボクは人間だぞ?」
首を絞められているため、音魔法で自身の思っていることを伝えるソロモン。
「ハデス...!」
ウッコは止めるようにハデスの腕を掴む。その声にハッとし、主たちの顔色を伺う。その表情は呆れのような、諦めのようなそんな少し悲しげな様子が見て取れた。
「......ハデス...。お前が今行った事を人類殺害未遂とし、主から永久追放とする」
「なっ...!!」
「そりゃそうでしょ。アタシ達は主、本来人類を守る側。なのにアンタは逆に殺そうとした。例え人類が嫌いでも規則を破ったのなら当然の処罰」
青ざめていくハデスに対し、ユピテルは冷たく厳しい言葉を言い放つ。すると、ハデスの足元がすり抜け、そのまま下へと落ちていく。
「ま、待て...!!ワシは......ッ!!!」
堕ちた主は何かを言いかけるが、抵抗虚しく、下へ下へと堕ちていく。
ゼウスによる追放の宣告は空に浮けようが、同格の主であろうが関係なく堕ちる。それは理の力によって強制される行為である。
「......新たに主を探さねばならなくなってしもうたな...」
「...んじゃ。会議の続きと行こうか?確か回復魔導の神聖化...だったか?」
兄であるハデスが同じ主の座から居なくなり、かなり気分が落ち込んでいるゼウスの代わりに、ウッコが話を進め始める。
「そうね。その名も復元魔導。その効果には死者蘇生も含まれる...。これを改正しないといけないって話」
「もしその復元の力が制限されずに増えんなら、理の崩壊が発生すんなぁ...」
苦虫を噛み潰したような顔をするブラフマー。ほかの主たちも同じような表情になる。やはり重大なことになりかねないと、皆思っている様子。
「それを防ぐためには...。ですが私たちでは魔導を削除する事は...」
「お前たちはおろか、理を担当しておるワシでも不可能じゃろうな。魔導の更に深い根幹の部分、魔粒子そのものの法則を書き換えられる程の存在でなければな。じゃがその芸当は理の範疇を超えておる...」
「...ならどーすんだ?何か対策法でもあんのか?」
ゼウスの説明を聞き、ブラフマーはそう質問するが、誰も答えられずその場が静かになる。すると、そんな様子を見てソロモンは喋り始める。
「1つ。理に背かず、尚且つ回復魔導の対処法がある」
「...んだよ。あるならさっさと言えよ」
ソロモンのその言葉にブラフマーはいつも通りに厳しく言うが、ユピテルは彼の頭を殴る。
「イッテェッ!?」
「落ち着きなさいブラフマー。ソロモンがここに来なきゃアタシ達が罰を受けんのよ。そこんとこわかってるでしょ?」
「...チッ。わーったよ。めんどくせぇ」
ユピテルの忠告でブラフマーは大人しくなり、ゼウスやハデスのような長年主を担当している者は目を瞑る。しかし、それ以外の主には緊張が走る。
「今ユピテルが言ったように、ワシら主にはこの世界を守る責任がある。じゃから理に関わることを分かっていながら放置。あるいは出来ると分かっていながら他の者に任せるといった行為は、即時主の座から追放され...」
「連帯責任として、主全員がエリュシオンから永久追放。そして存在ごと抹消される」
その場に冷たい空気が流れたのかと錯覚させるくらいに、主達の表情に血の気が引いた表情をしている。
「...それじゃ、この件の重さも分かったところで。アンタの案を聞かせてくれる?」
「ボクの案は、“回復魔導の発現率を極端に下げ、神聖化を主達の誰か許可を必要とする”これを前提条件とする事。才能やその人の力量を加味するのは当たり前だとしてね」
ソロモンは自身が考えた案を主たちに話す。その意見を聞いた主たちは、その結果どうなるかというのを考える事に。
「ふむ...。確かにそれなら不可能では無いが...」
主らはゼウスの方を向く。この領域の芸当をなし得るのは主を統率するゼウス相当でしか無理な為、皆、ゼウスを見る。
「それならワシにも出来る範囲じゃな。今後生まれる回復を扱う者の発現率の低下、主の許諾付き神聖化。だいぶ良い条件じゃ。ワシはありじゃが...お前らはどうだ?」
「...そんなもんオレ達に聞くか?」
「ジジイが納得なら俺らはなんも言わねーよ」
そう言い、主たちはゼウスの決断に納得し、ソロモンの条件を理に組み込む事に。
「という経緯で復元魔導もとい、復元魔法の条件は厳しい上に、回復魔法の使用者は低いって訳。わかった?」
〝なるほど...。回復魔法の使用者が低い理由ってそれが理由なんですね...〟
「それなら納得だ。状態の復元...確かにヤバすぎる魔法だ。死者蘇生なんて...ん?」
するとカラは、先程のソロモンの話を思い返しながらハデスの方を向いて、何か疑問を抱く。
「ハデスが主の座から追放されたのがゼウスの条件前なら、どうやってハデスはその条件を知ったの?」
「それはゼウスがこのクソとの会議を終え、理を変えた後にワシにその件を話してきたそれだけだ」
自分の疑問に答えてくれたと言う驚きと、ゼウスとの仲の良さとで感情が混ざり、どのように反応して良いのか分からなくなるカラ。
〝えっと...。仲良し...なんですね...!〟
物怖じもせずにハデスに対してそんな言葉を言うシフィ。そんなシフィに驚愕するカラ達であった。
ハデスとソロモン。そして回復魔法の過去を知ったけどどう思う?
「んーそうですね...。色々合点が行きましたね。それに、ソロモンさんはやっぱり規格外だということも分かりました!」
まぁたしかにソロモンは規格外だね...。世界最初の魔法使いで、禁忌や一部の魔法以外全て神聖化してるし...
「それに、主と魔法について会議をしたことがあるというのがすごいです!!」
リノアが興奮している...。とても可愛いからもっと見たすぎるな
「......可愛い...です...か?そうですかね?」
うん。とっても
「えへへ...ありがとうございます!」




