堕ちた神格
色々ありつつ、考えつつでまたも少し遅れましたね。
ほんとうに申し訳ないです。読者の方々は気長に待っていただければこちらとしてはとても嬉しい限りです。
転生概念豆知識30
ニライカナイには人がおらず、死期が近い動植物のみしかない。それは微生物や魔粒子すらも例外なく。
「それにしても、どこ見ても荒れ果ててるね...」
1番下まで降りきったカラは辺りを見回し、第一声にそんなことを呟く。
「動物も、植物も、この空間に生きるものは存在せず、皆、死へと向かうだけ。それはこの大地ですらそうだ。この中に微生物は存在しない。だから地面が真っ白なんだ」
ソロモンの説明を受け、納得するカラ。辺りの土は白く、踏んでる感触は土というより岩肌やアスファルトに近い感覚だったからだ。
「だからさっき小さい石を触った時。砂みたいに砕けていったのか...」
〝え...。じゃあ。今踏んでるここも崩れちゃうんじゃ...?〟
クゥロが独り言のように呟くと、シフィが怯え始めるが、すぐさまソロモンが否定する。
「いや。それはないさ。崩れたのは小石ほどの小さな物質だけ。地面ほどの大きさになれば崩れることはほぼほぼ無いから安心していいよ」
〝そうですか...!良かった...〟
瞬間。遠くにいる何者かの気配がとんでもない速度でこちらに近づいて来る。それにいち早く気づいたソロモンは、一瞬で自身に残っている魔力でなんとか魔法を発動する。
「...まずは話を聞いてくれないか?ここの主と思しき者よ」
(ワシの攻撃を防いだ...?)
その相手は自身の攻撃が防がれた事に心の中で驚く。しかし攻撃が止むことはなかった。その激しすぎる攻防の嵐によって生じた風圧に、カラ達は必死に抵抗するが、徐々に後ろと押されていく。
「な、なんつー...ッ!!」
「介入できる余地がない...!!」
皆、顔を守り、ソロモンの所へ向かおうとするが、強風がそうはさせてくれず。進んでは戻されを繰り返される。
「くっ...!!」
このままではカラ達に被害が...。
直感的にそう理解したソロモンは、相手から溢れんばかりに滲み出ている魔粒子を逆手に取り、その余りに緻密すぎる魔粒子操作で、カラ達に影響を齎すあらゆるエネルギーを魔粒子を変換する事で完全相殺。
更に杖の先で2種の水素を魔粒子の運動によって超高熱で熱し、融合。そしてヘリウムなどへ転化する。
「...貴様......何を」
相手はソロモンが何かとんでもないことをしていることに一瞬で気づく。しかしその時には遅かった。
「へっ...核融合ってやつさ」
瞬間。核融合発生。それによって生じたその膨大なエネルギーを力技で操作し、ソロモンは光魔法を扱えないにも関わらず、光を模した疑似光魔法を相手に放つ事が可能となる。
「なっ────!」
奴を貫く刹那的な光線。その直後。眩い光と果てしない轟音が鳴り響くが、カラ達はソロモンの操作によって無音。爆発も、風圧も、ありとあらゆる影響が遮断されていた。
「な、何も見えない...」
辺りは爆発による煙などの影響で全く見えていなかった。すると、ゆっくりと音が聞こえ始める。
「一体何が...」
周りが全く見えず、困惑していると、突風が発生し、辺りの煙は薙ぎ払われ、次第に周りの光景が見え始める。
そしてカラ達は絶句する。何故か。それはソロモンが放った魔法によって起きた周りへの被害で理解した為。それは街一つを崩壊させるほどのあまりに大きな爆発だった為。
「こ、これは......」
「少しばかり力を出しすぎたかもね...。まぁでもアイツの攻撃がヤバいと思ったし...マシかな」
宙に浮きながら苦笑いするソロモン。その姿は爆発による影響でかなりの深手を負っているように見えた。
「ソロモン...。その怪我......」
「ん?ああ、大丈夫大丈夫。この程度の爆発じゃ僕は死ねないよ...」
と、ソロモンは自身の体に付いている煤を叩きながら言うが、少し物憂げな表情を一瞬だけする。
そんなソロモンを心配し声をかけようとするが、奥の方でドサッと何かが動く音が聞こえる。
「ま、まさか」
「...おいおいマジかよ......。あれ食らってまだ生きてるのか」
先程、ソロモンが攻撃した相手が傷だらけになりながらもゆっくりと向かってきているのが見える。
「常人ならば即死だろうが...生憎ワシは人ではないのでな。あの程度ではやられんぞ」
よく見てみると傷口が塞がっていってるのが分かる。それを見てカラ達は理解した。相手が不死身持ちの存在だと。
「へぇ...。君も不死身なんだね...」
──気をつけろ。此奴、神の匂いがする。それも堕ちた神のな
ソロモンの中にいるソレは警告を促す。それを聞き、驚きと納得を同時にする。
「...一応もう1回言うけど......。ボク達の話を聞いて欲しいんだ。どうかな?」
ソロモンはもう一度だけ、目の前の堕落した神と思われる存在に提案をする。しかしそんな話を聞く気などなく、魔法を繰り出し始める。
「やっぱ聞く気ないか...。これは時間がかかりそ」
ソロモンは再び相手の魔粒子を操作し、対抗するように魔法を繰り出そうとしたその時だった。眠っていた天使が目覚めた。その目覚めは、今居る空間が違えど、両者には全身に伝わっていた。
「こりゃまずいな...」
そう苦言を呈した瞬間。淡い光と共にメタトロンが二人の間にテレポートしてきた。
「メ、メタトロン!?」
「何で今起きてきたの...?」
とても大きな天使の翼が広がった瞬間、その大きさに比例する羽音が鳴り、メタトロンは重たい瞼をゆっくり開く。
「......どうして...。はですさまがここに?」
「へぇ...。納得」
「は!?」
メタトロンの口から衝撃の事実がポロッと出る。その言葉にカラ達は絶句し、思考が停止する。
「メタトロンか...久しいな。と言うことは貴殿らは敵では無いということだな...。すまない少々気が立っていたのでな...」
メタトロンからハデスと呼ばれるその男は、先程まで放っていた殺意マシマシの魔力を弱めていき、元いた場所へと歩いていく。
「はぁ...。やっと話を聞いてくれるようになった...」
ため息をつきながら、ソロモンも魔力を弱めていく。するとカラが肩に手を乗せ
「お疲れ様だよほんと」
と、ソロモンに労い言葉をかけながらハデスの後について行くカラ達。ソロモンは緊張状態を解き、苦笑いを浮かべる。どうやら内心焦っていた様子。
〝と言うより、神相手にあそこまで食らわせることが出来るの凄くないですか!?〟
「それはほんとに思う...。やっぱ魔法帝って呼ばれるだけあるんだね...」
「それ、イジりだよね...!?」
カラの発言にジト目で見つめてくるソロモン。そんなソロモンに思わず笑いながら謝る。
「あれ?ハデスって確か、失墜した神って話じゃないっけ...?」
〝え、そうなんですか...?〟
ふと何かを思い出したかのようにそんな事を口に出すクゥロ。その言葉にソロモンは頷く。
「そうだね。ただ、もっと言えばハデスと言う存在は堕ちた神と言うより、堕ちた主の方が正しいかな」
〝え...元々主だったのですか...!?〟
より正しい情報をソロモンから伝えられ、驚愕するカラ達。元主。つまりゼウスらと同じ立場にあったということだ。
「恐らくだけど、カラ君はハデスという存在をボクたち以上に知ってると思ってるんだけど、どうかな?」
「え...?あー。でもこの世界のじゃないけど...」
「大丈夫大丈夫!少しでも情報があればいいから」
ソロモンはそう言うが、カラは誤情報しかなかった場合どうするんだろう?と頭の中で疑問に思う。
〝カラさんの世界では、ハデスと言う存在がいるんですか?〟
「いるにはいるけど...。まぁ...物語みたいな感じでいるかな」
どう伝えれば良いのか分からず、1番無難な答え方をするカラ。
「んー...。空想の存在的な感じでいるって感じなのかな?」
「あ、そうそう!そんな感じ!」
クゥロがカラの言いたかったことを察すると、大きく頷きながら同意する。
〝空想の存在と言うことは、カラさんの世界には居ないということですか?〟
「まぁそういう事になるね。でも人や国によっては、神とかが実際にいるって主張する人もいるし、空想の存在だと言い切るのは少し違うかも」
〝なるほど...。色々あるんですねぇ...〟
カラは自身の世界にもいろいろ事情があることを話す。
「着いたぞ。ここがグソーの終点。万物の墓。オボツカグラ」
「ここが...」
「...先程の荒廃した雰囲気と違って、ここは...何も無い?」
周囲の光景を見て、クゥロは先程の場所との違いに疑問を呈すると、ハデスは一拍置いた後にオボツカグラについて話し始める。
「...ここ、オボツカグラは神ですら迎える最期を迎える...。その名も万物が眠る土地」
「万物が眠る......」
そんな仰々しい名前とは違い、周囲には何も無く、ただ空間があるだけと言う光景。そんなオボツカグラに疑問を抱いていると、ハデスはこちらを向いて、何かに座る。
「何から聞きたい」
冷たく刺すその目線には殺気という名の圧をまざまざと感じさせ、カラ達はその圧に気圧されてか、思わず固唾を呑む。
「まぁまぁ、そんな殺気立たないでよ。ボク達はただ、ある魔法について聞きに来ただけなんだ」
「...ある魔法だと?」
「回復魔法の神聖化した姿、復元魔法。その中の1つ。ファイキュリアという魔法について、だよ」
そう聞いた途端、ハデスはソロモンを睨む。カラ達はその表情を見て動揺し、小声で話し始める。
「ど、どうして?」
「ファイキュリアってそんなにヤバいものなの?」
〝わ、分かりません...〟
すると、ハデスはおもむろに立ち上がり、ソロモンの方へと近づく。とんでもない圧を出しながら。
「貴様...。それがどういうものか知っていながら言っているのか?」
「君たち、主間の出来事は知ってる。君がしでかしたこともね。でもそれとこれとは別だろう。ボク達はただファイキュリアという魔法が欲しいだけで、君がその魔法によって主から堕とされたのとは何も関係は無いはずだ」
琴線に触れたのか、ハデスは禍々しいオーラをこれでもかと放出し、これまで以上に圧をかける。それには殺意も混じっていた。
「貴様...やはりソロモンか。当時主だったワシや、他の主らに敬意を示さぬ態度を取った傲慢な人間...!!」
「今の時代、君のその考えは時代遅れと呼ばれるだろうね。カラ君達から聞いた感じ、他の主らの考えは変わっているけども、君は何一つ変わってない。そんなんだから主の座から降ろされ、エリュシオンから追放されるんじゃないのかい?」
「貴様...ッ!!」
事実という名の煽りを半笑いで言うソロモン。その言葉を聞いて更に怒りが増すハデス。主の事が嫌いな為か、ソロモンの憂さ晴らしとされてしまうハデスを心配し始めるカラ達。
「やはり貴様ら人間と会話するなど...」
〝ど、どうしてもダメなんですか...?〟
「このソロモンと言う人間に言え。この人間が...」
そう言いながらシフィの方を見ると、ハデスの顔はなにか驚いたような表情へと変わっていく。
「貴様...。まさかその模様...アマテラスの......」
〝え...?は、はい...!そうです......〟
不安げな表情をするシフィ。この模様がハデスの癇に障ったのだろうか。そんな類の言葉が頭の中で埋め尽くされる。
「...このクソ人間の発言はすべて不問とする。そこの人間の童よ、お主にだけワシと話せる権利をやる」
「え?マジで言ってんの...?」
急な意見の反転に思わずそんな言葉が出てしまうカラ。ソロモンのせいで怒り、話ができないと落ち込んだ瞬間だった為、拍子抜けだったのだ。
〝え、えと...。ファイキュリアと言う魔法をどうしても覚えたいのです...。なので、どうか教えてください...〟
「...良かろう。貴殿。名はなんと?」
〝シフィと言います。シフィ・コスト・シュルギラ〟
ほんの一瞬何かを考えたような素振りを見せたが、すぐさま頷き、どこかへと向かい始める。
「ファイキュリアを覚えたいのなら着いてこい」
「何処に行くのか聞いても...?」
「オボツカグラの最果てだ」
「貴様。何を見ている」
え?...えっと......。ダメですか?
「ふん。気に食わん顔だ」
あはは...なぜそんなに怒っているんですか?
「怒ってなぞおらん。ワシはただ静寂に暮らしたいだけじゃ」
あ、そ、そうですか...!それはごめんなさい......。




