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魔王殺しノクト(旧救世の闇魔法)  作者: 藤原 光希
雪精王国セレナリア編

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98/100

98話 出発

いつもお読み頂きありがとうございます。とうとう新たな章がスタートしていってます!

ぜひお楽しみ下さい!

 翌朝、ノクトたちは旅館の一階にある小さな喫茶室に集まっていた。


 大きな窓の外には、朝靄に包まれた山々が広がっている。木々の葉には露が光り、遠くからは鳥の鳴き声が聞こえていた。他の国の騒がしさが嘘みたいに、旅館の朝は穏やかだった。


 ノクトは湯気の立つコーヒーを口に運び、静かに息を吐いた。


「朝のコーヒーって、なんでこんなにうまいんだろうな」


 隣ではノエルが温かいハーブティーを両手で包み込むように持っていた。


「僕はこっちの方が好き。体がぽかぽかするから。」


 ライナは甘いミルク入りの飲み物を嬉しそうに飲みながら、焼きたてのパンにかじりついている。


「これおいしい!朝から幸せ!」


 エリシアは紅茶を上品に飲んでいて、どこか機嫌が良さそうだった。何気ない会話。温かな飲み物。窓から差し込む柔らかな朝の光。


 戦いに追われ続けてきた四人にとって、その穏やかな時間は、ほんの少しだけ世界が優しくなったように感じられるものだった。


 ノクトがコーヒーを飲みながら新聞を手に取る。すると興味深い記事が一面に堂々と出ていた。


「セレナリアが魔王軍に占領されたらしい。セレナリアほどの国を相手にできるってことは、恐らく六魔星による可能性が高い。セレナリアに行けば何か分かるかもな。」


「なら次の目的地はセレナリアね。」とエリシアが言った。


「どうしたのノエル。何だかぼうっとしてる。」

 

 ライナが元気のないノエルを心配して声を掛けた。


「ごめん、ちょっと考えごと‥‥‥


 セレナリアは僕の生まれ故郷なんだ。だから今のセレナリアの状況が気になって。」


「ノエルはセレナリア出身なのね。あそこは確か雪の国で、氷属性の魔法使いがたくさんいると聞いたことがあるわ。」とエリシアが言った。


「うん。セレナリアの魔法使いは殆ど氷属性だね。水属性も少し多いんだけどね。」


「一刻も早く救いにいかないとね。絶対に魔王軍からノエルの生まれ故郷を取り戻すよ!」


 ライナが立ち上がった。その目は決心に燃えていた。


 彼らはヴォルツを破ってからというもの、幾つかの国を巡ってきた。しかし六魔星と出会うことは一切なかった。だが今回はきっと六魔星がいる。場には緊張感が漂っていた。


「もし六魔星がいたら俺が相手にする。皆んなは俺の護衛を頼む。」


「闇魔法が使えるようになってから随分と強気じゃない。」


 エリシアが薄ら笑いを浮かべて口にした。


「強気なわけじゃない。ただ仲間が傷ついて欲しくないんだ。」


「そんなの私たちも同じよ。それにあなたの闇魔法よりも私の光魔法の方が強いわ。あなたにだけ任しておくわけにはいかないのよ。」


「まぁまぁ。みんなで頑張ろう。サポートは僕に任せて。全力でするからね。」


 ノエルが気まずくなりそうだった空気を持ち直すために口を開いた。


 ノクトとエリシアは当分の間、冥澄めいちょうの魔法を使っていなかった。個々が自分の魔法に自信を持っていたので、お互いに自分とは異なる属性の力を必要とはしなかったのだった。特にノクトがそうだった。


 ノクトはノクティルに不思議な力を授かったあの日から、何とも言えない不快感に悩まされていた。まるで自分の心臓の奥にドロドロとした闇の塊があるみたいで、その塊がノクトに更なる闇属性マナの生成を命じているかのように思えたのだった。何故か闇魔法が使いたくて仕方がない。そんな不思議な違和感にずっと苦しめられていたのだった。更にもう一つノクトを悩ませる問題があった。それはノクティルがノクトに言い放った言葉。


「お前は本当に自分の意思で父親を殺したと思うか?」


 ノクティルのあの発言はいったい何を意味しているんだ?まさか俺はノクティルに幻術魔法で操られて父を殺したとでも言うのか?でもいったいどうしてノクティルが父を殺す必要があったんだ?


 ノクトは自分自身が分からなくなっていた。もし本当にノクティルに操られた結果によってノクトが父を殺害したならば、彼のの魔王軍に対する反感はノクティルの幻術魔法によるものになる。ノクトは深く考え込んだ。もしかすると俺は魔王軍を悪く思っていなかったのか?俺が自らの正義で魔王を倒したのでなかったら、俺の今まで貫いてきたと信じていた自らの正義とはいったい何なのだろうか。


 ノクトはこの世界が誤っていると信じて父を殺したはずだった。でもその思いが自らのものでないならば、結局自分自身は父と同じ暴力を肯定する魔王軍の人間になってしまう。この考えは非常にノクトを苦しめた。いったいノクティルは何を考えてあのような発言を俺にしたのだろうか。ノクトは自分自身が怖くて仕方なかった。何にもかんにも分からなすぎたのだ。


 「また考え事をしているわね。最近おかしいわよ。」


 エリシアがノクトに言った。


「悪い。」


「やっぱりあなた1人じゃ何もできないわよ。私も一緒に戦うわ。なんせ相手は六魔星なのかもしれないんだから。」


 ノクトはうつむいて黙った。


「さぁ、準備ができたら出発しよう!アタシたちは最強のパーティーなんだから絶対に大丈夫だよ!」


 ライナが持ち前のポジティブでその場を癒す。彼らは一息つくとすぐさま出発の準備をする。雪精王国セレナリア。彼らはノエルの生まれ故郷である雪国に向かって、新たなる強敵と戦うために歩み始めたのだった。

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