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救世の闇魔法――魔王の子と光の王女――  作者: 藤原 光希
ネフェルナ一族のライナ編

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82話 ヴォルツの奥義魔法

今日から祝日の5日間は毎日投稿をします!


ぜひ楽しんで下さいね!

 赤い爆炎と黒い炎が入り乱れる。


 王室の天井が砕け、瓦礫が落ちる。玉座は半分吹き飛び、壁に刻まれた紋章も熱で歪んだ。


 その中を、ヴォルツが笑いながら突っ込んでくる。


「やっぱ面白ぇな、ノクト!」


 爆装拳を纏った拳が、黒焔の渦を突き破る。


 ノクトは咄嗟に身を捻った。だが完全には避けきれず、爆風が肩を抉る。


「っ……!」


「遅ぇ!」


 ヴォルツの蹴りが腹に入った。


 接触した瞬間、爆発。


 ノクトの身体が宙に浮き、石床へ叩きつけられる。息が詰まった。肋骨が軋む。だがその痛みの奥で、黒い塊がさらに強く脈打った。


 ノクトの瞳に、暗い光が宿る。


「……闇印解放」


 ヴォルツが足を止めた。


「あ?」


 ノクトはゆっくり立ち上がり、杖を床へ突き立てた。


闇印解放あんいんかいほう――黒焔魔人こくえんまじん顕現けんげん


 ノクトの背後で、黒い炎が人型を取った。


 巨大な魔人だった。


 顔はなく身体は黒焔でできている。肩は広く腕は太く、燃え盛る影そのものが戦士になったような姿をしていた。魔人がゆっくり拳を握るだけで、王室の床に黒い焦げ跡が広がっていく。


 ヴォルツの口元が吊り上がる。


「いいじゃねぇか。そういうのを待ってたんだよ」


 ヴォルツが地面に掌を叩きつけた。


爆界裂掌バッカイレッショウ!」


 円形の爆発が床を走る。


 王室全体がめくれ上がるほどの爆撃。だが黒焔魔人が前へ出て、両腕を交差させた。爆発の輪が魔人に直撃し、黒い炎の身体が大きく揺れる。


 それでも崩れない。


 魔人は爆炎を押し割り、巨大な拳をヴォルツへ振り下ろした。


「ちっ!」


 ヴォルツは爆発の反動で横へ跳ぶ。拳は床を砕き、黒焔が亀裂の奥へ流れ込んだ。


 ノクトも同時に踏み込む。杖先に黒焔が集まる。


黒焔燼砕コクエンジンサイ


 ノクトが杖先を床へ落とすと、黒焔が粉のように散った。


 燃え上がらない。ただ黒い燃えかすだけが静かに舞う。


 ヴォルツがそれを見て、本能的に後ろへ下がった。


「やべ――」


 次の瞬間、その燃え滓が一斉に反転する。


 内側へ潰れ、圧縮され――


 ドン、と遅れて爆ぜた。


 黒い衝撃が王室を割り、瓦礫と熱をまとめて砕き散らす。ヴォルツの身体が爆風に呑まれ、玉座の残骸へ叩きつけられた。


 黒い灰の雨が降る。


 ノクトは荒い息を吐いた。


 だが、土煙の向こうから笑い声が聞こえた。


「ハハ……ハハハハッ!」


 ヴォルツが立ち上がる。


 額から血を流し服は裂け、片腕には黒焔の焦げ跡が残っていた。それでも目は死んでいない。むしろさっきより楽しそうだった。


「やっぱ六魔星殺しは違うな。最高に楽しいぜ。」


 ヴォルツの全身から、赤黒い魔力が噴き上がる。


 空気が変わった。


 王室そのものが、爆発前の沈黙みたいに震え始める。


「でもなノクト。俺だって六魔星なんだよ」


 ヴォルツが両腕を広げた。


 床が爆ぜる。

 壁が爆ぜる。

 空気そのものが火薬に変わっていく。


「見せてやるよ。俺の最終兵器を」


 ノクトは杖を握り直した。


 黒焔魔人が背後で唸る。


 だがヴォルツの魔力は、それすら呑み込むほどに膨れ上がっていた。


爆神降臨バクシンコウリン――終焉烈界シュウエンレッカイ


 その詠唱と同時に、王室が戦場ではなくなった。


 そこはもう、爆発そのものの領域だった。


 床も、壁も、天井も、空気さえも赤黒く脈打っている。石の隙間から火花が吹き出し、砕けた柱の破片が宙に浮かんだかと思えば、次の瞬間には内側から爆ぜて粉々になった。


 爆発が起こっているのではない。この空間そのものが、いつ爆ぜてもおかしくない巨大な爆弾に変わっていた。


ヴォルツの身体から、赤黒い魔力が絶え間なく噴き上がる。彼の皮膚には爆炎のような紋様が走り、瞳の奥では火花が弾けていた。


「どうだよ、ノクト」


 ヴォルツが笑う。


「これが俺の最終兵器だ。この空間の中じゃ、俺の意思ひとつで何もかも爆発する。床を踏めば爆発。息を吸えば爆発。魔力を動かせば爆発。逃げ場なんてどこにもねぇ」


 ノクトは杖を構えたまま、周囲を見渡した。


 確かに厄介だった。


 壁に触れれば爆発。

 床に力を込めれば爆発。

 迂闊に魔力を広げれば、その魔力そのものを爆発に変えられる。


 ヴォルツが得意とする派手な爆発魔法とは違う。これは領域支配に近い。王室全体を自分の魔法の腹の中に変え、相手の動きすべてを爆発の引き金にする魔法。


 六魔星の名は伊達ではなかった。


「さっきまでの余裕、どこ行った?」


 ヴォルツが足元を軽く踏んだ。


 それだけで、ノクトの立っている場所が爆ぜた。


 ドゴォンッ!!


 爆炎が足元から噴き上がる。ノクトは咄嗟に黒焔を纏わせて防ぐが、衝撃までは殺しきれない。身体が後方へ弾かれ、石床に片膝をついた。


「っ……!」


「ほらな。動かなくても死ぬぜ?」


 ヴォルツが指を鳴らす。


 今度はノクトの左右の空間が爆ぜた。見えない壁に挟まれるような衝撃が走り、黒焔が削られていく。


 ノクトは奥歯を噛んだ。


 強い。


 ヴォルツはグラヴィルやノクティルほどの底知れなさはない。だが戦闘における破壊力と瞬間火力だけなら、六魔星の中でもかなり厄介な部類だった。


 まともに付き合えば、押し切られる。


 だがそれでもノクトの目は死んでいなかった。


「なるほど」


 ノクトが小さく呟いた。


「あ?」


「お前の魔法は、空間全体を爆発の条件に変えている。けど全部を一度に爆発させるわけじゃない。お前が意識して、爆発させる場所を選んでるんだ」


 ヴォルツの笑みが少しだけ消えた。


「だったら何だよ」


「それなら隙はある」


 ノクトはそう言って立ち上がったのだった。


読んで頂きありがとうございました!


これから1話から自分でも読み直して、編集もしていこうと思います!ぜひ末長く救世の闇魔法をお願いします!

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