81話 ノクト VS ヴォルツ
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ノクトはヴォルツの王宮に足を踏み入れる。
「ここからは俺1人で充分なんで。皆さんはどうか安全な場所にいて下さい。」
セレフィナがノクトを真っ直ぐに見つめて口を開く。
「私たちはここで囚われたエルフを解放するために動くわ。どうやら警備も手薄みたいだし、戦闘を得意とするエルフをたくさん連れてきたから。私たちのことは心配しないで、あなたはヴォルツとの戦いに集中してね。」
セレフィナは全力を尽くして父を救いたかった。もちろん他のエルフたちも。だからここで王宮を後にするわけには行かなかったのだ。
「確かにヴォルツは1人が好きだから、殆どの部下はエリシア達のもとに向かっている可能性もある。今だって奇妙なくらい静かだ。でも黒翼将レベルがいる可能性もあるから、無理しないように。」
「ええ。あなたもね。」
ノクトはセレフィナ達を見送った後、1人で王室に繋がっているであろう道に進む。王宮の奥へ続く回廊は、不気味なほど静まり返っていた。
足音だけが石床に乾いて響く。壁には赤い結晶灯が等間隔に埋め込まれ、薄暗い通路を血のような光で照らしていた。ところどころに焦げ跡が残り、爆発魔法で抉られたような亀裂が床や柱に走っている。その荒々しい痕跡だけで、ここがヴォルツの城だと分かった。
ノクトは漆黒の杖に手を添えたまま、一歩ずつ奥へ進む。
途中、数人の魔王兵が立ちはだかった。だがノクトは足を止めない。黒焔が広がる度に敵は声を上げる間もなく崩れ落ちた。狭い通路に人の焦げた匂いが広がる。それでもノクトの歩みは乱れない。
やがて回廊の先に、巨大な両開きの扉が現れた。
黒鉄で作られたその扉には、爆ぜる炎を模した紋様が刻まれている。隙間からは赤い光が漏れ、内側に渦巻く莫大な魔力が肌を刺した。
ノクトは確信する。
――この先にいる。
ゆっくりと扉に手をかける。重たいはずの扉は、意外なほどあっさりと開いた。
その先は、広大な王室だった。
高い天井。崩れかけた玉座。赤黒い火花が漂う広間の中央で、一人の青年が気だるげに腰掛けている。足を組み、頬杖をついたまま、まるで最初から来るのを分かっていたかのように笑っていた。
「……よう、ノクト。やっと来たか。」
ヴォルツだった。周りには怯えた顔をしている女性エルフが何人も突っ立っていた。
「あの女は一緒じゃないのか?」
「ああ。お前とサシで戦いたい。」
ヴォルツか声を上げて笑い崩れる。
「ハハハッ!サシってお前は1人では戦えないだろうが!あの女なしでは魔法もろくに使えないじゃないか!まさかあいつを連れてきてないんじゃないだろうな!?」
「お前は口の利き方が偉そうなんだよ。」
ノクトが黒焔を爆発させた。黒焔が王室の床を這う。
赤黒い火花が漂っていた広間に、漆黒の炎が混ざった。空気が重く沈み、周囲にいた女性エルフたちが小さく悲鳴を上げる。
ヴォルツは頬杖をついたまま笑っていた。
「おいおい。そんなに怒るなよ。せっかく客として迎えてやってるんだぜ?」
「エルフを盾にしておいて、何を言ってるんだ。」
ノクトの声は低かった。
ヴォルツは肩をすくめる。
「盾? 違う違う。こいつらは保険だよ。俺の城を隠す結界を維持するための、な」
周囲のエルフたちは、怯えた顔で立ち尽くしていた。手首や首元には赤い術式の鎖が絡みついている。逃げることも、逆らうこともできないようだった。
ノクトの目が細くなる。
「今すぐ解放しろ。」
「命令すんなよ、裏切り者」
ヴォルツの笑みが消えた。
次の瞬間、玉座の周囲に赤い魔法陣がいくつも浮かび上がる。ぱちぱちと小さな火花が弾け、床の亀裂から熱が噴き出した。
「お前さ。分かってねぇんだよ。俺はお前が嫌いなんだ」
ヴォルツはゆっくりと立ち上がる。
「魔王様を殺した。ヴァルグラン様も殺した。魔王軍を滅茶苦茶にした。それで今度は俺の国に来て、俺のやることにまで口を出す」
彼の指先に、小さな爆発が生まれた。
「なぁ、ノクト。お前、自分が正義だとでも思ってんのか?」
「思ってない」
ノクトは即答した。
「俺は正義なんかじゃない。けどお前らのことを全力で止める。それだけだ」
「やれるもんならやってみろ。」
「そのためにここにきたんだ。どっちが強いかケリをつけよう。だからそこのエルフは解放してくれ。戦いの邪魔になる。それとも俺に勝つための保険か?」
ヴォルツの口元が歪む。
「いいねぇ。そういう顔、ぶっ壊したくなる」
次の瞬間、ヴォルツが指を鳴らした。するとエルフを束縛していた赤い鎖が弾け落ちる。
「失せろ!」とヴォルツが叫んだ。その瞬間にエルフは逃げるように部屋を出ていく。
「もう我慢できない。殺してやるよ!」
「やれるもんならやってみろ。俺も全力で殺しにいく。」
ヴォルツが一歩踏み出した。
その瞬間、足元が爆ぜた。
ただ走ったのではない。爆発の反動で、自分の身体を弾丸のように撃ち出したのだ。
「爆装拳」
赤橙の火花を纏った拳が、ノクトの顔面へ迫る。
ノクトは杖を横に構えた。
拳と杖がぶつかった瞬間、爆発が起こる。
ドンッ!!
衝撃で王室の床が砕け、ノクトの身体が後方へ滑った。だが倒れない。黒焔が足元から噴き上がり、爆風を押し返した。
「へぇ。今のを受けるのかよ」
「軽い」
ノクトが低く言った。
ヴォルツの眉がぴくりと動く。
「言うじゃねぇか!」
ヴォルツが指を弾いた。
「爆閃弾破!」
赤橙の光球がいくつも生まれ、弾丸のようにノクトへ飛ぶ。ひとつひとつが小さな爆発核だった。壁にかすっただけで石柱が抉れ、床に触れた瞬間に破片が飛び散る。
ノクトは杖を床へ突き立てた。
「黒焔葬」
黒い炎が足元から一気に広がった。
爆閃弾破が黒焔に触れた瞬間、赤い爆発と黒い火柱がぶつかり合い、王室の空気が歪む。爆炎は派手に弾けたが、黒焔は静かに燃え続けた。まるで相手の魔力そのものを喰らうように、赤い火花を呑み込んでいく。
ヴォルツの笑みが深くなる。
「なんだよ。ちゃんと使えるじゃねぇか。あの女なしでも」
ノクトは胸の奥に意識を向けた。
そこには、ノクティルに埋め込まれた黒い塊があった。闇の心臓みたいに脈打ち、ノクトの魔力を無理やり押し広げている。
気味が悪い。
けれど今は使うしかない。
「お前を倒すには俺1人で十分だ」
「なら試してやるよ!」
ヴォルツが両手を広げた。
「連爆雨!」
頭上に無数の火花が生まれる。
次の瞬間、それらは雨のように降り注いだ。小さな爆発が床を埋め尽くし、逃げ場のない爆炎が王室全体を覆っていく。
ノクトは黒焔を渦に変えた。
「黒焔旋獄――ッ!!」
闇が爆ぜた。
炎が螺旋を描き、竜の咆哮のような轟音が響く。黒焔の渦が天と地を繋ぎ、降り注ぐ爆発の雨を次々と呑み込んでいったのだった。
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