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救世の闇魔法――魔王の子と光の王女――  作者: 藤原 光希
ネフェルナ一族のライナ編

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81話 ノクト VS ヴォルツ

今日もありがとうございます!


GWの2〜6日は毎日投稿をしようと思います!ぜひ連休は救世の闇魔法を堪能して下さいね!

ノクトはヴォルツの王宮に足を踏み入れる。


「ここからは俺1人で充分なんで。皆さんはどうか安全な場所にいて下さい。」


 セレフィナがノクトを真っ直ぐに見つめて口を開く。


「私たちはここで囚われたエルフを解放するために動くわ。どうやら警備も手薄みたいだし、戦闘を得意とするエルフをたくさん連れてきたから。私たちのことは心配しないで、あなたはヴォルツとの戦いに集中してね。」


 セレフィナは全力を尽くして父を救いたかった。もちろん他のエルフたちも。だからここで王宮を後にするわけには行かなかったのだ。


「確かにヴォルツは1人が好きだから、殆どの部下はエリシア達のもとに向かっている可能性もある。今だって奇妙なくらい静かだ。でも黒翼将レベルがいる可能性もあるから、無理しないように。」


「ええ。あなたもね。」


ノクトはセレフィナ達を見送った後、1人で王室に繋がっているであろう道に進む。王宮の奥へ続く回廊は、不気味なほど静まり返っていた。


 足音だけが石床に乾いて響く。壁には赤い結晶灯が等間隔に埋め込まれ、薄暗い通路を血のような光で照らしていた。ところどころに焦げ跡が残り、爆発魔法で抉られたような亀裂が床や柱に走っている。その荒々しい痕跡だけで、ここがヴォルツの城だと分かった。


 ノクトは漆黒の杖に手を添えたまま、一歩ずつ奥へ進む。


 途中、数人の魔王兵が立ちはだかった。だがノクトは足を止めない。黒焔が広がる度に敵は声を上げる間もなく崩れ落ちた。狭い通路に人の焦げた匂いが広がる。それでもノクトの歩みは乱れない。


 やがて回廊の先に、巨大な両開きの扉が現れた。


 黒鉄で作られたその扉には、爆ぜる炎を模した紋様が刻まれている。隙間からは赤い光が漏れ、内側に渦巻く莫大な魔力が肌を刺した。


 ノクトは確信する。


 ――この先にいる。


 ゆっくりと扉に手をかける。重たいはずの扉は、意外なほどあっさりと開いた。


 その先は、広大な王室だった。


 高い天井。崩れかけた玉座。赤黒い火花が漂う広間の中央で、一人の青年が気だるげに腰掛けている。足を組み、頬杖をついたまま、まるで最初から来るのを分かっていたかのように笑っていた。


「……よう、ノクト。やっと来たか。」


 ヴォルツだった。周りには怯えた顔をしている女性エルフが何人も突っ立っていた。


「あの女は一緒じゃないのか?」


「ああ。お前とサシで戦いたい。」


 ヴォルツか声を上げて笑い崩れる。


「ハハハッ!サシってお前は1人では戦えないだろうが!あの女なしでは魔法もろくに使えないじゃないか!まさかあいつを連れてきてないんじゃないだろうな!?」


「お前は口の利き方が偉そうなんだよ。」


 ノクトが黒焔を爆発させた。黒焔が王室の床を這う。


 赤黒い火花が漂っていた広間に、漆黒の炎が混ざった。空気が重く沈み、周囲にいた女性エルフたちが小さく悲鳴を上げる。


 ヴォルツは頬杖をついたまま笑っていた。


「おいおい。そんなに怒るなよ。せっかく客として迎えてやってるんだぜ?」


「エルフを盾にしておいて、何を言ってるんだ。」


 ノクトの声は低かった。


 ヴォルツは肩をすくめる。


「盾? 違う違う。こいつらは保険だよ。俺の城を隠す結界を維持するための、な」


 周囲のエルフたちは、怯えた顔で立ち尽くしていた。手首や首元には赤い術式の鎖が絡みついている。逃げることも、逆らうこともできないようだった。


 ノクトの目が細くなる。


「今すぐ解放しろ。」


「命令すんなよ、裏切り者」


 ヴォルツの笑みが消えた。


 次の瞬間、玉座の周囲に赤い魔法陣がいくつも浮かび上がる。ぱちぱちと小さな火花が弾け、床の亀裂から熱が噴き出した。


「お前さ。分かってねぇんだよ。俺はお前が嫌いなんだ」


 ヴォルツはゆっくりと立ち上がる。


「魔王様を殺した。ヴァルグラン様も殺した。魔王軍を滅茶苦茶にした。それで今度は俺の国に来て、俺のやることにまで口を出す」


 彼の指先に、小さな爆発が生まれた。


「なぁ、ノクト。お前、自分が正義だとでも思ってんのか?」


「思ってない」


 ノクトは即答した。


「俺は正義なんかじゃない。けどお前らのことを全力で止める。それだけだ」


「やれるもんならやってみろ。」


「そのためにここにきたんだ。どっちが強いかケリをつけよう。だからそこのエルフは解放してくれ。戦いの邪魔になる。それとも俺に勝つための保険か?」


 ヴォルツの口元が歪む。


「いいねぇ。そういう顔、ぶっ壊したくなる」


 次の瞬間、ヴォルツが指を鳴らした。するとエルフを束縛していた赤い鎖が弾け落ちる。


「失せろ!」とヴォルツが叫んだ。その瞬間にエルフは逃げるように部屋を出ていく。


「もう我慢できない。殺してやるよ!」


「やれるもんならやってみろ。俺も全力で殺しにいく。」


 ヴォルツが一歩踏み出した。


 その瞬間、足元が爆ぜた。


 ただ走ったのではない。爆発の反動で、自分の身体を弾丸のように撃ち出したのだ。


爆装拳バクソウケン


 赤橙の火花を纏った拳が、ノクトの顔面へ迫る。


 ノクトは杖を横に構えた。


 拳と杖がぶつかった瞬間、爆発が起こる。


 ドンッ!!


 衝撃で王室の床が砕け、ノクトの身体が後方へ滑った。だが倒れない。黒焔が足元から噴き上がり、爆風を押し返した。


「へぇ。今のを受けるのかよ」


「軽い」


 ノクトが低く言った。


 ヴォルツの眉がぴくりと動く。


「言うじゃねぇか!」


 ヴォルツが指を弾いた。


爆閃弾破バクセンダンパ!」


 赤橙の光球がいくつも生まれ、弾丸のようにノクトへ飛ぶ。ひとつひとつが小さな爆発核だった。壁にかすっただけで石柱が抉れ、床に触れた瞬間に破片が飛び散る。


 ノクトは杖を床へ突き立てた。


「黒焔葬」


 黒い炎が足元から一気に広がった。


 爆閃弾破が黒焔に触れた瞬間、赤い爆発と黒い火柱がぶつかり合い、王室の空気が歪む。爆炎は派手に弾けたが、黒焔は静かに燃え続けた。まるで相手の魔力そのものを喰らうように、赤い火花を呑み込んでいく。


 ヴォルツの笑みが深くなる。


「なんだよ。ちゃんと使えるじゃねぇか。あの女なしでも」


 ノクトは胸の奥に意識を向けた。


 そこには、ノクティルに埋め込まれた黒い塊があった。闇の心臓みたいに脈打ち、ノクトの魔力を無理やり押し広げている。


 気味が悪い。


 けれど今は使うしかない。


「お前を倒すには俺1人で十分だ」


「なら試してやるよ!」


 ヴォルツが両手を広げた。


連爆雨レンバクウ!」


 頭上に無数の火花が生まれる。


 次の瞬間、それらは雨のように降り注いだ。小さな爆発が床を埋め尽くし、逃げ場のない爆炎が王室全体を覆っていく。


 ノクトは黒焔を渦に変えた。


黒焔旋獄こくえんせんごく――ッ!!」


 闇が爆ぜた。


 炎が螺旋を描き、竜の咆哮のような轟音が響く。黒焔の渦が天と地を繋ぎ、降り注ぐ爆発の雨を次々と呑み込んでいったのだった。


今日もお読み頂きありがとうございました!

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