44話 革命前の前夜祭
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とうとう明日は革命の日。もう夕刻で太陽は沈んでいた。ノクトらは前夜祭が行われるレオンのアジトにいる。もう革命の準備は終わっていて、後は決戦あるのみだった。
ユリウスが群衆の前に出る。レオンのアジトは広いが、それでも50人ほど集まればけっこう窮屈だった。みんながぬるいビールの入った厚めのガラスジョッキを握る。
「みんな。今日は集まってくれてありがとう。明日はとうとう革命の日だ。俺はこの日を待ち望んでいた。ベルナールが変わる日を。俺たちの未来に希望がもたらされる日を。
魔王軍がこの国にやってきてから、俺たちベルナールの国民の未来は奪われたんだ。誰もが人生のどん底だった。息を吸っていても生きている心地がしなかった。皆もそうだろう?」
ユリウスの発言で大きな歓声が上がる。ノクトは暁メンバーを一人一人目で追いながら考え事をしていた。
暁の組織はせいぜいこの人数くらいだ。果たしてこの人数で暁は魔王軍の攻撃を耐えられるだろうか。自分とエリシアがヴァルグランを倒しに行く。おそらく暁を攻撃するのは黒翼将クラスだ。それにそこそこ強い魔物も連れてくるだろう。仮に黒翼将が2人攻め込んできて、暁とライナたちはどれくらい戦えるのだろうか。
暁は明日の戦いを共にしてくれる者を呼び集めてはいるらしい。きっと多くの者が魔王軍と共に戦ってくれると予想しているとも言っていた。だがもし人も集まらなければ?もし暁に勝ち目がないならライナとノエルをこの戦いに参加させるのは自殺行為だ。
ライナがノクトの手が震えていることを察して、そっと優しく手を握った。
「大丈夫。心配ないよ。アタシは一人で黒翼将と戦える。だから安心して。」
ライナのささやきにノクトは微笑んだ。彼女の瞳はなんて温かいんだろうか。まるでそれは太陽のようで、どんよりとした心の曇り空が一気に晴れ渡った感じがした。
「みんな!暁に命を賭けてくれてありがとう!俺もレオンもこの国の未来のために明日は魔力を全て使い果たすつもりだ!
俺たちでこの国を救おう!俺たちでこの国を魔王軍から取り返そう!きっと神様は俺たちの味方だ!俺はこの国を愛している!だからこの国ために命を賭けるんだ!
明日は勝とう!絶対に勝とう!俺はみんなと共に生きるベルナールの未来を愛している!だから必ず戦い抜くんだ!さぁ、みんな!乾杯!」
大きな歓声が上がった。
いくつものジョッキが一斉にぶつかり合い、鈍い音が洞窟みたいな天井に反響する。泡はもうほとんど立たない。ぬるいビールは喉を滑らず、舌に重く残った。それでも酒の味に不満を漏らす者などいない。
「暁万歳!!」
酔っ払いのマルクが机に片足を乗せて叫ぶ。鼻先が赤い。だけど目は真っ直ぐだった。
「おい、ユリウス!明日死ぬなら、今日くらい笑っとけよ!死に顔だけはカッコよくしろ!」
「縁起でもないこと言うなよ、マルク」とユリウスが困った顔をする。
誰かが笑う。誰かが泣く。笑い声と嗚咽が同じ場所で混ざる。革命の前夜ってのは、きっとこういうものなのかもしれない。
レオンは酒樽の横に腰掛け、背もたれに腕を投げ出していた。いつもの不敵な笑み。けど笑みの奥に疲れが滲んでいた。レオンは緊張と怒りから最近眠れていなかった。
「みんな、今日は飲みまくれよ!酒こそが俺たち暁のエネルギーそのものだからなぁ!」
レオンの発言で多くの者が叫んだ。歓声が絶えない。明日が命を賭けた日であることを忘れるくらいに賑わっていた。すると一人の男性がノクトらに歩み寄ってきた。
彼の名はジャン・ルーセル。黒髪を短く切り揃えた痩せ型で、目つきが鋭い。ノクトらが昨日にいったアジトの一つを任されている暁の副リーダー的な存在だった。
「ノクトくん。楽しめているか?」
「ええ。活気があって良いですね。」
「ああ。騒がしすぎるくらい盛り上がっているな。
暁のみんなは今を生きてるんだ。俺たちは明日死ぬかもしれない。そんなことは分かっている。でもみんな本当は死にたくないに決まってるんだ。
せっかく奇跡的にこの世に生まれて、その自らの命をわざわざ無駄にしようと思う奴なんていないだろう?みんな自分の未来を期待しているはずなんだ。でもそれよりも大切なものを見つけてしまった。だから俺たちにはもう戦うしかないんだ。
ノクトくん。明日は上手いこといくと思うか?」
「ええ。俺は信じています。それに例え革命の結果がどうであっても上手くいったことになると思います。自分を信じて戦ったならば。」
「そうだな。俺たちは自分を信じて戦い抜くんだ。その気持ちだけは絶対に負けてはならない。」
ノクトの近くから大きな歓声が上がる。何故か物凄く盛り上がっているので、ノクトとジャンは様子を見に行った。するとライナと大男が大きなジョッキでビールを一気に飲み干していた。大男は既にフラフラだが、ライナは頬を赤らめてはいたがまだ平気そうだった。
「アタシお酒だけは強いんだからね!まだまだいけるよ!」
「俺だってまだまだいけるぞ!なんせライナちゃんとは体の大きさが違うからなぁ!俺の方がたくさん飲めるに決まってらー!」
二人は何度もジョッキを傾けてその数を競い合う。酔っ払いのマルクもこの勝負に喜んで天に向かって乾杯をした。
「俺も二人には負けねぇからな!どうせ明日死ぬなら今日飲むだろ!ここにある酒全部飲むぞ俺は!」
マルクがジョッキ満タンに入ったビールを一気に飲み干すと、千鳥足でどことなく歩こうとする。そして倒れた。むにゃむにゃと眠っている。
「本当に治安が悪いわね。」とエリシアがため息をつく。するとノエルが「楽しそうでなによりだよ。」と微笑んだ。
ノクトが心配そうにライナを見守る。
「ライナ大丈夫か?別に無理しなくてもいいんだぞ?」
「ノクトはアタシのことを何にも分かってないんだからぁ!ノクトももっと飲む飲む!
誰か!ノクトにもっとビールを注いであげて!」
ライナがこの前夜祭で誰よりもお酒を飲みまくっていたのだった。
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