41話 感覚の目
楽しんで読んで貰えれば凄く嬉しいです!
革命の日まで、ノクトたちはユリウスに案内され、王都の外れにあるボロボロの空き家で寝泊まりしていた。
壁はひび割れ、床板はきしみ、隙間風が夜ごとに骨まで冷やす。それでも、ここは見つからないという一点において完璧だった。
ノクト等は昼も夜も革命のための鍛錬と準備に励んだ。
ノクトは剣を握り、エリシアは聖剣を研ぎ、ライナは拳を振る。
ノエルは氷の結界で窓を覆い、外の気配を消した。
だが、最も忙しく動いていたのは暁だった。街のありとあらゆるガラクタが、夜の闇に紛れて運び込まれていく。
壊れた馬車の車輪、折れた柱、崩れた石壁、鉄骨、古い武具、瓦礫、沈んだ鐘楼の破片。
それらはただの廃材ではない。ユリウスの魔法にとっては力強い味方だった。
通りの物陰には、酔っ払いのマルクが寝転がっている。酒瓶を抱えながら、笑っていた。
「明日死ぬなら今日飲む。明日生きるなら今日運ぶ。どっちにしても……俺たちは動くしかないんだよなぁ」
軽口のくせに、目だけは真剣だった。
その横で、リュカが瓦礫の山の上に登り、両手を腰に当てて叫ぶ。
「おーい! この板、まだ使えるぞ! ユリウスが巨人にしたら絶対カッコいいって!」
「リュカは本当に元気だな。」
ユリウスが苦笑いをすると、リュカは満面の笑みで言った。
「だってさ。怖いのは当たり前だからね。でも怖いからって止まったら、ずっとこのまんまだからさ!」
その言葉が、妙に胸に残った。
革命の準備。何日も同じような日々が続いた。
ライナは自分が一番足を引っ張っていると思って、ノクトに頼んで鍛錬に励んだ。
街の離れにある森でライナとノクトが手合いをする。それをリュカが暇潰しも兼ねて楽しそうに見ていた。
ノクトは剣を振るった。ライナは何発も貰ってしまう。もちろん剣は訓練用のものだったので、大きな怪我を負うことはなかった。
「駄目だ。こんなんじゃあの子の剣に反応できないよ。」
ライナは溜息を吐いた。
「ノクト!もう一回お願い!」
ライナが悔しそうな目をして叫ぶ。
「ああ」とノクトが再び剣を振るう。
ライナはノクトの剣を避ける。そして紅蓮に燃えた拳をノクトに叩きつけようとする。ノクトはそれを悠々とかわした。そして何度も剣を振るう。ライナは剣を交わしつつ打撃を振るうがノクトの剣が余りにも早い。ライナは避けきれずにノクトの攻撃を受けてしまった。
「イタッ!」とライナが叫んだ。
「目で追ったら駄目だよ。目を閉じて全身の感覚を澄ましてみて。感覚にこそ相手の行動を読むことができる目がついているからね。」
リュカがライナに言った。
「感覚の目ってこと?」とライナがキョトンとする。
「そうだよ。ちょっと僕に剣を振るってみてよ。」
ノクトは困ってしまう。こんな小さい子に剣は振るえない。
「大丈夫だよ。僕だって死の最前線で戦っている暁の一人なんだ。そっちが来ないなら僕から行くよ。」
リュカはポケットからナイフを取り出した。そしてノクトにお構い無しで攻撃を始めた。ノクトは意外にもリュカが素早くて驚いた。そしてノクトも剣を振るう。最初は手加減をしていたが、ノクトはじきにリュカがただものでないことに気づいたら。
「凄い反射神経だ。これはとてつもない剣士になるぞ。」
ノクトはライナのときと同じように剣を振るう。だがリュカは全ての攻撃を避けた。しかも少年は目を閉じていたのだった。
「分かった?目を使ったら駄目なんだよ。目以外の器官を全部使うんだ。その方が実はよく見えるからね。」
「なるほど‥‥‥」
ライナは目を瞑った。
「ノクト!アタシを攻撃して!」
「本当にいいのか?」とノクトが困った顔をする。
「うん!感覚の目ってやつで見てるから大丈夫!さぁ!いつでもいいんだからね!」
ノクトはライナの頭に剣を振るった。すると勢いよく音が鳴った。
「痛いよーー」とライナが叫ぶ。
「感覚の目はそんなにすぐ習得できないよ。地道に頑張るんだね。」
「うー。ノ、ノクト!もう一回お願い!」
「本当にいいのか?」とノクトが更に困り顔。
「うん!いつでもいいからね!」とライナが目を瞑った。
ノクトが再び剣を振り下ろすと、またしてもライナの悲鳴が響いた。
「も、もう一回!」とライナが涙を浮かべながら言った。
「もういいだろ?ケガだらけになるぞ。」
ノクトの心配にお構いなくライナは「やって!」と言いきる。そしてノクトは何発も何発もライナの頭を叩いたのだった。
「もうタンコブが何個もできてるぞ⁉︎ライナ今日はもう終わりにしよう!」
ライナは「ええーん!」と泣き叫びながらノクトに抱きついた。
「感覚の目が開かないよー!」
リュカはくすくすと笑う。
「明日から僕が徹底的に見てあげるね。僕の言う通りにすればすぐできるようになるよ。」
こうしてライナは翌日からリュカから指導を受けることになったのだった。




