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救世の闇魔法  作者: なまけもの先生
打倒ヴァルグラン編
38/40

38話 黒翼将のエル=シェイド

最近寒いので風邪には気をつけて下さいね!

 黒翼将のエル=シェイドは風属性の魔法を使った。風属性の魔法を用いた高速剣技は、今までに数え切れない者の命を奪った。誰も真似ができないほどに早い剣術。エル自身はそれを風階剣ふうかいけんと名乗っていた。


「カルディオスがやられたんですね。それは予想外でした。でも結局は僕が殺すんだから関係ないですね。」


「ライナ、ノエルは俺よりも前に出るな!攻撃は俺とエリシアでやる!自分を守ることに集中するんだ!」


 ノクトとエリシアはエルの速度が早すぎて、連携した戦いが全くに出来ずにいた。そのためにノクトも魔法を発動することが殆どできなかった。


「さっきよりも早い技で行きますね。」


 風階剣ふうかいけんは、風属性で自分の身体を加速・軽量化し、間合いを消すように踏み込んで斬る剣術。

風階を上げるほど、初動が見えなくなり、残像と風圧で相手の見切りを狂わせた。


 「風階ふうかいさん烈風れっぷう


 エルが息を吐いた瞬間、身体の抵抗が消え、影だけを置き去りに滑るように加速した。残像は風の筋となって走り、遅れて風鳴りが追いかけてくる。


 エリシアが剣を交わし合う。剣術だけならエルの方が優っているように見えた。ノクトにもエリシアにもたくさんの擦り傷がついていた。


 ノエルが補助魔法を発動する。雪の精がその場にいる者たちに溶け込む。更にノエルは治癒と魔力回復の魔法を発動した。


「あなたの魔法は厄介ですね。先に殺しますか。」


 エルがノエルに剣を向ける。するとノエルはライナと共に雪の球体に閉じ籠る。エルはその絶対防御の魔法を破ることができなかった。そしてエリシアがエルに攻撃をする。


「あなたの相手は私よ!」


「あなたが一番に厄介ですよ。さすが勇者ルシエルの妹なだけありますね。」


エルは更に1段階上の魔法を唱えた。


「風階・暴風ぼうふう》」


足元で風が爆ぜ、瞬間的に周囲の空気が引き裂かれる。

身体は風そのものとなり、踏み込んだ軌道には激流のような突風だけが残る。


 エリシアは肩を斬られた。ノエルが大きな雪の精を召喚する。雪の精はエリシアの怪我を見る見るうちに回復していった。


 「エリシア!手を貸せ!」


ノクトがエリシアの腕を掴んだ。そして彼等は背中合わせになる。


 ノクトの背に、エリシアの体温がわずかに伝わる。エリシアの背には、ノクトの呼吸のリズムが感じられた。


 視線は前。だが、互いの死角は完全に預け合っている。


「来るわよ」


「ああ、分かってる」


 次の瞬間、風が消えた。いや、違う。風が存在する前に、エル=シェイドがそこにいた。


 エリシアの聖剣が、反射的に振るわれる。金色の軌跡が空を裂いたが、刃は虚を切った。


 背後。


 ノクトが地面を蹴り、闇を爆ぜさせる。漆黒の魔力が盾となって膨張し、不可視の衝撃を受け止めた。


「……っ!」


 衝撃はある。だが、斬られていない。


 エルの剣には迷いのない殺意が込められている。それをノクトは背中で受け、エリシアは正面で弾いた。


「二人同時に守るなんて、器用ですね」


 どこからともなく、少年の声が落ちてくる風に紛れ、位置が定まらない。


 エリシアが一歩踏み出す。


聖圧光臨せいあつこうりん


エリシアは光を解き放つ。斬撃ではない。空間そのものを押し潰す光圧。


 同時に、ノクトが魔力を解放する。黒焔が地面を這い、エルの逃げ道を塞ぐ。


 二人の攻撃は、示し合わせたわけでもない。それでも噛み合っていた。


 攻めと守り。光と闇。前と後ろ。


 エルの足取りが、ほんの一瞬だけ鈍る。


「……へぇ」


 その声に、わずかな興味が混じった。


「背中を預けられる相手ができたんですね、ノクトさん。」


 次の瞬間、暴風が炸裂する。しかし二人は吹き飛ばされなかった。


 エリシアが剣を構え、ノクトが闇を重ねる。背中合わせのまま、踏みとどまる。


 二人で一人。その陣形こそが、エル=シェイドにとって初めて崩しきれない形だった。

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