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救世の闇魔法  作者: なまけもの先生
打倒ヴァルグラン編
36/40

36話 魔物カルディオス

 エルは笑顔を一秒たりとも崩さない。すると暁のメンバーである男がノクトよりも前に出る。エルに「死ね!」と叫んで魔法を放つ。それは地属性の中距離型魔法だった。地上の砂が無限に集まって、大きな岩となりエルを襲う。


 エルは魔法が来ても避けない。それどころかいつの間にか地属性魔法が消滅していた。暁の男は他にも魔法を連発するが全ての魔法が消滅する。


そして一瞬。エルが消えた。


するとエルを攻撃した男が倒れる。ユリウスが彼のもとに走る。男は体中を切り刻まれてもう既に死んでいた。


 ノクトは久しぶりに目にしたエルのスピードに追いつけず、男を助けることができなかった。


「僕は一度でも攻撃してきた人は必ず殺すって決めていますからね。」


 エルは今だに涼しげな顔をして微笑んでいた。ノクトばかりでなくエリシアもエルの攻撃を完全に見ることができなかった。その剣技は余りにも速すぎた。


「僕はイライラしているんです。ずっとセラフィーヌさんのもとで働けていたのに、まさかこっちに派遣されるだなんて。でもノクトさんを殺せてちょうどいいや。セラフィーヌさんはあなたに片思いをしているんです。だから僕のことをずっと見てくれない。でもあなたさえ死んでくれれば、セラフィーヌさんも僕のことをきっと見てくれるでしょ?」


 エルはそう言うと消えた。そしてノクトに襲い掛かる。ノクトは黒炎を周囲に纏って自らの盾にした。エルは黒炎を剣技から生じる突風で吹き飛ばす。すぐさまエリシアが戦闘に交わった。


 エルだけでなく魔物カルディオスも動き出した。その時、地面が沈んだような気がした。


 巨体が一歩踏み込むだけで、瓦礫の山が滑り落ちる。死体の影が跳ね、血の臭いが巻き上がった。


 赤黒い光が関節の隙間で脈打ち、裂けた口が不気味に開く。唸り声が低く長く伸びた瞬間――


空気が重くなる。


「来るよ!」とライナが叫んだ。ノエルとユリウス、その他数人の暁メンバーが戦闘体制に入った。


 カルディオスがライナ等に接近する。そして腕が持ち上がった。爪が空気を裂く。そして振り下ろされた。


 ノエルが巨大な氷の盾を出現させる。だがその盾も壊されてしまった。地面が爆ぜ、瓦礫が弾丸みたいに飛び散る。

 

 ライナは体に炎を纏って前に出た。拳に炎が集まる。そしてカルディオスに蓮撃を与える。しかしカルディオスの外殻は鈍く鳴り、炎を受けても表面が黒く照り返すだけだった。


 ノエルが一歩前へ出る。両手をかざし、氷の膜を広げる。透明な氷が、空気の壁になる。だが、その氷はすぐにひび割れた。


「っ……!」


 ノエルの肩が震えた。攻撃を受け止めているだけなのに、魔力が削られていく。カルディオスのパワーは異常だった。


 カルディオスは大きく裂けた口から衝撃を伴った咆哮を放った。精神に絶望を生じさせる轟音で暁の隊員が2人倒れる。そして倒れた者に向かって突進する。一人は頭ごと腕で潰された。もう一人はライナがギリギリのところで救出する。


 ユリウスが仲間を目の前で何人も殺されて冷静さを失っていた。大きな感情を伴って呪文を詠唱する。


地魂結陣ちこんけつじん


 ユリウスが魔法を発動すると、周囲にある瓦礫が繋がり合って人型の形を成した。大量の瓦礫がまるで魂を持ったように繋がり合う。そして五体の兵士が作り上げられた。


 瓦礫の兵士たちがカルディオスに襲い掛かる。五体とも瓦礫から出来上がった棍棒を振り回して攻撃する。ユリウスの操るガラクタの兵士は人間の動きと全く変わらない。カルディオスの攻撃を全て避けながら戦い続けた。


付魂操物ふこんそうぶつ


 地面に転がった巨大な瓦礫か魂を宿す。そしてまるで人間のような動きでカルディオスに向かった。


 ユリウスは物体に魂を宿す地属性魔法を使った。カルディオスは力任せにユリウスの魔法と戦う。ユリウスの器用さはカルディオスの圧倒的なパワーとほぼ互角に戦っていた。


 ライナもカルディオスに攻撃をする。紅蓮爆装ぐれんばくそうを唱えたライナは、自らの体に強烈な炎を宿す。そして彼女は強烈な打撃を何度もお見舞いした。


 だがカルディオスの力も相当なものだった。一発一発の攻撃が非常に重く。ユリウスの魔法兵士も一体、一体と壊されてしまう。


 ライナは拳に紅蓮の炎を纏い、カルディオスの胸へ踏み込む。


灼魂連砕しゃっこんれんさい!」


 一撃ごとに炎が噛みつくように爆ぜ、骨を砕く衝撃と灼熱が連鎖して突き抜けた。最後の一打で火柱が開く。


 カルディオスは吹っ飛んだ。しかしまたすぐに立ち上がる。カルディオスは激情していた。理性の全部を捨ててしまって、ライナたちに攻撃を仕掛けた。


 カルディオスは自らの外殻を砕き、無数の黒い破片を爆発的に放つ。破片一つ一つが刃のようだった。自壊してでも相手を殺そうとする魔物の狂気が、その刃からは充分に放たれていた。

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